『64 ロクヨン』、前編と後編それぞれの特徴と見どころ
ついに後編も公開された『64』。前半は警察内部とマスコミとの関係を描いたヒューマンドラマ、後半はミステリー調で、絶妙な配合具合となっています。
特に前編・後編通して佐藤浩市と瑛太のやりとりはどちらの熱もすごくて、圧倒される演技合戦となっています。
(C)2016映画「64」製作委員会
事件が作り出した人間関係を見せる前編
誘拐事件発生と犯人を取り逃がし事件から14年後。事件が与えた人事で主人公は刑事課から警務課の広報官に異動となり、記者クラブに詰めているマスコミ相手に日々奮闘しています。
時効1年まで迫った誘拐事件通称「64」の捜査員たちを激励するため警察庁長官が県警を視察しにくることになります。警察庁長官のスケジュールには被害者家族の慰問もあるため、被害者家族の元へ訪れるものの拒絶されてしまい、さらに長官視察を取材してもらおうと記者クラブに要請するものの匿名問題が原因でボイコット宣言を受けてしまいます。八方塞がりになった主人公がどうやってこの問題を解決するか?それが前編のおおまかなあらすじ。
前半は主に事件によって変わってしまった人間関係や人間性をじっくり見せてくれます。主人公が警務部に移ったため、刑事部との軋轢やマスコミ、上司との関係など主に人間関係を前編で丁寧に説明してくれます。この人間関係は当然ながら後編にも直結しているし、後編でどういう風に変わっていくかも見所です。
見せ場は主人公広報官と警察相手にも一歩も引かないマスコミとの対立でしょう。ほんとに二人ともすごい演技で、見ててドキドキできました。
(C)2016映画「64」製作委員会
事件が収束していく後編
前編のラストで発生した「64」によく似た誘拐事件が発生し、それにより警察庁長官の視察がなくなったり、マスコミとの報道協定の締結をしようとするものの前編とのやりとりからなかなか締結できなかったりするなかで主人公が事件の情報を多く引き出すために操作指揮車両に入り込んで事件を調べていくという展開に。
前編と変わって後編はミステリー調。ほとんどの謎が解明されていきます。特に「64」絡みはちゃんと犯人が明確に提示されます。
見せ場いっぱりあり、例えば主人公が指揮車両に乗ってる間の、マスコミと警察関係のやりとり、記者会見。どちらも意地と立場のぶつかり合いでとても熱が入ってます。そして指揮車両でのやりとりで明かされる捜査の秘密。再び起こった模倣事件はどこへ行くのか?ご注目ください。
(C)2016映画「64」製作委員会
前後編に分かれた長編映画
父親たちのエピソード、誘拐事件の被害者、主人公はすべて娘たちへの思いが描かれています。この部分が一番感動できるところでもあります。特に主人公と被害者は気持ちはある部分で共感しており、理解者となっています。その思いが犯人を突き止めることになります。
また被害者の父親の心情もしっかり描かれていて、この部分もすごく感動します。そのため主人公も組織人ではなく私人として被害者に向き合い、事件に対して行動していきます。ある祭りのシーンでは、2人が対面するのですが、ほとんど会話せずに絵で見せるところがぐっときました。
前後編に分かれた邦画史に残りそうな傑作映画『64』。絵的に主人公と誰かという1対1という構図とやりとりが多いため、演技合戦としても見応えがあります。特に主人公の佐藤浩市は先輩、同期、若手と幅広い世代に対して全力でぶつかり合っていくところが面白いです。ぜひ映画館で!
(C)2016映画「64」製作委員会
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(文:波江智)
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