幻のアカデミー賞を獲り続ける俳優トム・ハンクスの凄み



映画『ハドソン川の奇跡』より


(C)2016 Warner Bros. All Rights Reserved


『ハドソン川の奇跡』も記憶に新しいトム・ハンクス。

日本人はトム・ハンクスが好きだ。

そこまでホリ深くない顔立ち。良い笑顔。チャラチャラしてないし何より日本では『フォレスト:ガンプ/一期一会』のイメージがいまだに強い。ゆえに好感度が高い。

フォレスト・ガンプ/一期一会 (字幕版)



さらに近年の映画の中のトム・ハンクスはいつだって逆境や危機に立たされながらも、冷静に対応して乗り越えるリーダー的な立場が多い。



映画『ハドソン川の奇跡』より


(C)2016 Warner Bros. All Rights Reserved


90年代はラブストーリーをしていたトムも2000年台はこういった逆境立ち向かいリーダー役がほとんどだ。(空港や島に閉じ込められて精神追い込まれる系もあるけど)

ターミナル (字幕版)



おそらくわざとそんな役をしてるのだろう。
危機に困ってる顔が秀逸すぎるのだ。

眉をぐっとよせ、年齢とともに落ちた顎のラインは部下に好かれた知的なリーダーはこんな顎のラインしてるよねーのライン。そして演技とは思えない絶妙な瞬き。

画面いっぱいまでドアップ。目がうつろになり、音も遠くなる。
思い悩んで意識飛びそうな顔だって顔の筋肉の1筋1筋上手につかい、見事に演じる。

こういったシーンはトム・ハンクス出てる映画で絶対ない?どこかに絶対入ってるよね?
トムのマネージャーが「うちのトムはこれめっちゃ得意なんで!!」って売り込んでるのか?それくらいある。

ただ素人目に観てもその顔面アップに凄みを感じる。

戦争で兵隊を救うリーダー、船のキャプテン、飛行機のパイロット……そして今回は交渉人。

保険屋なのに米ソのスパイ交換の交渉人……恐
るべきはこれが実話って事……『ブリッジ・オブ・スパイ』


ブリッジ・オブ・スパイ


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スティーブン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演、ジョエル&イーサン・コーエン脚本と、いずれもアカデミー賞受賞歴のあるハリウッド最高峰の才能が結集し、1950~60年代の米ソ冷戦下で起こった実話を描いたサスペンスドラマ。

保険の分野で着実にキャリアを積み重ねてきた弁護士ジェームズ・ドノバンは、ソ連のスパイとしてFBIに逮捕されたルドルフ・アベルの弁護を依頼される。敵国の人間を弁護することに周囲から非難を浴びせられても、弁護士としての職務を果たそうとするドノバンと、祖国への忠義を貫くアベル。

2人の間には、次第に互いに対する理解や尊敬の念が芽生えていく。死刑が確実と思われたアベルは、ドノバンの弁護で懲役30年となり、裁判は終わるが、それから5年後、ソ連を偵察飛行中だったアメリカ人パイロットのフランシス・ゲイリー・パワーズが、ソ連に捕らえられる事態が発生。両国はアベルとパワーズの交換を画策し、ドノバンはその交渉役という大役を任じられる。

はずれ無しのタッグ。重厚な歴史映画。面白くない訳がない。

もちろん面白い。
そしてトム・ハンクスの映画を観た後は面白さとは別に思い出すことがある。

「ちゃんと審査するならね、アカデミー会員がちゃんと毎年審査するなら毎年トム・ハンクスになるよ。そら」

映画好きの先輩が僕に言った。

先輩「多分やけどな、多分やけど、ブラックリスト載ってると思うねん、トム・ハンクス」

僕「なんすか?ブラックリストて?」

先輩「いやもうアカデミー賞獲らせたらあかんリストやんか」

僕「え?でもフィラデルフィアとかフォレストガンプとか……」

先輩「だから2個獲った時点で、『これヤバいぞ』って他の俳優とかが思ってん。これトム全部行く気やぞ。と」

僕「はあ」

先輩「あんまり言うなよ。だからアカデミー賞から毎年金もらって『我慢してください』って言われてるはずやわ」

たばこの煙を空に吐きながら、真剣な顔で妄想言う先輩。

「いやダニエル・デイ=ルイス3回獲ってますけどね……」

という言葉は出さなかった。

なぜなら妙にその嘘話に説得力あったからだ。

そもそも顔がリアルヒーロー。
力が強いとかじゃない。空飛べるとかじゃない。人間のヒーロー代表みたいな顔。

昔血迷って日本の「夜もヒッパレ!」出てる時は小学生ながら「トム!どうした!?」って思ったけど、それもこれもトムのリアルヒーローの器のでかさを表してる。

これからも幻のアカデミー賞を獲り続けるトム・ハンクスの映画を1本でも多く観たい。

(文:南川聡史)

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