映画コラム

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2017年03月15日

『モアナと伝説の海』が傑作である10の理由を全力で語る!

『モアナと伝説の海』が傑作である10の理由を全力で語る!


7:“脱ディズニープリンセス?”おとぎ話からの“外し”にも注目だ!


昨今のディズニー映画は、“王子様が現れてめでたしめでしたし”な王道のおとぎ話から、いい意味で“外れた”ものが多くなっています。
・『プリンセスと魔法のキス』
主人公は黒人の女の子で、目指しているのは王子様の結婚ではなく“自分のお店を開くこと”でした。

・『塔の上のラプンツェル』
主人公はお姫様ではありましたが、恋の相手となるのは“盗賊”な上、王子様なんか待たずに自分の意思で行動しまくっています。

・『アナと雪の女王』
男女の関係だけではなく、“姉妹愛”などの多様な愛の形が描かれており、作中では「王子様と出会ったその日に婚約するなんておかしいだろ」という冷静なツッコミが入ったりもしました。

・『マレフィセント』
悪役が主人公になっただけでなく、とうとう王子様が役にも立たない当て馬のようになっていきます(笑)。

・『ズートピア』
主人公の相棒となるのが“詐欺師”で、テーマがアメリカ社会を切り取った“差別”になっているなど、新たなディズニー映画の可能性を模索し、しかもそれが大成功をしている大傑作になっていました。

そして今回の『モアナ』がどうなったかと言えば……主人公のモアナは子どものころから怖い話を嬉々として聞いている勝気で行動力のある少女になり、その将来はお姫様ではなく村長(むらおさ)になることが示唆されていました。

さらに、その主人公の相棒のマウイは屈強な大男であり、鼻がつぶれていてお世辞にもイケメンとは言えないルックス!全身にタトゥーが入っていて不良っぽい(偏見)!しかも(少なくとも初登場時は)自意識過剰で性格までもがマジで悪かったりするのです。王子様の“お”の字も出てこないのがスガスガしい!良い意味でおとぎ話(ディズニー作品)から“外れ”まくっていました。

もちろんこのキャラ造形も意図的なもの。作中にはこんなセリフがあったりもしました。
モアナ:「私はお姫様じゃないわ(I am not a princess.)

マウイ:「ドレスを着て動物の親友がいればお姫様だよ(If you wear a dress and have an animal sidekick, you're a princess.)」

しかも、その“動物の親友”というのが“おバカなニワトリ”だったりするので、あらゆる意味で皮肉的なのです。

そして、このキャラ造形こそが「世界は私たちが救うんだ!」という王道の冒険活劇、そして“自己実現”というテーマに必要不可欠なのです。どのキャラクターも、そして今までのおとぎ話からの“外し”も大好きになれました。

8:実は“海版マッドマックス”だ!


現在、Twitterで「モアナ」と検索欄に入れると、「マッドマックス」がサジェストされるようになっています。そう、2015年に公開され、世界中に熱狂を巻き起こした『マッドマックス 怒りのデスロード』をほうふつとさせるシーンが『モアナ』の劇中に存在し、観た方が「海版のマッドマックスだった!」と大興奮しているのです。

そのシーンを切り取った動画も公開されているのですが、これは「えーっ!」とびっくりするシーンでもあるので、ここでは紹介しないでおきます。ちなみに監督で1人であるジョン・マスカー氏も「マッドマックスのオマージュは意図的です」などと語っていますよ!

余談ですが、1995年の映画『ウォーターワールド』も、“海版のマッドマックス”と揶揄された作品でした。こちらはゴールデンラズベリー賞における最低作品賞・最低主演男優賞・最低監督賞・最低助演男優賞を受賞した大失敗作なのですが、個人的にはそんなに嫌いじゃありません。薄い髪が濡れて見た目がヤバいことになっているケヴィン・コスナーの毛根にハラハラし、ヒロインが全裸になってお茶の間が凍り、エンディングの唐突さにズッコケられるという、見どころ満載な素敵な映画ですよ。



(C)2016 Disney. All Rights Reserved.



