映画コラム

REGULAR

2017年06月30日

『フィフティ・シェイズ・ダーカー』に学ぶSEXのレベルアップと、女性のオトし方とは?

『フィフティ・シェイズ・ダーカー』に学ぶSEXのレベルアップと、女性のオトし方とは?

フィフティ・シェイズ・ダーカー ポスタービジュアル


(C)2016 UNIVERSAL STUDIOS


現在公開中の『フィフティ・シェイズ・ダーカー』は、世界中で1億部以上も売れたという小説を映像化した『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の続編。その物語を一行で表すのであれば、“平凡な若い女性が、若き大富豪に気に入られて性的な従属関係を求められる”というもので、SM趣味のエロティックなシーンが見どころの1つとなっています。

キャラクター同士の馴れ初めが中心だった前作と比べ、今回はさらにキャラクターの内面を深く掘り下げた内容となっていました。その特徴と魅力がどこにあるのか、たっぷりと語ってみます。

1:お金と権力は正義!その豪快さが、もはや笑ってしまう勢いに?


本作の主人公の1人である男性は何しろ超お金持ち。前作では高級なクルマが何台もあるガレージを見せたり、自家用飛行機でデートをしたりするセレブレティな生活を体験できることも魅力になっていました。その“彼女のためなら金に糸目をつけない”豪快さが今回も大盤振る舞いなうえ、さらに大企業の社長という“権力”までも、ヒロインのために役立ててくれるようになっています。

個展でヒロインの大きな写真が展示されていたら、その全てを即購入するなんて序の口。ヒロインが務めている会社を買収することで、自分が彼女の上司になれることをほのめかしたりもします。あまつさえ彼女が2万4000ドルの小切手を返そうとした時には「そのくらいは15分で稼げる」と言い放ったりもするのです。

つまり、主人公はお金と権力で彼女の気をひき、自分の“従属物”にしようとしているわけ。前作では主にサディスティックなセックスが愛情とイコールではない、いびつなものであると語られていましたが、今回は“お金と権力”も彼らのすれ違いのタネになっていたりするのです。

ただし、作中ではこのお金や権力を無下に否定せず、むしろヒロインの成長のために役立っているというのが皮肉的であり、また“痛快”でもあったりします。

突然ですがクイズを出しましょう。



彼女のためなら社長としての権力を行使することもいとわない男が、違う会社の上司からその彼女がセクハラとパワハラを受けたことを知ったら、何をするでしょうか?


……答えはおわかりだと思いますが、その時の彼の“即決”っぷりは大笑いしてしまいました。

そう……本作では前作以上に主人公のお金と権力の使い方が豪快すぎて、“笑ってしまう”という粋に達しているのです。普段から上司から嫌がらせを受けていたり、面白い仕事をさせてもらえないと嘆いている方にとってはスカッとできること間違いなし。きっと誰もが「自分に尽くしてくれるお金持ちの社長をパートナーにしたい!」と思うことができるでしょう。

フィフティ・シェイズ・ダーカー ネタバレ


(C)2016 UNIVERSAL STUDIOS



2:明日から使えるモテ行動!時代はお姫様抱っこじゃなくて“かつぐ”だ!


以上に挙げたようなお金と権力の使い方は、一般的な経済力と社会的地位の男性にとって、まったく恋愛の参考になりませんね(笑)。

しかしご安心を、本作の主人公には“鍛え上げた肉体”という武器もあり、それを利用したモテ行動も披露しているのです。

その具体的なモテ行動とは、“かつぐ”です。大事なのでもう一度言いますが“かつぐ”です。おんぶでもお姫様抱っこでもなく、まるで米俵のように彼女を肩に乗せてかつぐ!これで彼女はキャーキャー喜んでくれる!なるほど、明日すぐ実践したくなりますね!(しません)

ちなみに、主人公は自宅に自分だけのジムを当然のように備えており、体操選手顔負けの身体能力を見せつけたりもしていました。結論としては、自宅用のジムで毎日鍛えて、彼女をかつげばモテモテになれるということです(結局お金がいるけど)。

フィフティ・シェイズ・ダーカー 仮メイン


(C)2016 UNIVERSAL STUDIOS



3:SMプレイの変態度は前作から“リセット”?でもどんどんレベルアップ!


さてさて、やはりこのシリーズで強く推されているのは過激なSMプレイなわけですが……驚きました。本作の初っ端のセックスは、前作のラスト付近のプレイの変態度のレベルが10とすると、レベル1までに戻ったかのようだったのですから。ほとんど普通のセックスじゃないか!

……と思いきや、それは杞憂でした。なぜなら、それは前作で一旦離れた彼らが“もう一度やり直す”ための一時的にレベルダウンしたセックスであり、今回も後半に行くにつれて、どんどん変態度がレベルアップしていったからです。

そのSMプレイの一部を挙げると、“スパンキングプレイ”でまずは慣らして、“銀の球”をあの穴に入れるとか、食事の席でパンティを脱げと命じられるとか、あまつさえエレベーターでは……これは秘密にしておきましょう。見たことも聞いたこともない新たな“道具”も登場し、「そういうものもあるのか!」と驚きました。

映画って勉強になりますね。

この“プレイの変態度を一度リセットした”ことは英断であると思います。いきなり前作以上のインパクトを求めると、“インフレ”しすぎて冷めてしまうでしょうし、徐々に過激さが増すことにより、彼らの関係性が(いびつではあるものの)元に戻っていったことを示しているかのようなのですから。ここまでの極端な変態プレイでなくとも、世のカップルは“セックスにおいて基本に立ち返る”大切さを学べるかもしれませんね。

なお、本作ではセックス時に、人気アーティストによるカッコイイ音楽がかかるというのも大きな魅力になっています。時には曲の盛り上がりと“突き上げ”のタイミングがシンクロしているところもあり、編集にも相当な工夫が凝らされていることがわかるでしょう。現在Youtubeで3億回以上も再生されている、テイラー・スウィフトの主題歌もベストマッチでした。



余談ですが、前作では劇場公開時にR15+指定止まりにするために、セックスシーンに大きなボカシが入れられてしまっていました。今回はR18+指定の引き上げられたおかげもあり、ボカシやモザイクはいっさいないのでご安心を。



(C)2016 UNIVERSAL STUDIOS



4:“新鮮味”がないことが弱点かも?


