2016年12月04日

映画「古都」10の魅力〜進路や将来に悩む若い世代と、その親世代に見て欲しい〜

映画「古都」10の魅力〜進路や将来に悩む若い世代と、その親世代に見て欲しい〜

古都 ポスター


(C)川端康成記念會/古都プロジェクト


12月3日(土)より全国で公開が始まった映画『古都』。川端康成の小説を元に、現代版として「その後」が描かれた作品です。

つい先日の、就活に関する記事をまさに書き終えた後に見て、「この作品こそ、就活や就職に挑んでいる人に見て欲しい!」と強く感じました。

今回はこの作品の魅力を語り尽くします!

1:松雪泰子の一人二役がすごい


生き別れた双子の姉妹(佐田千恵子 / 中田苗子)を、松雪泰子さんがおひとりで演じられています。千恵子の娘を橋本愛さん、苗子の娘を成海璃子さんが演じており、交わらないふたつの家族の話が、同時進行で進んでいきます。

その、ふたりの母親の風貌や性格を見事に演じ分けていたのが、松雪さんです。代々継がれている呉服屋と結婚した千恵子と、ごく普通の苗子。服装はもちろんですが、目の表情や、口角、立ち方、声のトーンなどで変化をつけて、見る人にも「確かに別の人だ」と思わせるすばらしいお芝居でした。

2:キャラクターもイケメンな伊原剛志・奥田瑛二・葉山奨之に注目


松雪さん、橋本さん、成海さんの女性3人が、物語を動かしていくのは確かですが、男性俳優陣のイケメンっぷりも、物語の重要な役割を担っています。

千恵子の夫で、呉服屋を営んでいる佐田竜助を演じた伊原剛志さん。佐田家を継いだ本人ですが、千恵子よりも心に自由があり、娘の舞に寄り添いながら、後押しをする様子が、とても素敵な父親でした。

さらに、佐田竜助の父親を演じているのが、奥田瑛二さん。主人公千恵子とは、義理の関係になるわけですが、千恵子との関係性も、「親子」として伝わってきました。

そして出演シーンは決して多くなかったのですが、佐田舞が気さくに話せる年下男子を、葉山奨之くんが演じています。舞と同じように代々受け継がれている家の生まれですが、葉山くん演じる水木真太郎は、舞とは違い、家を継ぐことを決意しています。一見、チャラ男(?)と思わせる部分もありますが、舞との会話の節々では家を継ぐ意志が伝わってきます。

3:佐田舞(橋本愛)の大学の友達がリアルすぎる


京都は、「いけず」な人が多いとよく言うのですが、まさに、そんな人たちでした。なかには舞に理解を寄せる友人もいましたが、いけずな二人に「あ〜、“あるある”やなぁ〜」と思わされました。

友達4人が登場するのは、お茶をしながら話しているワンシーンだけなので、ぜひお見逃しなく。

4:海外で挑戦する結衣(成海璃子)の迷いに共感


そして舞台はパリへ。ストーリーとしては、京都とパリ、同時進行なのですが、終盤にかけてパリのシーンが多くなります。絵の勉強のために留学している結衣が、パリでの生活に戸惑い、自身の描く絵にも悩んでいる様子を、成海璃子さんが丁寧に演じています。

実際、撮影は1週間で行われたようですが、戸惑いや、母・苗子とパリで会って悩みを爆発させる様子から、顔を上げて前を向くまでの成長がわかりやすく描かれていました。

苗子の前で見せる子どもとしての顔や、二人の関係性にも注目してみてください。

5:橋本愛の日本舞踊が圧巻


(家のコネで)決まっていた就職先も断ってしまい、自分の進路に悩んでいた舞が、パリに行くきっかけを掴み、そこで日本舞踊を披露します。

日本に残った千恵子とパリで踊る舞の映像が交錯する、作品の盛り上がりのシーンです。松雪さんが演じた千恵子の母親としての強さにも感動しますが、日本舞踊を披露する橋本愛さんは、お芝居とは思えない本格的な踊りで驚きました。

