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2015年07月28日

戦後70年の今、戦争を改めて考える―半藤一利&原田眞人監督フォーラム全文

戦後70年の今、戦争を改めて考える―半藤一利&原田眞人監督フォーラム全文


若き将校を演じた松坂桃李、そして無名の新人たち


天日:
原田監督、映画ではどのようにこの将校たちを描いたのかをお願いします。

監督:
決起将校たちは、今まで何度か描かれているんですけど、いつもその決起するというところだけピントが合わされているんですね。僕は井田中佐にしても、畑中少佐にしても決起する前、普段この軍人たちがどういう生活をしているんだというその部分が必要だと。

僕は以前『クライマーズ・ハイ』を作ったんですが、これは新聞社の話です。その新聞社の中で50人、いろんな人がいるんですが、それをリサーチしてその50人登場する人たちに、構成なら構成、社会部なら社会部でニックネームをつけて、それからどういう仕事をしているという全て本人に分かってもらってやったんですね。

今回は案外難しかったです。軍人だっていうのはどういうことをやっているのか。その環境をまず調べて、30人ほどいますけど、この中に全員を入れて何回もリハーサルをして、同時にこの連中全てに坊主になってもらって、いろんな基礎訓練、2ヶ月ほど訓練を積んでもらいました。

ところが、軍人らしい動きって今はもう自衛隊に参加した人の動きがベースで、旧軍隊ではこうだったけど、今は自衛隊ではこうなっているという、その差があったりする。

そこで、僕は日本の軍人らしさということよりも、むしろ英国のイギリスの演劇界の大物たちや、シェークスピア役者たちが演じた身のこなし、キビキビしたところ、そういったものを参考にしてもらうために、アメリカ人監督のシドニー・ルメットの『丘』という映画、ショーン・コネリーが主演で、ハリー・アンドリュースとかイアン・バネンという当時の名優たちが全部出ているんです。こういう人たちの動きをむしろ参考にしろと。そして、そこにある種の基本的な日本の軍人の動きというのを入れています。

ですから多分、みなさんがご覧になる、松坂桃李が演じる畑中少佐以下、井田中佐含めて全員すごく新鮮なところがあると思います。僕自身彼らにすごく感謝しているし、1人ひとりが何をやってどう考えてっていう、これを頑張ってやってくれました。

日本のいちばん長い日



キャスティング的には、松坂桃李というスターの1人がいれば、後はみなさんに精神の発見みたいな形で、むしろ無名の新人たち、ただし舞台の経験があるというそういう役者を雇っています。彼らの頑張り方というのはこの作品のひとつのポイントですので、ぜひご覧になってください。

そして、今半藤さんがおっしゃったような色々なキャラクターがいます。それぞれに魅力的です。映画のみどころのひとつになっているんで、誰が誰であるのかということは後で混乱するかもしれないんですけど。そういう人は畑中だけ見てても構わないんですが、松坂桃李も本当に素晴らしい畑中少佐を演じています。こういう人であったのなら、やはり仲間はみんながついていくだろうなと、そういう畑中です。

それからやはり、井田中佐、竹下中佐というのは、これは阿南さんが救った将校たちですね。そういう面白さも含めてぜひ決起将校たちのどうなっていったのか。この映画で描いている部分が終わった、その1週間後に殺されちゃった人もいるわけで、あるいは自殺した司令官もいる。ですからこの作品以降、まだまだ時は流れていきます。そういう面も含めてひとりひとりの運命というのを、映画を見終わった後に、それぞれ感じるところがあったなら、違うところで思いを馳せて頂きたいところであります。

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