本作では、主人公の性的倒錯の元凶である女性のビジネスパートナーや、亡霊のような女性のストーカーなどが、主人公とヒロインの障壁となる人物として登場しています。少し残念だったのは、その彼女たちの描き方がやや中途半端で、あまりミステリーやサスペンスとしての面白さを追求してくれなかったことでしょうか。結果的に前作と同様の、主人公とヒロインがくっついたり離れたりする描写が主軸になっていました。

シリーズものの作品において、前作の特徴を踏襲するか、それとも違う味を入れてみるか、というのは製作者にとって悩ましいことではあると思うのですが、個人的には後者のほうが好みです。そのほうがシリーズを通して観ても飽きにくいでしょうし、何より“新鮮味”は映画の魅力として重要と思うのです。

3部作の完結編となる次回作では、思い切った急転換や、2時間という時間で収めなければいけない映画ならではの、大胆な構成が必要になるのかもしれません。期待をしています。

フィフティ・シェイズ・ダーカー サブ3


(C)2016 UNIVERSAL STUDIOS



おまけ:男性のほうが女性に迫られる3つの映画!


さてさて、フィフティ・シェイズシリーズでは、男性のほうがS、女性のほうがMということで、「いいなー、女性は……俺も美人の女性社長に変態的なプレイを強要されたいよ!」と、思った男性も多いのではないでしょうか(※多いと信じています)。

ここでは、そんなドMな男性におすすめしたい、男性のほうが女性に一方的に迫られてしまう感じの、“逆フィフティ・シェイズ”な映画をご紹介します。

1.『ベティ・ブルー 愛と激情の日々』
=19歳の少女に物理的に攻撃されるラブストーリー!





中年の小説家志望の主人公と、19才の少女が同居生活をするというラブストーリーです。何とファーストシーンから思いっきりセックス!このカップルは半ばニートのようなその日暮らしの生活をしているので、暇があればとにかく抱き合っているのでした。

何より特徴的なのは、その少女がことあるごとに物理的な攻撃を主人公に加えること。ネタバレになるので伏せておきますが、序盤にヒロインがやらかした“あること”はもはや乾いた笑いが起きるほどにヒドかった(褒めています)です。エキセントリックな女性に振り回されたい願望がある男性は、是が非でも観るべきでしょう。

また、主人公がとにかくダメ男であるのに、ヒロインが彼の小説の才能に喜び、励ましてくれることも重要です。ムチで叩くだけでなくて、たまにはあまーいアメも与えてくれるから、彼女を嫌いになんてなれない……そんなふうな“彼女からどうしても離れられない”ダメ男の気持ちに寄り添いまくっていて、頭がクラクラするほどに強烈でした。

2:『ショーガール』
=我が道をゆくストリッパーのサクセスストーリー!





最低な映画を決めるラジー賞にて10部門にノミネート、見事7部門で受賞という快挙(?)を成し遂げた作品ですが、個人的には「いやいや!めっちゃ面白いじゃん!」と、その世間の評判に異を唱えたい作品です。何もかも盗まれてどん底の状態にいたストリッパーが、己の出世街道のためなら何だってやってのけ、しょーもない男を手玉に取る姿は愉快痛快、ラストのオチもビシっと決まっていて気持ちがいいです。女同士の友情物語としても、存分に楽しめました。

ちなみに、本作を手掛けたポール・バーホーベン監督は、『ショーガール』におけるラジー賞のトロフィーをノリノリで受け取り、「これからもサイテーな映画を撮り続けるよ!」と宣誓したことでも有名です。他にもポール監督は、セックスの後にアイスピックでめった刺しにする女殺人鬼を描いた『氷の微笑』や、透明人間の下品な欲望を描いた『インビジブル』などを手がけていたおかげか、映画ファンからは尊敬の意を込めて「変態」と呼ばれています。8月25日公開のポール監督最新作『ELLE エル』も楽しみですね。

3:『オーディション』
=もう女性に迫られたくなくなる?最恐のホラー!





これは怖い!本気で怖い!あらすじは“映画のオーディションを利用して再婚相手を探していたシングルファーザーが、とんでもない女と出会ってしまう”というもの。前半が落ち着いた雰囲気のラブストーリーかと思いきや、後半からは阿鼻叫喚の地獄絵図!超がつくほどに“ヤンデレ”化した女性が発する「キリキリキリキリ……」という“嬉しそうな声”は一生のトラウマになるレベル。これを観れば、女性に迫られたいとはまったく思わなくなるでしょう。“夢か現実か”がわからなくなる演出も強烈です。

ちなみに、この『オーディション』を手掛けた三池崇史監督の最新作『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(8月4日公開)において、小松菜奈が演じる予定の女子高生は、原作マンガではかなりの“ヤンデレ”でした。ひょっとしたら、『オーディション』の恐怖をも凌駕しているかも……大期待をしています。

(文:ヒナタカ)

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