映画コラム

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2015年09月19日

おおらかなキスをしてみたい―映画『XXX』矢崎仁司監督独占インタビュー

おおらかなキスをしてみたい―映画『XXX』矢崎仁司監督独占インタビュー


「信じて疑わない表現」というのがダメ


―実際に観させていただいて、オムニバス作品ではなくて1本のつながった作品なんじゃないかと途中思うほど5作品の順番が絶妙だと感じたのですが、矢崎監督の中では構成といいますか、順番というのはかなり考えられた?

そうですね。編集の目見田健さんとは結構話し合いました。単なる5本の短編のオムニバスにならないように「5本で1本の映画だ」ということをちゃんとやってみようかと、順番に関しては編集室で色々やりましたね。

―2番目のお話『背後の虚無』は同性愛がテーマのひとつである作品ですが、実際作品の中では同性愛である部分を大きく描いてはいませんよね?

そうですね。人が人に思いを寄せたりすることって、性別が関係ないと僕は思っています。あえて同性愛だとか、そういうことは興味がないといいますか、人にしか興味がなくて。たぶん性別がどうこうというのは、監督の仕事じゃなくて俳優さんの仕事だと思ってます。女性だからこうしたいとか、男性だからこうして欲しいとかっていう注文は出したこともないし「あなたはどうする?」ってことしか言わないので。

―そういう意味では、全体的に明確な“これ”という答が無いですよね?

何かの答を持つことは、僕が目指さない映画といいますか「信じて疑わない表現」というのがダメでして。

僕の映画で出来ることっていうのは、大きなクエスチョンマークを最後に残して、普段忘れていたような記憶をふと蘇らせたりみたいなことができればいいなと思っているんです。それが答になってしまうと、ひとつの“おはなし”になってしまうような気がして。

XXX 矢崎仁司監督 独占インタビュー



―“おはなし”ではない?

“人”ですね。今まで自分が作ってきた映画は、僕の大好きな“人”をみんなの前に紹介するみたいな感じなんです。ただ、その人のいいところばかり薦めるのではなく「この人、こんな悪いこともするし、こんな風に人を裏切るけど、僕は大好きです」と、みんなの前に紹介する感じです。もう一度僕の映画を観たいと思う人たちは「あの映画を観たい」というよりは「あの人に会いたいな」ぐらいの感じの気持ちをもってくれるような映画になったらいいなといつも思ってます。

映像と音楽は近親な関係だから喧嘩する


―作品の中で印象的だったのが“音”なのですが、余計な音楽があまり入らなかったなと思いました。

音楽の田中拓人さんは元々音楽が少ない映画が好きなんですよ。僕のためにいっぱい作ってきてくれるたんですけど「田中さん、せっかく作ってもらったんだけど、ここは無くていいかな」というと「いや、僕も賛成です」みたいな風になって。田中さんにとって、音と音楽が一緒なんだと感じます。

―通常ならここでドラマチックな音楽が流れるぞってところでも敢えて自然の音だけだったりしていましたね。

何かで読んだのですが、映像と音楽はすごく近親な関係だから、喧嘩するのじゃないかなと。僕はだいたい、感情に寄り添うような音楽がダメで。

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