『日本のいちばん長い日』、映画に登場する用語解説と時系列整理
(C)2015「日本のいちばん長い日」製作委員会
昨年劇場公開された『日本のいちばん長い日』、一言で感想を述べることなど出来ない重厚で考えさせられる作品となっており、終戦記念日を前に是非ともご覧頂きたい作品です。
本作は史実である1945年8月15日未明の宮城事件を中心に描きつつ、書籍『日本のいちばん長い日 決定版』(半藤一利著)が原作、『聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎』(半藤一利著)、『一死、大罪に謝す 陸軍大臣阿南惟幾』(角田房子著)を参考文献にしています。
そんな本作を少しでも理解できるように、「知っておくと良い用語」と「本作が歩む史実の時系列」を整理してみました。なお本記事は「シネマズby松竹」編集長柳下修平が昨年個人ブログに整理して掲載した記事(公式プレスシートを参考に作成)を元にしております。映画のための解説に特化しており、歴史上の重要度等でのまとめにはなっておりません。その旨予めご了承ください。
知っておくと良い用語
聖断
=天皇自らが下す決断。本作ではポツダム宣言受託がそれに当たる
御前会議
=天皇出席のもとで国策や戦略を決定する会議のこと
宮城
=天皇の宮殿のこと、現在の皇居に当たる
詔書
=天皇が発する文書のこと
玉音盤
=天皇が終戦の詔書を読み上げたものが録音されたもの
玉音放送
=玉音とは肉声のこと、終戦の詔書を肉声でラジオ放送されたことから「玉音放送」と呼ぶ
国体護持
=天皇の国法上の地位と権威を守ること
大本営
=戦時中の日本軍の最高統帥機関で、天皇のもと陸海両軍で構成されていた
最高戦争指導会議
=従来の大本営政府連絡会議に変わり1944年に発足した名の通りの最高会議
本土決戦
=日本の本土での決戦のこと、映画内でクーデターを画策した軍人たちはこれを主張し敗戦を認めたくなかった
ポツダム宣言
=1945年7月27日にアメリカ・イギリス・中華民国の3国連名で発表された宣言、日本への降伏勧告、軍国主義勢力排除、連合国軍による占領、植民地の全放棄、戦争犯罪人の処罰などが盛り込まれていた
侍従
=天皇に仕える者、クーデター未遂時に玉音盤を隠して守りぬいたのは彼ら
映画内で描かれる史実の時系列
※台詞は映画に出てきたものの引用になります。
1929年
=鈴木貫太郎は当時侍従長、阿南惟幾が侍従武官
1945年4月7日
=鈴木貫太郎内閣成立、東條英機元首相の鈴木貫太郎首相への文句も映画で描かれる、鈴木貫太郎首相は陸軍大臣に阿南惟幾を指名。(ここで回想)
=戦艦大和撃沈
4月12日
=ルーズベルト米大統領死去、トルーマン副大統領が大統領就任
鈴木貫太郎首相
「今日、アメリカがわが国に対し優勢な戦いを展開しているのは亡き大統領の優れた指導があったからです。私は深い哀悼の意をアメリカ国民の悲しみに送るものであります。しかし、ルーズベルト氏の死によって、アメリカの日本に対する戦争継続の努力が変わるとは考えておりません。我々もまたあなた方アメリカ国民の覇権主義に対し今まで以上に強く戦います」
4月30日
=アドルフ・ヒトラー自殺
5月8日
=ドイツ、連合国に無条件降伏
5月25日
=東京大空襲
5月27日
=沖縄守備軍、首里城を放棄
(4月1日に米軍が沖縄上陸)
6月22日
=最高戦争指導会議、終戦へ向けて舵が切られ始める
6月23日
=沖縄守備軍全滅
7月27日
=ポツダム宣言発表
8月6日
=広島に原爆投下
=最高戦争指導会議開催、閣議招集、鈴木首相は抜き打ち御前会議開催
天皇陛下
「私の名によって始められた戦争を、私自身の言葉で収集できるならありがたく思う。」
8月8日
=ソ連、日本に宣戦布告
8月9日
=朝、阿南惟幾は陸軍の将校らに本土決戦を申し入れられる
=長崎に原爆投下
=陸軍将校らが阿南惟幾を担ぐクーデターを画策、阿南惟幾はそれを封じるために自らの意思と異なる「戦争継続」を内閣で訴えていくことに
8月10日
=御前会議で鈴木貫太郎首相が聖断を仰ぐ、ポツダム宣言の受託が決定されて国体護持を条件として連合国へ申し入れを行う
天皇陛下 「このまま戦争を続け文化を破壊し、世界人類の不幸を招くことは私の望むところではない。」
8月12日
=連合国から回答文が到着、回答文内における天皇陛下を「subject to」という訳について紛糾。外務省は「制限の下に置かれる」と訳したが、陸軍は「隷属する」と訳し、国体護持にならないとより、本土決戦の主張等強行な姿勢を示していくことに。
8月13日
=最高戦争指導会議が改めて開催される
=阿南惟幾陸軍大臣は天皇のことを気遣うが天皇の決意は固かった。
天皇陛下
「心配してくれるのは嬉しいが、もうよい。」
8月14日
=御前会議で改めて聖断が下される
=夜に宮城事件(クーデター未遂)
=23時25分 天皇が玉音放送録音のため宮内省に到着、録音の無事終了
阿南惟幾
「日本は滅びるものか。勤勉な国民だよ。必ず復興する。」
8月15日
=ポツダム宣言受託、日本無条件降伏
=阿南惟幾陸軍大臣自決
=畑中健二少佐自決
=正午の玉音放送、終戦
=鈴木貫太郎内閣総辞職
シンプルに情報絞ったものですが、この記事を片手に映画をご覧になられると理解度が深まるかなと思われます。
鑑賞前、鑑賞中、鑑賞後、様々なシチュエーションにて参考になれば幸いです。
(文:柳下修平)
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