映画コラム

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2016年06月24日

今日は美空ひばりの命日、12歳のひばりが主演の映画を振り返る

今日は美空ひばりの命日、12歳のひばりが主演の映画を振り返る

美空ひばりは、昭和の歌謡界を代表する歌手であり女優のひとり。日本でその名前を知らない人はいないでしょう。


でも、若干12歳の美空ひばりが、大人顔負けの歌唱力と演技力をみせた映画があることはご存知でしょうか?
ストリーミングで観られる映画を毎週紹介する“金曜映画ナビ”、今回は『悲しき口笛』(1949年製作)を紹介します。

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1.美空ひばりは“やんちゃな男の子”の格好で登場!?


簡単に物語を紹介するなら、戦争で離ればなれになった兄妹が、歌をきっかけとして再会を果たそうとする、というもの。これだけだとシンプルに思えますが、人のよい親娘との触れ合い、ハラハラするサスペンス描写もあるなど、存分に娯楽要素が詰め込まれています。

よく観て欲しいのは、舞台となる戦後直後の横浜の風景。モノクロの画も相まって、戦後の混乱や貧しさがよく現れており、いまの発展を遂げたきれいな横浜とのギャップに驚けることでしょう。
美空ひばりは、兄との再会を目指す浮浪児として登場します。その格好はまるで“やんちゃな男の子”で、「え?これが美空ひばりなの?」と驚けるのではないでしょうか。

そして、ひとたび歌を歌えば、「美空ひばりだ!」とさらにビックリできるはず。12歳の少女なのに、その歌声は成年のころとほぼ変わりなく、重圧かつ人を惹きつけるものなのです。

2.かわいい美空ひばりを堪能しよう!


本作で何より言っておきたいのは、美空ひばりがとにかくカワイイこと!

「坊やじゃねえやい、ちび公だい(男の子と思われていたから)」という言い回しだけでも萌えるのですが、ちょっとイジられるとぶすーっとしたり、じぶんの手をコツンと頭にぶつけて「てへっ」としたり、酔っぱらいに対して露骨に嫌な顔をしたり……。大人顔負けの歌唱力でも、やっぱり子どもなんだな、と思うことができるでしょう(そして演技もうまい!)

また、美空ひばりがシルクハットに燕尾服を着て、心から楽しそうに歌うシーンもあります。大人による見事な伴奏、彼女のダンスと笑顔のおかげで、こっちまでニコニコしてしまうでしょう。
『悲しい口笛』というタイトルですが、決して映画は悲しくはない、それどころから美空ひばりのかわいらしさも相まって、元気がもらえる映画になっているのです。

ちなみに、美空ひばりが台詞のすべてを現場に来る前に覚えていて、撮影現場ではいっさい台本を開かなかったという逸話も残っています。歌手だけではなく、女優としても天才だったのですね。

3.世相にも負けない映画だった!


本作は、原作小説、映画、そして主題歌と、いまで言うメディアミックスが行われていました。これは美空ひばりをスターにするための戦略と言えるでしょう。

当時は「子どもは子どもらしく」という風潮がまかり通っていており、あまり子どもが大人のように歌うことは快く思われていなかったそうです。
(このことは、この前に美空ひばりがのど自慢に出場したとき、審査員からは「子どもらしくない」「真っ赤なドレスもよくない」などという理由で不合格になったことにも現れています)

しかし、そんな世相にあっても、この戦略はまさに大成功。主題歌は美空ひばりにとって初めてのヒット曲となり、一躍有名になったのです。

そんな美空ひばりを支えたのは、ほかならぬ母でした。
母は、周囲の反対を押し切ってまで彼女の才能を信じて行動し、レコーディングの際に的確なアドバイスをしているのです。
たとえば、主題歌『悲しき口笛』は恋人へ会えない気持ちを歌った切ないラブソングだったのですが、まだ恋を知らない12歳の彼女は、どのように歌っていいか分からなかったのだとか。
そこで母は「いちばん好きな人を思って歌いなさい」と提案します。彼女がそのとき思い描いたのは、ほかならぬ愛する母だったりするのです。

映画の『悲しき口笛』は、その美空ひばりと母の関係と似た、かけがえのない親子愛、家族愛が表れている作品です。
戦後間もないころは、劇中の美空ひばりのような戦争孤児や、住む場所もない人がたくさんいて、生きていくためにぎりぎりの生活を強いられていました。その時代において、人のあたたかさや出会いを含め、真摯に描いたこの映画は、当時の人を勇気づけたことでしょう。

それはいまの世でも変わりません。いまは亡き昭和の大スターが、幼いころから元気に歌い、逆境に負けない姿をみれば、きっと元気が出るはずです。幅広い方におすすめします。

[この作品を今すぐ観られるサービスはこちら](2016年6月24日現在配信中)



悲しみ口笛| 1949年 | 日本 | 83分 | (C)1949 松竹株式会社 | 監督:家城巳代治 | 美空ひばり/原 保美/津島恵子/菅井一郎/大坂志郎/徳大寺 伸 |

(文:ヒナタカ

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