映画コラム
“女同士の友情は薄い”は本当か?女性の絆のイメージを覆す映画4選
“女同士の友情は薄い”は本当か?女性の絆のイメージを覆す映画4選
「女同士の友情」をググってみると、「薄っぺらい」「浅い」「ありえない」など、ネガティブな表現が目の前に並びます。また、「女が女同士の友情よりも恋愛を優先する」というふうに考える人も少なくないでしょう。
しかし、女性の友情はこんな簡単に片付けられる関係なのでしょうか? 今回は女同士の絆を描く4つの映画を紹介しながらその問いについて考えてみたいと思います。
1:『4ヶ月、3週と2日』
2007年カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した人間ドラマ。あらすじを簡単にまとめると、共産政権末期のルーマニアでルームメート(ガビツァ)の違法中絶を手助けする女子大生(オティリア)の1日を描く映画です。
しかし、この物語を理解するために当時のルーマニアの背景を知る必要があろう。作品の舞台は1987年ですが、当時独裁者チャウシェスク大統領の政権は労働力確保のため、避妊も中絶も禁止していました。そんな中でオティリアが恋人から金を借り、中絶を行う怪しげな医者とセックスしてまでガビツァを手伝うのです。
女性の身体が抑制される時代に女友達のためにどこまで自分を犠牲にするか。女友達のためどこまで苦しい思いをするのか。『4ヶ月、3週と2日』が極端な状況を描くことで女性の友情について考えさせてくれる、印象に残る傑作作品です。
2:『乙女の祈り』
1954年6月にニュージーランドで起きた実際の事件に基づく物語。下宿屋を営む低所得の家庭に育った女子高性のポウリーンは、イギリスから転校した名門大学の学長の娘ジュリエットと熱烈な友情を育んでいきます。
二人の環境が異なるにもかかわらず2人の友情がどんどん深くなり、「正常な関係」の限度を超えているのではないかと二人の両親から妨げようとします。しかし、ポウリーンとジュリエットが殺人を犯してまでその友情を守ろうとし……。
時には純粋、時には残酷、型にはまっていない少女の友情を語ってくれる映画です。
3:『下妻物語』
ロリータ・ファッションに熱心の桃子が偽ブランド屋をやっていた父と一緒に茨城県の下妻市に住んでいます。その父親の作ったベルサーチの偽物を買いに来たことがレディース(暴走族)の一員であるイチゴとの出会いのきっかけです。
引退する暴走族の総長へ感謝の気持ちを表すために、イチゴが代官山にいる有名な刺繍家を探し、自分の特攻服に「ありがとう」と入れてもらおうとするが、伝説の刺繍家は実在しませんでした。
落ち込んでいるイチゴのために桃子が刺繍入りの特攻服を仕上げますが、それに対するイチゴの感動と感謝の気持ちに桃子が圧倒されます。これをきっかけに二人の友情が芽生えはじめ、お互いに必要な存在になっていくのですが、まったく違う世界に住んでいる二人のあいだに「友情」というものがあり得るのでしょうか?
4:『ミー・ウィズアウト・ユー』
『ミー・ウィズアウト・ユー』は、80年代〜90年代のイギリスを背景に二人の女性の成長を描く映画です。
ホリーとマリーナは、子供のころからいつでも一緒だった大親友。二人の友情が信頼に基づく関係ですが、一方競争意識も伴っており、ホリーとマリーナが友達でありながらもライバルでもあります。
ホリーがマリーナの兄ナットと関係を持ったり、二人の女性が同じ大学教授に恋をして二股をかけられたり、様々な三角関係が描かれていますが、物語の中心に異性愛関係ではなく、常にホリーとマリーナとの複雑な絆があります。
「愛情」「嫌悪」「葛藤」「依存」…一つの言葉だけでまとめられない二人の友情が女同士の友情の薄いイメージを覆します。
まとめ
男同士の友情は強く美しいとされるのに対して女同士の友情は弱い絆と思われがちですね。男女問わず「女同士の関係が浅い」と思っている人が少なからずいます。しかし、表面的なレベルに留まらず、女性同士の友情の複雑さを探り、偏見的なイメージをひっくり返すこともできます。映画こそその機会を与えてくれるかもしれません。
(文:グアリーニ・ レティツィア)
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