この秋、本当に素敵な映画を見たい方へ、幻の名作『星空』をどうぞ



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『小さな恋のメロディ』や『リトル・ロマンス』など、思春期直前直後の男の子と女の子のラブストーリーはいつもどことなく淡くファンタジックなものがありますが、最近アジアにもその方面での傑作映画が作られました。

しかしその映画、版権の関係で日本公開がなかなかなされず、映画ファンの間で幻の名作と称されてきていました。

が、ようやく、ついに、ついに、その映画が日本公開されることになったのです……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.265》

台湾映画『星空』、この秋、映画ファンを自認する人も、そうでない人も必見。

そして結論から申しますと、大いに泣いてください!



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孤独な少女と少年が
星空を見るために……


映画『星空』は2011年に製作された台湾映画です。

原作は台湾の国民的絵本作家ジミー・リャオの同名ベストセラー絵本で、『九月に降る風』(08)『百日告別』(16)のトム・リン監督がメガホンをとり、映画化。

主人公は、13歳の少女シャオメイ。美術商の娘で、常に壮麗な美術品に囲まれながら暮らしています。

しかし両親は不仲で、離婚も秒読み段階。街もどこか冷たく、彼女は幻想の世界に逃げ込み、青い象や火を噴くドラゴンなどを友にしながら日々を過ごしていました。

そんなある日、シャオメイはどことなくワケありの転校生の少年シャオジェと出会います。ふたりは理屈を抜きにした吸引力で引き寄せられていきます。

そして、ついにシャオメイの両親が離婚することになり、彼女はシャオジェを連れて街を出て、優しかった亡き祖父が住んでいた山小屋へ赴きます。

あの、静かで純然とした星空をもう一度見るために……。

この手の作品は演じる子どもたちの存在感が何といってもキモになるわけですが、本作では孤独な少女シャオメイを演じるリン・フィミンの、淡く聡明で清潔感あふれる個性と、『ミラクル七号』でチャウ・シンチーの息子を演じて人気を得たシャオジェ役のシュー・チャオの飾らない雰囲気が見事にマッチ。映画全体に素朴な気品が醸し出されています。

CGを駆使したシャオメイの幻想シーンの数々もファンタスティックな情緒の中に、どこかしらはかなく淡いものが感じられ、彼女の孤独と優しさの双方が描出。

決して大仰にならず慎ましやかな世界観が見る者に好印象をもたらすとともに、もう二度と戻れない“あの頃”へと想いを馳せさせてくれます。



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日本公開が待望されていた
伝説的作品が、ついに!


本作は2010年度の釜山国際映画祭CJエンターテインメント賞をはじめ、12年度の台北映画祭新人賞および視覚効果賞、アジア太平洋映画祭最優秀撮影賞&編集賞、13年度ニューヨーク国際子ども映画祭観客賞など世界中から賞賛されました。

日本でも12年度大阪アジアン映画祭の特別招待作品として上映されて喝采を浴び、一般公開が待望されていましたが、日本における版権の所在が不明とされて、長らく映画ファンの間で幻とされ、神格化されてきた作品です。

それがようやく諸問題がすべてクリアになっての、正式な日本公開が実現することになりました。映画ファンとしては、配給に向けて尽力した関係者に感謝しつつ、それに報いるためにも映画館に足を運ぶのが筋というものでしょう。

まずは東京・新宿K'cinemaにて。ぜひとも興行を成功させて、日本全国での上映が実現できるよう、強く望みたいところです。



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本当に「見て良かった」と思わせてくれる映画を見たいと願っている人にも、

本作の上映を祈り続けていたシネフィルも、

まだ映画に目覚めてないけど最近ちょっと興味が出てきたビギナーにも、

デートで見る映画にお悩みのかたにも、

単純にひまつぶしのかたにも……。

要は老若男女誰でも簡明に接することができて、見終わって涙と共に心が浄化されたような気持ちにさせられる、まるで映画宣伝の常套文句みたいなことを(⁉)ウソ偽りなく訴えることができる……。

いや、あまり力説すると作品のささやかな魅力が壊されてしまいそうなので、このあたりにしておきましょう。

でも、この秋、本当にいい映画を見たい方に、これはお勧めします。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら


(文:増當竜也)

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