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映画『釣りバカ日誌』シリーズから、テレビドラマシリーズ『釣りバカ日誌~新入社員浜崎伝助~』へ!


寅さんシリーズ終焉後の松竹の混乱を
象徴するかのような90年代後半の流れ


なお『釣りバカ日誌7』は、寅さん映画最後の同時上映作品にもなり、このときの『男はつらいよ 拝啓車寅次郎様』(94)に続く第48作『男はつらいよ 寅次郎紅の花』(95)は、朝原雄三監督(やがて彼は『釣りバカ日誌』シリーズの後期を支える重要な存在となっていきます)『サラリーマン専科』(95)を併映とし、その後渥美清の逝去によって寅さんシリーズは終結。

松竹は続く長寿シリーズを模索し始め、当然ながら釣りバカのハマちゃんにそれを委ねるようになっていきます。

かくして前作から1年半ぶりのお目見えとなった『釣りバカ日誌8』(96)は、『スペシャル』以来の夏興行、そしてシリーズ唯一のA面番組として、『さすらいのトラブルバスター』(96)を併映しましたが(一部地域では1本立て興行)、続く『釣りバカ日誌9』(97)からは堂々の1本立て。
そして『釣りバカ日誌10』(98)を経て、シリーズ第11作でもある時代劇番外編『花のお江戸の釣りバカ日誌』(98)をもって、栗山富夫監督はシリーズを降板します。
釣りバカ花の大江戸

この時期、寅さんシリーズ終了などに伴う松竹の混乱がそのまま『釣りバカ日誌』シリーズの流れにも反映されているかのようでした。

もっとも、こうした混乱は『釣りバカ日誌イレブン』(00)から本木克英監督が3作品を、そして『釣りバカ日誌14 お遍路パニック』(03)から朝原雄三監督が演出を手掛けるようになって落ち着きを取り戻し、むしろ若手監督ならではの初々しい演出によってシリーズはみずみずしく蘇っていきます。

特に山田洋次監督の愛弟子でもある朝原監督のオーソドックスな演出姿勢は功を奏し、シリーズを大きく牽引していくことになります。そこには主演ふたり(特に三國連太郎)の高齢化さえなければ、いつまでも続けていただきたいとファンが願うほどの勢いがありました。
釣りバカお遍路

日本の社会経済の流れも見据えた
サラリーマン喜劇としての一面


『釣りバカ日誌』シリーズはサラリーマン喜劇としての側面も大いに持ち合わせており、第1作の頃はまだバブル期だったのがやがてバブルがはじけ、世紀末の閉塞的状況やアメリカの9・11、リーマンショックなど暗い世相に振り回されがちだった時代の流れの中、『釣りバカ日誌』の鈴木建設は、一企業としてど常に理想的な姿勢を誇示しつづけていたようにも思えます。

グータラ社員ハマちゃんが釣り仲間を通じてときたま大物取引をなしとげることもあり、やはり趣味は持つべきであると痛感させられたサラリーマンの観客も多かったことでしょう。

シリーズは惜しくも『釣りバカ日誌20 ファイナル』(09)で終結しますが、ここでも最後にスーさんが社員たちに向かって感動的なスピーチをします。それは企業と社員の理想的関係性の意義でもあり、ある意味彼の遺言のようなものでもありました。
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『釣りバカ日誌』シリーズは、このようにドタバタなお笑いの数々の中に、どこか現代を見据えた視線が確実に存在しており、そこが老若男女を問わず、多くの支持を得た秘訣だったのかもしれません。

三國連太郎は2013年4月14日、満90歳で逝去。

もう西田&三國の『釣りバカ日誌』新作映画が見られることは永遠になくなりましたが、代わって2015年の秋、テレビドラマという、まったく新たな装いで『釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~』が始まりました。

テレビシリーズとして新たに再生された
『釣りバカ日誌』ワールドの面白さ


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ここでは従来の映画版とは若干装いを変え、鈴木建設に入社したての新米独身社員ハマちゃんが、スーさんを社長と知らぬまま弟子にし、さらには行きつけの居酒屋で東北から上京してきたみち子さんと恋に落ちるか否か? といったドタバタ騒動が繰り広げられていきます。

ハマちゃんに扮するのは濱田岳、そしてスーさんに扮するのは何と西田敏行という、びっくりながらも絶対に見たくなってしまうキャスティングで、事実第1回と第2回を見た限りでは、どこかしらハマちゃんとスーさんというよりも、新旧ふたりのハマちゃんといった雰囲気が漂い、それが欠点ではなくデジャビュ的情緒と化しているのが妙味。
やがて西田敏行も自分なりの二代目スーさんを定着させてくれることでしょうし、またまた長き年月の果てに濱田岳がスーさんを演じる可能性もあるのかなと、そんな未来への興味までそそらせてくれています。
釣りバカ

みち子さんには広瀬アリス。今のところ、まだ釣りバカのハマちゃんに対しては、ただただあきれ返っているだけのようでもあり、この分では合体どころか(⁉)、相思相愛の仲になるのもまだ先かな? といった初々しさを発散させてくれています。
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第1話の演出は朝原雄三監督が務めていましたが、これも映画シリーズの味わいを巧みに継承しつつ、一方でハマちゃんが所属する営業三課の同期たち個々の描出もなされるようになっています。

第1回目のゲストが武田鉄矢というのも、かつて伝説的バラエティ番組『見ごろ!食べごろ!笑いごろ!』(76~78)『みごろ!ゴロゴロ大放送!!』(78~79)で若き日の西田&武田のコメディアンぶりを大いに堪能していた世代にとっては実に懐かしく、また第2回では鶴田忍に中本賢と映画シリーズの常連が出演しているというキャスティングのお遊びも楽しいものがあります。
釣りバカ

ここ最近のテレビドラマ不振の中、この『釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~』は異例なまでに大健闘しているようですが、それは単に人気映画シリーズのテレビ化というだけではなく、映画シリーズ同様にとかく鬱屈気味な日常社会の中、ハマちゃんのような自由さにみんなが憧れているからではないでしょうか。

その意味では映画でもテレビでも(かつてアニメシリーズもありました)、この『釣りバカ日誌』という題材は広く受け入れられるものであることを強く確信している次第です(もちろんキャスティングの妙もありますけどね)。

『釣りバカ』ファンはもとより、映画ファン、ドラマファン、老若男女問わず、幅広く楽しんでいただきたい快作です。今後の展開もこうご期待!
釣りバカ


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(文:増當竜也)
(C) 松竹株式会社
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