映画コラム
『シェイプ・オブ・ウォーター』が放つ 3つの異色な魅力
『シェイプ・オブ・ウォーター』が放つ 3つの異色な魅力
(C)2017 Twentieth Century Fox
2018年3月1日公開の『シェイプ・オブ・ウォーター』。すでに第90回アカデミー賞最多13部門ノミネート作品として話題となっています。観ていただければわかるのですが、ストーリーも映像もとにかくクセが強い!そんな異色の作品がどうして観る人の心を掴んでいるのか、ネタバレしないように紐解いていきましょう。
カテゴリーは「キモ・ファンタジー」?
本作、メガホンを取ったのはギレルモ・デル・トロというメキシコ出身の監督さんです。『シェイプ・オブ・ウォーター』は彼の過去作品の中では『パンズ・ラビリンス』というファンタジー映画と系統が似ています。ファンタジーと言っても、ディズニーとかハリー・ポッターとは毛質がやや違うので、私はどちらかというと「キモ・ファンタジー」と呼びたい部類です。キモ・ファンタジーなラブストーリーということであれば、異色な作品であるということは、なんとなく感じていただけるかと思います。
(C)2017 Twentieth Century Fox
異色のキャラクターとストーリー展開
さてこの作品、どうしてそんなにクセがあって独特の世界観を創り出しているかというと、まずは登場人物です。舞台は1962年、冷戦の真っ只中。政府の秘密研究所で清掃員として働いている主人公のイライザは、どこにでもいそうな地味な女性。彼女は赤ちゃんの頃に声を失っているため、耳は聞こえるのですが手話で会話をします。そんな彼女と心を通わせる相手は…その研究所いる不思議な「生物」。アマゾンで神と崇められていたところを捕獲され、ソビエトとの冷戦に役立つ可能性があるということで研究所に連れてこられたわけです。そんなイライザと不思議な「彼」の、つまりは種族を超えたラブストーリーが『シェイプ・オブ・ウォーター』なのです。シェイプ・オブ・ウォーター=水の形という題名は、水の形なんてない、見た目なんて意味のないものということ表しているのかもしれません。
(C)2017 Twentieth Century Fox
色づき始めるキャラクターの個性
その彼ですが、最初は「ひぃ〜」と声を上げそうになったくらいエグめの容姿でに登場します。しかし彼を見たイライザの目は輝きます。同じルーティンで変化のない地味なイライザの日々が次第に色づき始めます。清掃の仕事の合間に彼に会いに行くようになるのです。彼がイライザに心を開き始めると不思議なことに、彼がだんだんイケメンでセクシーに見えてきます。そしてイライザは言葉は発せずとも、感情豊かになっていくのがわかります。恋は女性を輝かせるとはまさにこのこと。
主役のイライザは声が出せないですし、その「彼」も人間ではないのでもちろん話すことができません。この二人は言葉で語りあう必要がなく、心の繋がりを最初から持てたことですぐに信頼しあい、絆が生まれ、恋に落ちます。
しかし恋愛に障害はつきもの。ここからストーリーが大きく動き出します。二人の愛はどこへ向かって行くのかはぜひ本作をご覧いただきたいと思います。
(C)2017 Twentieth Century Fox
注目してほしい青でも緑でもない異色「ティール」色
ストーリーもキャラクターも異色なので、そちらに夢中になってしまうのですが一つ気にして見ていただきたいポイントがあります。この映画に出てくるものが最初から最後までずっとすべてが緑とか青っぽい色なんです。最後のエンドロールの文字の色まで。本作中に青とも緑ともつかない色「ティール」についてにくだりが出てくるのですが、実はその異色なティールがこの映画の隠れテーマなのかもしれません。イライザにとって大事な日常もの、バスタブ、服、靴、ヘアバンド、全部ティール色なのです。そしてあの彼も。ティール一色の世界が続くのですが、イライザが彼に恋し始めるとポツポツと「赤」が差し始めます。どこが赤色に変わって行くかも気にしてみるとおもしろい発見があるかもしれません。
(C)2017 Twentieth Century Fox
最後に
本作は美しい異色のラブストーリーですが、今とは違う時代背景ながら現代にも問題を投げかけるような、自分とは形や容姿が違うものに対する恐れから生まれる差別をしっかりと描いています。そんな社会的な問題も心に留めながら、種族を超えた純粋で美しいティール色のラブストーリーにホロリと涙してください。
(文:岩田 リョウコ)
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