(C)2015『ソロモンの偽証』製作委員会

【近づく梅雨に】腰を据えて観たい、長尺映画“5選”


じっとりした空気にいつ止むとも知れない雨。ああ新作映画を観たいのに梅雨の時期は外出するのも億劫……なんて思いを抱いている人は多いはず。そんな時は一旦気持ちをリセットして、自宅で配信やソフトを鑑賞しながら過ごしてみてはいかがだろう。

そこで今回は、外出できない梅雨の時期に「じっくり腰を据えて観たい長尺映画」おすすめ5タイトルを紹介していきたい。

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1:『ソロモンの偽証』(前篇・事件/121分、後篇・裁判/150分)

■中学生による裁判モノ、と侮ることなかれ

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ベストセラー作家・宮部みゆきの小説「ソロモンの偽証」を、成島出監督が前後編に分けて実写映画化。事件パートではある生徒の転落死をきっかけに交錯する中学生たちの動揺と思惑が描かれ、裁判パートでは転落死の真相を明るみにすべく開かれた学校内裁判が緊張感たっぷりに展開した。

宮部みゆきの最高傑作とも謳われる本作を下手に1本の映画にまとめようとせず、前後編で制作に踏み切ったことは間違いなく英断だっただろう。

中学生たちのリアルな人間性と、そんな子どもたちを「守る」という名目のもと事件にフタをしようとする大人たちの対応。ふたつの関係が相互に作用し合うため、子ども対大人という構図が中途半端にならずしっかりと成立している。

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特に後篇の学校内裁判は白眉の仕上がりで、大人顔負けの法廷劇には思わず見入ってしまう。明らかになる真実と裁判の結果をどのように受け止めるかは観客次第。

役名でそのままデビューを飾った藤野涼子をはじめ、邦画史上最大規模と言われたオーディションによって選ばれた板垣瑞生・石井杏奈・富田望生・清水尋也といった主要キャストに注目してほしい。

▶︎『ソロモンの偽証 前篇・事件』を観る
 
▶︎『ソロモンの偽証 後篇・裁判』を観る

2:『アビエイター』(169分)

■スコセッシ×ディカプリオの長尺映画にハズレなし

(C)2004 IMF.  All Rights Reserved

上映時間200分超えを果たした『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(206分)と同じく、マーティン・スコセッシ監督×レオナルド・ディカプリオ主演という名コンビの化学反応を存分に堪能できる本作。実在の大富豪ハワード・ヒューズの波乱に満ちた人生を切り取り、ヒューズに翻弄され続けた妻たちにもスポットが当てられている。

上映時間こそ『キラーズ~』に比べて大人しいが、それでもやはり169分の長尺だけあって鑑賞後の(良い意味での)疲労感はかなり強い。その疲労感の主たる理由こそ、ディカプリオ渾身の演技が炸裂するヒューズという人物像そのものにある。

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ヒューズの実業家や映画プロデューサー、飛行家といった表情が描かれる一方で、母親の呪縛ともいえるヒューズの潔癖症ぶりも本作のテーマのひとつ。月日を重ねるごとに症状が悪化し、日常生活どころか彼の人格にまで影響を及ぼしていく過程は、時間をかけて描かれるからこそ観ていて辛い。

また主演のディカプリオだけでなく、ヒューズに愛され、傷つけられる妻たちを演じたケイト・ベッキンセールやケイト・ブランシェットの存在感も圧巻。ブランシェットは本作で見事アカデミー助演女優賞に輝いている。

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▶︎『アビエイター』を観る

3:『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(169分)

■「これ終わるのか?」と思える狂気のアクション

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主演のキアヌ・リーブスによるスタイリッシュなアクションが人気を呼び、シリーズ化・スピンオフ制作と世界観の拡張が続く『ジョン・ウィック』シリーズ。中でも『コンセクエンス』は異常ともいえるアクションの釣瓶打ちで、上映時間だけでなく体感時間も長いと感じる(もちろん悪い意味ではない)作品だ。

チャド・スタエルスキ監督はもともとスタント出身ということもあり、数々のアクション映画から影響を受けてきたはず。シリーズ第3作『パラベラム』では、マーシャルアーツを得意とするマーク・ダカスコスや『ザ・レイド』シリーズのヤヤン・ルヒアンとセセプ・アリフ・ラーマンが参加。