母親(千恵子)が大事にしていた帯を結んび、着物を召した舞は、普段よりも凛としていて芯の通った女性に見えました。橋本さんご自身が切れ長で端正な顔立ちをされているので、着物がよく似合っていたのも素敵でした。

それまでのシーンでは、お嬢様のような可愛らしい洋服か、リクルートスーツを着ていたので、上品な美しさに目を奪われます。

古都 メイン


(C)川端康成記念會/古都プロジェクト



6:「らしさ」のある京都、「らしくない」パリの映像


鴨川や、京都の中心部(四条河原町周辺)が映り、京都らしさ=日本の和があるのに対し、パリでは、エッフェル塔など私たちが想像する「THEパリ」な風景は映りませんでした。

舞や結衣にとって、パリは重要な場所として描かれているので、風景に気持ちを奪われない分、それぞれの登場人物の心情や変化に敏感でいられます。

もちろん、風景を楽しむこともできる作品ですが、人物(役者)とのバランスが絶妙に保たれていました。

7:色調のトーンの変化で、希望が見えてくる


作品の序盤で印象的だったのは、全体的に、映像が暗めだったことです。京都や、日本の和を表しているから、トーンを抑えているのかなあと考えていたのですが、舞台がパリに移り、舞と結衣が前を向き始める部分で、映像に光が当たります。

その起点となっているのは、結衣の方かな?と思いましたが、そこからずっと明るい色調に切り変わっていたので、重要な二人の心情や、千恵子・苗子の心情を表しているのだと思います。

ぜひ、色味にも注目してみてくださいね。

8:母娘の親子関係が理想的だけどリアル


松雪泰子さんが演じる、どちらの母親にも共感できる部分があるというのも見どころの一つです。

長年受け継がれてきたものを守らなければならない、千恵子が持つ意志も、苗子のように子ども想いで、留学先であるパリまで会いに行ってしまう優しさも、リアルさがあり、見る人の多くが共感するのではないでしょうか。

それらがよく表れているのが、舞(橋本愛)の就職試験の結果を勝手に見てしまう千恵子と、パリに住んでいる結衣の部屋で、切り裂かれた絵を見つけても見て見ぬふりをした苗子の部分です。

ご覧になられる方は、この二人の違いにも注目してみてください。

9:続きを期待したくなるラストシーン


ラストシーンでは、千恵子と苗子が、世代を超えて交わります。実際に、パリで運命的に出会うのは舞と結衣ですが、一言も発せず見つめ合う二人に、吸い込まれそうになる最後です。

このあと舞と結衣はどうなるのか、千恵子と苗子は再会できたのかなど、続きが気になりますが、これは映画を見て、ぜひ自由に想像してみてください。

10:エンディングテーマが作品にベストマッチ


そして、エンディングテーマとして流れる中島みゆきさんの「糸」。千恵子が呉服屋を営んでいることや、作品のストーリーから、「糸」の歌詞が絶妙に合っていて、最後の最後まで感動させられます。

今作は、原作「古都」のそれからを描き、現代を描いていることもあり、エンディングテーマも、中島みゆきさんではなくシンガーソングライターの新山詩織さんがカバーした「糸」が起用されています。

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まとめ


自分にとって良い作品かどうかは、作品自体の質もありますが、自分がどんな状況で見ているかというのも、大きなポイントだと思います。だからこそ、進路や将来に迷い、悩んでいる人、そしてその親御さんに見ていただきたいと思いました。

もちろん、登場人物と重なる部分がなくても、じっくりと味わうことのできる作品です。ただ、私が観に行った時には、比較的、年齢層が高い印象を受けました。確かに、「川端康成原作の・・・」というと、小難しい感じがしますよね。でも、作品は現代版ということもあり、とてもわかりやすく堅苦しさもありません。

「今の自分に当てはまっているな」と感じた方は、ぜひ劇場まで足を運んでいただけたらと思います。12月3日(土)より公開中です。

(文:kamito努)

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