映画コラム
爽快感と開放感を味わえる見所満載映画「X-ミッション」
爽快感と開放感を味わえる見所満載映画「X-ミッション」
全編CG無しの超絶アクションシーンが話題を呼んでいる映画、「X-ミッション」。
ネットなどのユーザー評を見ると、「ストーリーが薄い」「アクションは凄いが、話が無い」という意見と、その逆に「面白かった」「撮影が凄くて、楽しめた」という意見の両方が混在している。
しかし断言しよう、この「Xミッション」は、紛れも無い傑作だ。
(C)2015 Warner Bros. Ent. (C)Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
そう、本作は、共に自身の過去を乗り越えようとする男同士の友情を描き、更に後戻り出来ない一線、悟りを開くために越えねばならない一線(それが現代のPOINT BREAK)を超えようとした男と、ギリギリで現実に踏みとどまる事を選択した主人公との、魂の激突を描いた映画だ。
確かに、スクリーン上で次々に展開される、危険なスポーツの迫力に圧倒されて、ストーリーに注意が向かなくなるのは判る。
だが、特筆すべきは、あの傑作「リベリオン」の脚本・監督である、カート・ウィマーの手による、その脚本の完成度の高さだ。どうしても見過ごされがちだが、アクション以外の静かなシーンや、会話シーンのセリフの素晴らしさ!
そう、実はその部分にこそ、この映画の見所があると言えるだろう。
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実は今回の映画化では、オリジナル版と大きく改変された点が幾つかある。
まず、主役の二人のキャラクターに、仲間の死をきっかけに、その人生観を大きく変えられた、という背景が付け加えられている事だ。
友人の死が自分の責任だと苦悩し、自由なエクストリーム・スポーツ界を離れ、自身の贖罪のために規律正しいFBI捜査官になる事を選択した、主人公ユタ。そして、自然の猛威により自分の眼の前で無残な死を遂げた師を乗り越えるべく、過酷な「オザキ8」の達成に挑む、敵のリーダーである、ボーディ。
更に、今回主人公のユタをエクストリーム・スポーツのプロに設定した事で、オリジナル版で色濃かった「未熟な主人公に対しての、指導者的なスタンスの敵」という設定は覆され、ユタとボーディの二人がほぼ対等のスキルと経験を持った事で、二人の対決シーンの迫力と、ラストで主人公が取る選択が、より観客に対して説得力と余韻を残すようになった点があげられる。
映画では、ボーディがユタの正体に気付いていながら、自分達の仲間に引き入れていたという説明があるのだが、オリジナル版ではその部分の理由付けが弱く、どうしても説得力に欠ける部分があった。
しかし、「Xミッション」では、ユタの友人の死亡事故が記事になっていたため、周囲の人々がユタの過去を知っている、という描写を挟む事で、ボーディが自分と同じ過去を持ち、未だにそれに囚われているユタを救いたかったのだと、観客に納得させる事に成功している。
これにより、潜入捜査の成功要因と、ユタが犯人側に感情移入していく過程での説得力が数段増しているのは、言うまでも無い。
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意外にも、本作を観ているうちに、今回主演であるルーク・ブレイシーの喋り方や外見が、次第にオリジナル版のキアヌ・リーブスに重なって見えて来た事に驚いた。しかも、鑑賞後に資料で確認したら、彼がまだ26歳だったとは!
彼の過去出演作品からも判る通り、ラブストーリーからアクションまでこなせる俳優として、今後ますます活躍の場を広げるに違いない。
もちろん、この作品にも気になる部分が無いわけではなく、一つだけ難を言えば、敵のグループが映画の終盤で、いきなり狂暴な犯行に及ぶ点が、ちょっと唐突に感じられる事だろうか。
確かに、オリジナル版のラストにあった、アイロニカルな余韻も捨て難いが、本作でのユタが明日への新たな第一歩を踏み出すかの様なラストも見事だ。
男同士の熱い友情と、スピード感溢れるアクションを描きながら、前述したドラマ部分の完成度の高さ、それに今回撮影も担当したエリクソン・コア監督が撮る、美しいロケーションや迫力ある構図は、観客に爽快感と開放感を与えてくれる。そのため、女性の方が観ても十分に作品世界に入り込めるので、その魅力を是非、劇場のスクリーンで、ご自分の目で観て体験して頂きたい。
これからご覧になる方には、ぜひアクション以外のシーンにも、注目して観るのがオススメ!とだけ言っておこう。
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(文:滝口アキラ)
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