そして『コンセクエンス』では真田広之とドニー・イェンという2人のレジェンドを起用しており、もはやチャド監督の夢小説ならぬ夢映画ではないかとすら思える。

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またアクション映画ファンにはお馴染みのスコット・アドキンスやマルコ・サロールも参戦しており、それだけアクション俳優がいるとなれば当然見せ場も多くなる。全編を通してがんばるのはキアヌだが、これだけのメンツが揃えばチャド監督のバイブスがぶち上がっていたことは想像に難くない。

その証拠に人をバンバン跳ね飛ばすカー・フーやRPG視点のガンアクション、上がっては落ちるを繰り返す階段ファイトなど、4作目にしてなお尽きない(異常で)斬新なアクションが目白押しだ。

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▶︎『ジョン・ウィック:コンセクエンス』を観る

4:『アベンジャーズ/エンドゲーム』(182分)

■アメコミ映画の頂点にして集大成

(C)Marvel Studios 2019

アメコミ映画史どころか映画史そのものに残るイベント作品ではないだろいか。サノスの指パッチンによって、全宇宙の生命の半分が塵と化した前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』から1年の時を経て公開された本作。全米オープニング興収記録を塗り替える特大ヒットを記録し、アメコミ映画への関心が低い日本でも大盛り上がりをみせた。

アイアンマンやキャプテン・アメリカ、ソー、ハルク、ブラック・ウィドウらMCUの人気キャラが顔を合わせるシリーズとあって、そもそも本シリーズは120分に収まるような作品ではない。

加えてシリーズを重ねるごとに、ガーディアンズ、スパイダーマン、キャプテン・マーベルといった面々まで画面に押し込むとなればなおさらのこと。むしろ「メインキャラが全員主役」の映画を監督のルッソ兄弟はよくぞ形にしたものだと感心せずにはいられない。

(C)Marvel Studios 2019

各キャラクターが積み上げてきた歴史を総まとめにし、なおかつサノス軍との総力決戦が描かれるとあってシリーズ最長の上映時間になるのは必然。指パッチンの歴史を変えるべく生き残ったヒーローたちが奮闘し、クライマックスへと至る要所要所のシーンもエモーショナル。

何よりテンションが天井を突き破る「アッセンブル」からのド迫力の最終戦は、MCUの総決算にこの上なく相応しい。182分でもまだ短いくらいだ。

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▶︎『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観る

5:『ハッピーアワー』(317分)

■濱口竜介監督渾身の超長尺映画


上映時間が317分もあると、確かに「映画」というフォーマットではあれど、「映画とは」と疑問も抱くかもしれない(2時間半の映画2本分と考えれば致し方なし)。

ところが。仲良し女性4人組の日常を淡々と捉えた5時間超の作品ながら、体感時間はそれほど長いとは感じず、むしろ「もっとこの4人の姿を追っていたい」とすら思えるから不思議だ。おそらくそれだけの時間、彼女たちの生活を垣間見ることで、観客もまた彼女たちの人生の一部になっているのかもしれない。

本作ではワークショップから選出された演技未経験の田中幸恵(あかり)・菊池葉月(桜子)・三原麻衣子(芙美)・川村りら(純)が主演を務めている。常に均衡を保っていた仲良し4人組だが、純が「隠し事」をしていたことで互いの関係性に疑問が生じ、足元がゆっくりぼろぼろと崩れていく状況の変化がリアル。


そんな様子を淡々と見せつけられるにもかかわらず、飽きがくるどころかグイグイと引き込まれるのだから濱口マジックはやはり不思議としか言いようがない。

また、演技未経験者を主人公に据えた影響も大きい。たとえばベテランの女優を起用してどれだけ素晴らしい演技を見せたとしても、それは「完成した」演技。田中・菊池・三原・川村がその他のキャストとともに試行錯誤して作り上げたあの独特な空気感は、決して再現できなかっただろう。

まとめ

近年は映画にしろ動画にしろ、長尺の作品は遠慮されがち。そんな時代にあえて長尺映画を観るのも、なかなか乙なものではないだろうか。実際に最近は3時間クラスの映画が増えたような気もするし、長尺といってもダラけるようなことはなく、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』やクリストファー・ノーラン監督作の『オッペンハイマー』のように高い評価を受ける作品も目立つ。

自宅鑑賞は一時停止ボタンを押してしまうような誘惑も多いが、その作品がなぜ長尺になったのか吟味しつつ、映画という非日常の世界に没入してみてはいかがだろう。

(文:葦見川和哉)

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