このままじゃ純粋な気持ちでAV観れなくなるよって思った作品



(C)「名前のない女たち うそつき女」製作委員会


■映画の濡れ場大好き芸人の濡れ話

中学生の頃、土曜の深夜のマイナーなチャンネルでAV女優が出演するHな番組があった。

エロい気持ちとエロいシーン来い!という気持ちのみで番組を観ているとAV女優が言った。

「歌手になりたくて…だからまずAVで世に出てきたんです」

まじか?

下半身もぞもぞしようとしながら中学生の僕は驚いた。

どういう思考回路で歌手になりたくて、一旦AV女優経由になるの?

しかし彼女は僕から見ても信じられないくらい真剣な目をしていたし、その覚悟が見えた。

その時にふと「AV女優というのは自分が思ってるより、深く悲しいものなのかな?」そう思った印象的な出来事。

2018年2月3日公開の『名前のない女たち うそつき女』を観て思い出した。

『名前のない女たち うそつき女』




(C)「名前のない女たち うそつき女」製作委員会


数々のピンク映画を撮ってきたサトウトシキ監督が吹越満を主演に、中村淳彦のノンフィクション『名前のない女たち 貧困AV嬢の独白』を映画化した今作。AV業界を舞台に、ルポライターの主人公・志村と、企画AV女優と呼ばれる名前がクレジットされないキャストを取り巻く人間模様を描いている。 AV女優役の城アンティア、そして妹役の円田はるかが大胆な濡れ場をみせている。

『名前のない女たち うそつき女』のあらすじ


ルポライターの志村篤(吹越満)は、主にAV女優を専門に取材をしては本にしていた。

AV女優を「人前で裸になってセックス売ってるだけの社会の底辺」と内心バカにしつつも、彼女たちの前では「尊敬している」と言ってみたりしていた。



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自分が心底見下している対象であるはずのAV女優たちに、なぜ彼は執着し、追い続け、そして取材し続けるのか。彼はある種の矛盾を抱えていた。

彼をそこまで惹きつけて止まないAV女優とは。

そんな中、企画AV女優である前田葉菜子(城アンティア)と取材を通して出会う。いつものパターンだと思った。惨めなくせに、そこを直視することなく、「充実している」「幸せ」「AV女優は夢だった」等と言っては明るく振る舞い、空虚な嘘で作り固められた今までのAV女優と同じだと思っていた。しかし、葉菜子は何かが違っていた。



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一方で、葉菜子の妹の前田明日香(円田はるか)は、高校を中退し、若さも時間も持て余していた。実家に全く帰ってこない葉菜子に会いに、田舎から親に内緒で出てきてしまう。そんな時、ワケありのホストとして働き始めていたツバサ(小南光司)と出会う。

それぞれが、それぞれに、切ない人生を日々生きていて、心にある闇や、葛藤、矛盾、言いようのない何かを抱えて、それでも生きて……

濡れ場の究極系の中で戦うAV女優の苦悩


「今充実してるんだぁ感謝してるんだぁ」と汚い部屋で取材に答えるAV女優がホラー映画より怖い。

理想と現実と仕事としての「誇り」の間で揺れ動く女性たち。

「仕事」として誇りを持つ系の女優もいれば、納得しない形でいる女優もいるし、女優の数だけ存在と活動理由があるのだと思う。

僕が一時期Hな番組で毎週色んなAV女優と話してきたけど、いたって普通のような女の子もいれば、明らか職業系もいるし、ぶっちゃけ精神的に激烈不安警報放つ女の子もいる。

どんな恋愛してるのかな…やっぱりヒモいるのかな…

そんな状況が浮き彫りになる本作。

城アンティアさんはそんな中でも「どう折り合いつけてAV女優なってんのよ?」系の女優を熱演。



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決して豊満ではないボディで果敢に濡れ場を演じた。

AV女優としての職業濡れ場と、AV女優のプライベート濡れ場を演じ分けるのは至難の技だったと思う。

その濡れ場はリアリティなのか演出なのか、とてつもなくぎこちなく観てる側を不安にさせる。

こんな不安になる濡れ場もそうそうない。

それがより切なくて、心がぎゅーってなって、このままじゃ純粋にAVで抜けなくなるよ!!って心配になってしまった…。

それくらい真に迫った作品を、皆様是非。

(文:南川聡史)

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