9:ジブリ作品の影響も!さらにこんな作品にも似ている!


本作には『千と千尋の神隠し』や『もののけ姫』などのジブリ作品に影響を受けたと思しきところがあり、ジョン・マスカー監督は「企画の初期段階から宮崎駿監督の映画からの影響がありました」と、もう1人の監督であるロン・クレメンツ氏も「とある問題に対しての解決方法が“戦う”だけではないことにも、ジブリ作品の影響があるかもしれません」と語っていました。ジブリファンにとっても必見でしょう。

さらに劇中では、『ワイルド・スピード』シリーズや『キング・オブ・エジプト』や『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』や「ゼルダの伝説 風のタクト」(ゲーム)や「大神」(ゲーム)やら、いろいろな作品をほうふつとさせるところが満載。それぞれの作品が好きな人にとっても、きっとお気に入りの作品になるはずです。

10:同時上映の短編『インナー・ワーキング』はすべての“社畜”に捧げた傑作だ!


本作の同時上映作品である『インナー・ワーキング』も傑作です!詳しくは言わないでおきますが、これは“社畜”と呼ばれるほどに疲弊している日本人こそ、心に染み入る内容になっているのです。しかも『ファイナル・デスティネーション』シリーズのような「死でゲラゲラ笑う」という不謹慎すぎる楽しさもありますよ(ディズニー映画なのに)!



それでいて、この『インナー・ワーキング』が、本編の『モアナ』のテーマである“自己実現”を、“別の形”で描いているのがたまりません。『モアナ』は南の島を舞台にした“別の世界”の出来事を描いていますが、『インナー・ワーキング』で提示された“方法”は“私たちが今いる世界で実現可能”なものなのです。本編と、たった6分の短編とで、尊いテーマがリンクしていることも素晴らしい!

おまけその1:今の劇場は“音楽映画”が豊作!


現在、3月(春休み)には『モアナ』以外にも、それぞれで違った魅力を持つ音楽映画が公開されていることを、強く訴えておきたいです!
・『ラ・ラ・ランド』(公開中)
往年のミュージカル映画のオマージュが満載!

・『ハルチカ』(公開中)
吹奏楽部の演奏を誠実に描いた、“音楽”を主役した青春物語!

・『SING シング』(3月17日より公開)
みんなが知っている名曲がたっぷりのアニメーション!

もはやここまで来ると、映画館に行く楽しみが多すぎて、忙しいレベルですよ!

おまけその2:『モアナ』が好きな人にこのアニメ映画をおすすめ!


最後に、『モアナ』が好きな人にオススメのアニメ映画を2本紹介します。
・『リロ&スティッチ』
同じく南の島を舞台にしたディズニーアニメですが、なんとテーマは“家庭崩壊”!『アナ雪』と同様に“姉妹愛”が描かれていたりもします。

・『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』
ジブリアニメへのオマージュが満載のアイルランド製アニメ。絵本のようなかわいい絵柄で、幼い兄妹による冒険が描かれています。“不安”、“幻想的”、“孤独”といった、他の子ども向け映画ではなかなか味わえない感情を与えてくれました。DVDとBlu-rayは4月5日発売です。

まとめ


いろいろと語ってきましたが、本作は“誰もが分け隔てなく、親子でも、デートでも、友達とでも最高に楽しめる、極めて万人向けの作品”であることは間違いありません。あまり映画館で映画を観ないという方も、きっと満足できるでしょう。可能であれば、字幕版と吹替版の両方を観て、それぞれの魅力も知ってほしいです。

そして、本作は「エンドロールの途中で帰らないで!」ということも、強く訴えておきたいです。素敵な余韻を残してくれる“おまけ”が最後にありますよ!

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(文:ヒナタカ)

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