イマドキ少女たちの息吹を伝える 快作ロード・ムービー『私たちのハァハァ』
映画ファンのみなさん、ハァハァしてますか?
って、何だか壇蜜みたいな物言いではありますが(!?)、別にエロい意味で言っているわけではありません。
では、何を言いたいのかと申しますと……
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.22》
少女たちのひと夏の旅を描いた快作『私たちのハァハァ』がとても面白い! ということなのでした。
自転車漕いでのハァハァから、
青春そのもののハァハァへ
『私たちのハァハァ』は、北九州に住むチエ(真山朔)、さっつん(大関れいか)、文子(三浦透子)、一之瀬(井上苑子)の高校3年生仲良し女子4人組が、夏休みになって一之瀬が親と喧嘩して家出したことをきっかけに、ロックバンド“クリープハイプ”のライヴを見に行くべく、東京まで自転車を漕いでの旅を始める青春ロード・ムービーです。
北九州から東京まではおよそ1000キロ。
ほとんどノーテンキに、親に内緒であっけらかんと旅を決行する女の子のイマドキなノリが不思議なまでにさわやかで、また実際は広島あたりで彼女らは早くもバタンキューとなり、結局は自転車を捨ててヒッチハイクに切りかえるも、やがてお金がなくなって、ちょっとやばいところでバイトするはめになったり、自分らの言動がツイッターで非難されたり、ときに4人の友情にひびが入りかけたりなどなど、そうそう世の中うまくいくわけないといったエピソードを連ねながら、最終的に彼女らは東京へたどり着けるのか?
そもそも行くのか行かないのか?
といったスリルまで呼び込みつつ、さらにはその後の仰天クライマックスに至るまで、先読み不能な面白さで、見る側はただただ唖然と彼女らの危なっかしい旅を見守っていくことになるのです。
本年度のゆうばり国際映画祭2015ではスカパー!映画チャンネル賞およびゆうばりファンタランド大賞(観客賞)の2冠に輝いた作品でもあります。
SNS世代少女たちの
コミュニケーションを見事に活写
監督は『自分のことばかりで情けなくなるよ』(この作品でクリープハイプと組んだことも、本作の企画につながっているのかもしれません)や『ワンダフルワールドエンド』の松居大悟。
今回もデジタル時代の今の若者気質を巧みに掬い取りながら、あたかも彼女らの旅に同行しているかのようなドキュメンタリー・タッチでキャメラを回し続けていくあたりが妙味です。
画面のサイズもシネスコを基調に、ムービーキャメラによる額縁ビスタになったり、さらにはスマホで撮ったタテ型画面になったりと、縦横無尽の自由度で彼女たちの怖いもの知らずスピリットを巧みに体現しています。
ロード・ムービーとしての風景の捉え方も美しく、その意味では撮影(塩谷大樹)は今回最大の功労者とも言えるでしょう。
ツイッターなどSNSを駆使した彼女らのコミュニケーション・ツールも効果的に、そしてごく自然に用いられており、特にクライマックスに突入する寸前のLineの会話シークエンスは、この世代ならではの息吹を体現し得た感動的なものに仕上がっていることにも感心しました。
とかく大人は直に向かい合うことの少ない、スマホ頼りの今の若者たちのコミュニケ-ションを否定しがちですが、その世代はその世代なりの感性に基づきながらの会話をきちんと成立させていることを痛感させられます。
演じる4人の少女たちが、どこまで演技かわからないほどのリアルな会話なども特筆的で(というか、今の子たちってこうも早口なのか⁉ というか、どこまで台詞はシナリオに忠実なのか、それともアドリブなのか、もはや判別不能)、今後の活動が楽しみになってきます。
しかし、このところ少女たちの躍動感を魅力的に描いた若手作品が急増していますが、そろそろ少年たちの(ツッパリとかそういうものではない)アホな元気のよさを描いたものも見てみたいものと、本作での元気少女たちのまぶしさを目の当たりにしながら、かつて少年だったオヤジは思ってしまった次第でした。
(文:増當竜也)
『私たちのハァハァ』は、現在絶賛公開中!
公式サイト http://haa-haa.jp/
https://www.youtube.com/watch?t=1&v=I7lr8afQgY8
(C)2015「私たちのハァハァ」製作委員会
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