映画コラム
傑作『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は日本語吹替版がオススメ!その理由とは?
傑作『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は日本語吹替版がオススメ!その理由とは?
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『コララインとボタンの魔女』や『パラノーマン ブライス・ホローの謎』など、そのクオリティの高さと抜群の面白さで日本の映画ファンにも熱狂的に支持されている、アメリカのストップモーション・アニメ製作会社「スタジオ・ライカ」。
その最新作でありながら、海外での高い評価のみが伝えられるばかりで、中々日本公開が実現せずにいた『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』が、ついに18日より全国公開されることに!
当然すぐにでも見に行きたいところだが、今回は周囲の方々からのアドバイスに従い、敢えて日本語吹替版で鑑賞するために、公開2日目午前中の回で鑑賞に臨んだ本作。果たして、その出来はどうだったのか?
ストーリー
三味線の音色で折り紙に命を与えて意のままに操るという、不思議な力を持つ少年・クボ。その昔、闇の魔力を持つ祖父に狙われた幼いクボを助けようとして、父親は命を落とした。その時片目を奪われたクボは、最果ての地まで逃れ母と暮らしていたが、更なる闇の刺客によって母さえも失くしてしまう。父母の仇を討つ旅に出たクボは、道中出会った面倒見の良いサルと、ノリは軽いが弓の名手のクワガタという仲間を得る。やがて、自身が狙われる理由が、最愛の母がかつて犯した悲しい罪にあることを知るクボ。父と母との関係、そして三味線に隠された秘密とは?(公式サイトより)
予告編
本作をより深く楽しむなら、絶対に日本語吹替版がオススメ!
本作は日本が舞台の人形アニメ。しかも出て来るキャラクターが、ディズニー映画の様に明るく可愛い感じでは無い、とくれば「うーん、劇場で観るのはちょっと・・・」と、鑑賞に消極的になる方の気持ちも良く判る。
正直自分も『コララインとボタンの魔女』は劇場で未見、その後『パラノーマン』をDVDで鑑賞し、「ああ、劇場でこれを見ておけば!」と後悔した経験の持ち主。
そのため、今回は絶対に劇場で見る!と決めて鑑賞に臨んだ本作だったが、いや、これは予想を遙かに越える素晴らしい作品だった!敢えて断言しよう、本作を劇場で見ないことは、確実にあなたの人生の何%かを損することになると!
そう、それ程までに本作は、観る者の心を揺さぶる感動と冒険、そして人々の成長と再会のドラマとなっているのだ。
実は今回、既に鑑賞された方々の話を聞き、字幕版では無く敢えて日本語吹替版で鑑賞した本作。だが、これが見事に大正解!
只でさえスクリーンに盛り込まれた情報量の多い本作だけに、字幕を読む時間と手間から開放されることで、よりスクリーンの隅々まで集中して鑑賞出来るし、日本語吹替声優陣の演技力が、より人形たちの表情や感情表現を高めてくれたからだ。
実際、今回の吹替版で不安材料だったタレント起用の吹き替えも全く問題なく、いや、むしろ本業の声優起用よりも正解なのでは?と思った程。中でも川栄李奈が本格的に挑んだ悪役は、実に迫力満点!元々その演技力には定評のある彼女だが、姉への愛情と裏切られた憎しみを併せ持つ悪役の難しい感情を、実に見事に表現していてハマリ役となっていた。
更に、エンディングに流れる日本版の主題曲も、三味線の吉田兄弟を全面にフィーチャーした物となっているなど、正に見所・聞き所満載の今回の吹替版!残念ながら現在の上映スケジュールでは、吹替版が1日1回しか上映されていない劇場が多いようだが、それでも予定を合わせて鑑賞するだけの価値は充分にあると言える。
お子様連れの方だけで無く、大人の観客にも大いに楽しめるこの吹替版、絶対にオススメです!
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誰もが納得、これこそ必見のエンタメ感動作!
既に多くの方が指摘されている様に、基本設定やストーリーに『スターウォーズ』や『ハリー・ポッター』からの強い影響が見られる本作。
冒頭からセリフ無しで描かれるクボの厳しい生活環境と、それとは真逆な村人たちとの暖かい絆。もっと外の生活に触れてこの環境から飛び出したいクボを縛り付けるのが、実は一番近しい存在である母親という重い現実。
更にクボの出生の秘密と、彼を暗黒面に取り込もうとする悪役の存在など、なるほど確かにこの部分だけ見ても、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』での、ルークがパイロットに憧れながら叔父夫婦と農園に縛られている状況を思わせるが、基本的に父と息子の物語だった『スター・ウォーズ』に対して、母親とその家系の存在を前面に押し出している本作は、むしろ『ハリー・ポッター』の世界に近いかも知れない。
確かに村人の衣装など、微妙に日本と中国が混同されている部分もあるのだが、そんなことを気にさせない程に、本作の高いドラマ性は観客の心を掴んで離さない。
三味線という、三本の弦で音楽を奏でる日本伝統の楽器に、クボたち家族の再会と絆を反映させた見事なラストの展開は、我々日本人が参考にすべき「柔軟な発想」に満ちている。
母親の庇護からの旅立ちと一人前の男になるための試練は、クボにとって過酷で悲しい結末を迎えることになる。ただ、それは今までお互いの記憶さえも奪われて別々に暮らしていた3人が、幸せな記憶を取り戻し再び家族になるための戦いを経て辿り着いた結果なのだ。そして、最後にクボが直面する己の宿命と、因縁のラスボスとの対決。ここで遂に本作のサブタイトル「二本の弦の秘密」の意味が明らかになるのだが、ここは是非とも劇場でご確認頂くことをオススメする。敢えて派手な斬り合いになる展開を避けて、人々の限りない善意と赦しの心が溢れ出すラスト!そう、正にこれこそ我々観客が求める「見たかった理想の結末」ではないか。
前述した通り、後からDVDで観た場合、「これ劇場で観とけば良かった!」と思うのは確実な本作。後々後悔しないためにもまずは是非劇場へ!
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最後に
主人公の外見が日本のマンガ「カムイ外伝」の主人公を思わせるなど、安易に日本を舞台に選んだのでは無く、その奥底に日本文化への深い理解と、確かなリスペクトを感じさせる本作。
実はそれ意外にも、クボの髪型と片目という設定やその生い立ちには、「ゲゲゲの鬼太郎」からの影響を強く感じさせる。特に映画の後半に登場する目玉だけの怪物は、完全に「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する西洋妖怪「バックベアード」そのものなので、ここは要チェック!
本作を初めとするスタジオ・ライカの一連の作品群。一度でもその作品に触れた経験のある方なら、そのクオリティの高さと面白さは良くご存じのはず。しかし、「レゴ物映画」や「クレイ・アニメ」と並んで、こうした「ストップモーション・アニメ」作品に対して、日本では未だに幼児向けのイメージが根強く残っているのも事実。
(実際スタジオ・ライカが、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』の前に製作した3作目の長編映画『The Boxtrolls』は、残念ながら日本未公開のままとなっている。)
まずはこの『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』が一人でも多くの観客の目に触れることで、更に多くの方々がその作品の魅力に気付いてくれることを願って止まない。
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(文:滝口アキラ)
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