１月28日から公開の『破門　ふたりのヤクビョーガミ』。
シネマズby松竹では、同作の小林聖太郎監督に単独インタビューを行い、見どころや主演の印象、撮影時のエピソードをお聞きしました。

―同作のオファーを受けた時の気持ちをお聞かせください。

小林　2年前になりますね。「煙霞-Gold Rush-」のシナリオを書いていた時でしたので、不思議な気持ちになりました。大阪が舞台の話なので、声をかけてもらえたのかなと思っています。


―黒川博行作品の映像化はドラマに続いて2作品目になりますが、何か気をつけていらっしゃることはありますか。

小林　黒川作品だから特に気をつけたということはありませんが、大阪を舞台にした時にステロタイプなことはしたくないと思っています。シナリオを直している時に原作者の黒川さんと話す機会がありました。プロットを持参したのですが「煙霞が面白かったから読まんでも分かる。全部お任せします」と言われたので逆にプレッシャーでした。ちなみに関西国際空港でのシーンに出演して頂いています。

―主演の佐々木蔵之介さんと横山裕さんの印象を教えてください。

小林　お二人とも役者として運動神経がよく、頭の回転が早いこと。それが長所ではありますが、二人とも最初から相性が良く、息が合いすぎていたので、「息を合わせるのは最後までとっておきましょう」と話しました。

―撮影中に起きた面白いことや制作秘話などありますか。

小林　カーアクションのシーンで、『マエストロ！』の時に西田敏行さんの吹替をしたカースタントの方に今回は横山君のスタントをやって頂いたのですが、カツラと衣裳をつけてもシルエットが違いすぎて着る意味あるのか？という状態で……西田さんの時はどちらが吹替か編集室で見てもわからないぐらいだったのですが(笑)。　

―原作を映画化する際に、何を入れるか、何を省くかが重要となってきますね。

小林　原作が長い小説である以上、どうやっても殆どを削らざるを得ないのですが、ダイジェストにならないよう気をつけました。手形詐欺や博打の詳細、組同士の入り組んだ力関係や役職など、情報の説明を極力排して、桑原と二宮を中心とした関係や感情を追っていったという感じです。


―関西弁のできる俳優さんを集められたそうですね。

小林　映画を見た関西人が関西弁を聞いて違和感を感じないようにしました。関西出身でも関東で長い間活動していらっしゃる方々は無意識のうちに標準語に影響されてしまっていることもあるようで、お互いに確認しながら撮影していきました。

―本作品の見どころを教えてください。

小林　狂犬やくざの蔵之介さんや、意外な侠気を見せる横山くん、小狡い詐欺師の橋爪さん……などなど、出演者達の新たな一面が見られる作品になっています。自分と波長・価値観の合わない相手とどう付き合うか、を念頭に置いて作った映画でもあります。けっきょく欲を介した連帯こそが人間関係の基礎であるという、身も蓋もないことになってますけど。


―これから映画を見ようとしている人に一言お願いします。

小林　まあ、小難しいことは置いといて気楽に見てください。世の中うまい話はないので騙されないように。




―インタビュー後記

疫病神シリーズで、他にも映画にしたい作品はあるかお聞きしたところ「国境」と答えられました。理由は「一番映画にしやすいけど、一番映画にしにくくもあるから」ということで、映画監督としてやりがいがありそうだからということのようです。

原作者の黒川先生も全てお任せするといったお墨付き。テンポがよくて主演の二人の掛け合いが楽しい映画に仕上がっている『破門　ふたりのヤクビョーガミ』は1月28日から全国公開です。

（取材・文：波江智）