映画コラム

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2017年02月11日

子ども版グランド・セフト・オートな映画が公開される件 監督に聞いた“教育上問題ない理由”とは?

子ども版グランド・セフト・オートな映画が公開される件 監督に聞いた“教育上問題ない理由”とは?



ここからは、本作の監督であるファイト・ヘルマーへのインタビューをご紹介しましょう。



1:“大人にとってはちょっと危険”な映画?


——この映画を作ったきっかけを教えてください。

「子どものための映画を撮ろう」というよりも、「息子と一緒に観る楽しい映画を作ろう」、「楽しいだけじゃなくて考えさせられる映画が観たい」と思ったことがきっかけになっています。その頃、映画館でかかっていたのは、アニメ映画か大人向けの映画しかなくて、息子と一緒に観たいと思う映画がなかったんです。僕は映画監督だったので「じゃあ自分で作るしかないな」と(笑)。

——本作はたくさんの映画祭で上映されていますが、映画を観た子どもたちの反応はいかがでしたか?

映画祭では2000人の子どもが集まったこともありました。まだ学校に通っていない年代の子どもだと、映画を観ながら踊り出していたりしていましたね。ただ、学校に行くような年齢だと、子どもといえども、やはりおとなしくなりますね。

実は、この映画を上映するときに必ず言うことがあります。それは、この映画が“大人にとってはちょっと危険”ということです。映画の中の子どもたちは、本当に生意気でわんぱくですからね。もし、大人たちがこの映画を観てあまりにも驚くようだったら、お子さんたちの手を、ご自身やほかの大人の顔の前に持って行って、観ないようにしてあげてください(笑)。

——この映画で、日本の有名なアニメ「クレヨンしんちゃん」を連想しました。クレヨンしんちゃんが好きな人に本作をおすすめしたいのですが、監督ご自身はご覧になったことはありますか?

昨日、日本の地下鉄で「クレヨンしんちゃん」の宣伝を見ましたね。ぜひ広告のタイアップをお願いしたいけど、無理かな(笑)。「クレヨンしんちゃん」が好きな方が、FacebookやTwitterでトレーラーなどで『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』を紹介してくれるとうれしいですね。



2:子どもが出演している映画ならではの苦労とは?


——子どもたちのオーディションや、撮影はどのように行われていたのでしょうか。

本作を企画するとき、まずは「子どもたちが何歳であるべきか」を議論したんです。僕は「3歳か4歳がいい」と言ったのですが、製作会社や配給会社、テレビ局といった資金援助をしてくれているスポンサーからは「6歳がいい」と言われたんです。

と言うのも、小さな子どもたちと映画を撮るとなると、どれくらいのリスクがあるのか想定できないところがあったんです。撮影の途中で嫌がったり、「もうやめたい」と言う子どもがいないとも限らないですからね。しかも、3から5歳までの子どもだと1日に3時間しか撮影できないという法律上の制約があるのですが、6歳になっていたら1日に5時間の撮影が可能になるんです。スポンサーが6歳を勧めるのも無理はありません。

そこで、初めのオーディションで3歳から6歳の子どもたちを1000人くらい見てみたのですが、やはり少し年のいった……年のいったと言っても6歳ですけど(笑)、そのくらいの子どもよりも、やはり3歳か4歳の子どものほうが、映画に出ていることが想像しやすかったんです。僕は映画監督である前にプロデューサーでもあるので、プロデューサーとしてリスクを負うなら、やはりその年齢でやりたいと主張しました。スポンサーも「映画としては3歳や4歳のほうが素敵だ」、「あなたの決断であればやってみてほしい」と言ってくれましたね。

——1日3時間しか撮影ができないとなると、撮影にも時間がかかったのではないでしょうか。

撮影期間は10週間にも及びました。でも、子どもたちは最後までずっと楽しみながら演技をしてくれたようで、とてもうれしかったです。
また、子どもたちとは1日3時間しか撮影できないのですけど、大人の俳優さんも出ていますし、アカハナグマも撮影しなければいけなかったので、結局は1日に12時間くらいは撮影をしていたんです。撮影期間が長いのは、僕が監督としてテンポがゆっくりしていたせいもありますけどね(笑)。

——そのアカハナグマの撮影は、子どもたち以上に大変そうですね。

アカハナグマが何かに怖がったりして、子どもに噛み付いてケガをさせてしまう危険性があったので、しっかりとした管理体制が必要でした。オーディションで選んだ子どもたちは、おとなしいとは言えない子ばかりだったので、余計に大変でしたね。なんとか、アカハナグマでの事故を1つも起こすことなく撮影を終えることができて、ほっとしています。



3:“壊す”ことにより、“何かを作る”ことを教える映画だった。


——この映画で子どもたちは多くのものを壊していきますが、実は創造性、何かを生み出すことのの素晴らしさを説いている映画であると感じました。

そうですね、子どもたちが壊すというのは、新しい何かを作るための、通り過ぎていくべき道なんです。たとえば、ブロックで何かの動物を作ったりすると、それをいったん壊さないと、次の新しい何かは作れませんよね。あるいは、どこか新しい地に降り立ちたいと思ったら、今までいた古い地を離れなければ、新しい地に行き着くことはできません。何かを作る、得るためには、何かを壊したり、捨てる必要がある、ということも描いているんです。

——しかし、先ほど“大人にとってはちょっと危険な映画”とおっしゃったように、この映画が教育上悪いなどと、怒ってしまう大人もいるかもしれません。そうした大人に対して、反論や、こう考えてほしいという提言などはありますでしょうか。

まず言っておきますが、“大人にとってはちょっと危険”というのは一種の冗談ですよ(笑)。

でも、映画を観たお母さんの中に「子どもたちが映画のように、クレーンの上に登って行ってしまったりするんじゃないか、マネをしてしまうんじゃないかと心配です」と言った方がいましたね。

僕はそのお母さんに、「子どものころに『長くつ下のピッピ』を観ていましたか?」と質問しました。そのお母さんはテレビシリーズをすべて観ていたということなので、「あなたは『長くつ下のピッピ』のように、電車に飛び乗って踊ったりしましたか」と聞きました。「もちろんしません」と答えたので、僕は「あなたがやらなかったバカなことを、あなたの子どもがやると思うのですか?」と言ってやったんです。

そうそう、僕の息子はこの映画を10回以上も観ていますけど、それでも車を走り回すようなことは1回もしていません。大人たちが考えているほど、子どもはバカではありませんよ。

まとめ


ここまでで、本作『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』がいかに楽しく、そして教育的でもある理由をわかっていただけましたでしょうか。

これほどの楽しい映画を親子で観れば、きっと一生忘れられない思い出になるでしょう。“子どもと一緒に観るのはアニメ映画”ということは、ある種の常識のようにまかり通っていますが、本作のように“実写でも子どもが楽しめる映画があるんだ!”ということも広まってほしいですね。ぜひぜひ、劇場情報を確認の上、映画館に足を運んでください!

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(文:ヒナタカ)

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