映画コラム

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2016年05月27日

時空を越える「世界一運の悪い男」!実はヒッチコック要素満載の『12モンキーズ』

時空を越える「世界一運の悪い男」!実はヒッチコック要素満載の『12モンキーズ』

毎日のお仕事お疲れ様です!この週末は家でゆっくり映画でも、そんなあなたに、現在デジタル配信中の映画からオススメの作品をご紹介する、「金曜映画ナビ」。

今回ご紹介するのは、1995年のアメリカ映画、『12モンキーズ』。6月4日からはHuluでドラマ版の新シリーズも配信されるので、この機会に映画の方を楽しまれてはいかがでしょう。

12モンキーズ(字幕版)



主演は、この世の危機を救うならこの男!不死身のダイハードマンことブルース・ウィリス。そして競演に今や役者としてだけでなく、プロデューサーとしても活躍しているブラッド・ピット。この2人が繰り広げる世界滅亡阻止の闘い!まさに眠気や疲れも吹っ飛ぶ面白さです。

ストーリー


あるウィルスの蔓延により、全人類の99%が死滅した2035年の地球。ウィルスを撒布したとされる集団12モンキーズを探り、ワクチンをつくるための病原体を入手するため、犯罪者コールは過去へのタイムトラベルへと送り出される。しかしタイムマシンの故障により目的の1996年よりも6年前の、1990年に到着。

そこで彼が出会ったのは、ジェフリーと医師のキャサリン。医師であるキャサリンの助けを借りて、実は細菌学者の息子であったジェフリーが12モンキーズのリーダーであることを突き止めたコール。更に、1990年に会ったコールの話から、ジェフリーがウィルス散布の計画を思いついたことが判明する。果たして、事件の原因はコール自身なのか?

そして迎える運命の1996年12月、いよいよウィルスが撒布され、世界が滅亡するその日がやってきた。彼は果たして12モンキーズの計画を阻止できるのだろうか?

観客も一緒に追体験できる、タイムトラベルによる冒険と混乱


果たして主人公は、本当に未来から来たのか?それとも彼の単なる妄想なのか?

ストーリーの進行と共に徐々に混沌としてくる展開は、フィリップ・K・ディック原作の映画「トータルリコール」を思わせるが、本作では主演2人の素晴らしい演技により、その真相が終盤まで観客には分からないため、観客も主人公と同じように作品世界に入り込んで、タイムトラベルによる冒険と混乱を楽しめるようになっている。

二大スター夢の競演による演技合戦、勝者はブラピ!


ブルース・ウィリスとブラッド・ピットという、超2大メジャー俳優を起用しながら、映画全編に漂う絶妙な「マイナー感」と、未来世紀ブラジルの流れをくんだ、テリー・ギリアム監督独特の未来感が楽しめる本作。しかし、本作での最大の見所は、この2人の今までに無い演技合戦が存分に堪能できるという点だ。

まず、ブルース・ウィリス。当時の彼は、「ダイハード」シリーズでの成功の後、「虚栄のかがり火』や『ハドソン・ホーク』といった主演映画の不評や興行成績の不振に悩んでいた彼が、1994年の「パルプ・フィクション」で第一線に返り咲き、再びアクションヒーローとして主演作を重ねていった頃の作品だが、それまでのアクションヒーロー的フィルモグラフィとは異なる、「状況に流される普通の男」という役柄は、かなり挑戦的な役柄だったと言えるだろう。

一方のブラッド・ピットの方は、この年1995年に主演したもう一本の作品「セブン」も高評価となり、前年の作品「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」「レジェンド・オブ・フォール」といった、二枚目のロマンティックな役柄とは異なる、「サイコパス」的役柄への方向性を、本作で見出した。

このように両者とも今までのイメージとは違う役柄に挑戦した本作だったのだが、残念ながら1995年度のアカデミー賞獲得はならず、ゴールデングローブ賞(第53回 1995年度)の助演男優賞とサターン賞(1996年)の助演男優賞を、ブラッド・ピットが受賞するに留まった。(サターン賞においては衣装賞と、見事に最優秀SF映画作品賞も受賞している)

実はヒッチコック映画だった?『12モンキーズ』


SF映画として観ると、途中で惑わされてしまいそうな本作だが、本編中にも登場する映画館で上映されているのが「ヒッチコック映画大会」なのでも明らかなように、実は往年の「ヒッチコック監督作品」に対してのオマージュを捧げて作られている。

本作の基本ストーリーである、「状況が全く分からないままで追われ、女性の力を借りて真実を追う」というのは、まさにヒッチコック監督のサスペンス映画の王道要素だ。ヒッチコック映画のヒロインのように、ラストはブロンドのかつらを着けるし、周りが信じてくれない中で陰謀を阻止しようとする主人公の姿は、代表作「北北西に進路をとれ」の主人公そのままでもある。

と、考えると、『12モンキーズ』の壮大な仕掛けにも納得がいくというものだ。ヒッチコック作品にはつき物の「マクガフィン」、つまりストーリー上で重要とされていた物が、実はさほど重要では無く、観客の目を紛らわせるためのウソだったりする事実。これを踏まえて見るだけでも、『12モンキーズ』をより楽しむことが出来るに違いない。

まばたき禁止!大量に散りばめられた伏線とヒントを見逃すな!


初公開時の観客の感想には、「ストーリーが良く判らない」との声も多かった本作。特にそのラストシーン、今までに何重にも張り巡らされた伏線やヒントと、それまでの展開とを複合的に考えないと簡単に理解出来ない構造は、数々の問題作を世に送り出したテリー・ギリアム監督の演出の冴えと言えるだろう。

特にエンドクレジットで流れるある曲。これをそのまま歌詞の通りに、未来への明るい希望と取るか、それとも逆説的に取るかだけでも、本作の受け取り方は真逆になってしまう。

あえて過度な説明を避け、観客の理解力と想像力を試すかのようなラストの展開に、あなたの頭脳は見事勝つことが出来るだろうか?ぜひ、この週末に挑戦してみて頂きたいと思う。

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12モンキーズ| 1995年 | アメリカ | 130分 | (C)1995 UNIVERSAL CITY STUDIOS. INC. All Right Reserved. | 監督:テリー・ギリアム | ブルース・ウィリス/ブラッド・ピット/マデリーン・ストウ/クリストファー・プラマー |

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(文:滝口アキラ

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