映画コラム
これが噂の「ベイビー・ドライバー」だっ!!!
これが噂の「ベイビー・ドライバー」だっ!!!
こいつがハンドルを握ったら、ブリットさえも追いつけない!!
先輩 ただいまー。
後輩 何やってたんですか!? 夏休み映画の座談会やってたのに!!
先輩 うん。まあ色々とな。体のメンテナンスだよ。
後輩 何かと大変ですねえ。おっさんになると。
先輩 まったくだ。それよりも「ベイビー・ドライバー」のタイトルを皆で連呼していたようだけど、あの座談会はあの終わり方でいいのか(笑)?
後輩 いやもー、夢中になっちゃって。「ベイビー・ドライバー」。面白かったなあ。
先輩 実はおれも大好きなんだ。爽快な傑作だよな、これは。
後輩 目下のところ、僕の周囲では絶賛が相次いでいます。そもそもアメリカの映画批評サイト「ロッテントマト」で高く評価されたんですよね。
先輩 ストーリーはといえば、組織に雇われているドライバー「ベイビー」が、強盗を働いた仲間たちを逃がしているが、その彼が恋人のために最後の仕事に挑む。これだけなんだよな。
後輩 シンプル・イズ・ザ・ベスト。最近ではアメコミ映画やシリーズ作品がたくさんの要素をゴテゴテと詰め込みすぎる風潮に、あえて対抗しているかのようですね。
先輩 映画の見せ場なんて、ひとつかふたつで良いんだよ。それで充分。
映画を見たら、パトカーに追われたくなる!!
後輩 この映画を絶賛している人たちを見ると、まさに老若男女。様々な世代の人が、自分の気に入ったシーンやキャラを褒めちぎる。それが皆、違っているあたりが面白いんです。
先輩 音楽のノリの良さを誉める人、そしてエドガー・ライトという新しい才能の出現を歓迎する声、さらには主演のベイビー役アンセル・エルゴートを「息子にしたい!!」と溺愛する妙齢の女性(笑)。確かに、この映画の魅力はたくさんの要素が巧みにリンクしていることだ。
後輩 先輩の場合は?どこを一番評価しているんですか?この映画の。
先輩 おれか。おれはもし英語を流ちょうに話せたら、エドガー・ライト監督に「お前、どんだけウォルター・ヒル監督が好きやねん!?実はおれもだ!!」と、ヒル作品談義をしたい!!
後輩 ああ・・・そこですか。
先輩 特に「ザ・ドライバー」だな。だって「ベイビー」だの「ドク」「バディ」だの、固有名詞ではない呼び方や、カー・クラッシュの迫力は、まさしく「ザ・ドライバー」の影響をストレートに受けているじゃないか。おれには分かる!!
後輩 だからといって、見出しを「ザ・ドライバー」のコピーにするの、やめてくださいよお!
先輩 惹句と言いなさい!! いやあ、今の若い監督が見ても、ウォルター・ヒルの良さが分かるんだなあ。おっさんとしては、うれしい限りだ。
後輩 だから、そういう評価の仕方がいけないんですよ。おっさんやご隠居は「昔スキだった映画に似ているから」という理由で、新作を誉める。それは全然違うじゃないですか。エドガー・ライトはウォルター・ヒルじゃないんですから。「ベイビー・ドライバー」はあくまで新作なんですから、
先輩 まあそう固いこと言うな。確かに最近のアメリカ映画への反動もあるだろうが、これだけシンプルなストーリーを、ここまでノリノリで見せてくれる映画が出現したことは、素直にうれしいし。
10年後、「あの映画を見てないの!?」と言われることを運命づけられた作品。
後輩 これだけ皆で褒めあげていると、またぞろご隠居に「そこまで面白い映画だったら、大ヒット確実じゃな!!」と言われそうで。
先輩 あはは。あの人、色々な事情を分かった上で言ってるんだよ。面白い映画が即ヒットすることは理想ではあるけれど、観客の価値観というものは様々だから、そう簡単に映画館が満席になるわけじゃない。そんなこと、あの爺さんは百も承知だよ。でも、作品が「面白い」って評価されるのは、映画にとって最大のセールスポイントになることじゃないか。
後輩 まあ・・そうですけどね・・。
先輩 そういう風潮がもっと世間的に認識されるようになって欲しいし、そういう風潮を作る努力をせいというのが、あの人の主張だよ。まったくもって、食えないジジイだぜ。
後輩 「ベイビー・ドライバー」はヒットしますか?
先輩 どうだろう。ここまで皆が誉めていることは、映画にとってマイナスにはならないとは思うけど、「作品が面白い」以外に何かインパクトというか、話題性が欲しいところだね。
後輩 同じソニー・ピクチャーズの「スパイダーマン:ホームカミング」と比べて、大きなマーケットには出ないようですが。
先輩 例え小さな展開であっても、借りに君の想定しているようなヒットにならなくても、10年後に語られる映画になることは確実だと思うぞ。「えーっ? あんた、『ベイビー・ドライバー』を見てないの!?」「それじゃあ問題にならない!!」という会話が、映画好きたちの間でかわされるかもしれない。
後輩 エドガー・ライト監督はこの映画で認められましたから、これから大作を任せられる可能性もありますね。
先輩 おうよ。出世株だと思うぞ。おれたちは、その歴史的瞬間を目撃しているのかもしれないぞ。
後輩 さながら「君は『ベイビー・ドライバー』を見たか」ってとこですか?
先輩 なんかそれ、昨年の今頃、同じようなことやったよな(笑)。
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(企画・文:斉藤守彦)
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