映画コラム

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2018年04月10日

『トレイン・ミッション』は必見!60歳のオヤジが超人と化す瞬間を見よ!

『トレイン・ミッション』は必見!60歳のオヤジが超人と化す瞬間を見よ!



(C)STUDIOCANAL S.A.S. 



先日公開された政治サスペンス映画『ザ・シークレットマン』では、本来の演技派俳優の側面を見せてくれた名優リーアム・ニーソン。続いて3月30日より全国公開中の『トレイン・ミッション』では、彼のもう一つの顔である「セガールばりのアクション俳優」としても大活躍!そこで今回は、その『トレイン・ミッション』を4月1日の最終回で鑑賞して来た。予告編を見る限りでは、列車内での犯人探しサスペンスに留まらず、列車の爆破・脱線シーンもあるようだが、果たしてその出来はどうだったのか?

ストーリー


10年間勤めてきた保険会社を、60歳で突如リストラされた会社員のマイケル(リーアム・ニーソン)。いつもの通勤電車で帰路につき、常連客に挨拶しながらも、頭の中は住宅ローンと息子の学費のことでいっぱいだ。そんな彼の前に見知らぬ女が座り、「乗客の中から、ある重要な荷物を持った人物を捜して欲しい」と持ちかける。高額な報酬に抗えず、元警官の経験を生かし捜し始めるが、駅の数だけ仕掛けられた罠に深まる謎、さらには、妻と息子が人質に取られたことを知る。やがて対象の人物が、国家をも揺るがす重大事件の目撃者であることを突き止め、ようやく6人にまで絞り込んだ時、巧妙に仕組まれていた恐るべき陰謀が明かされる。(公式サイトより)


予告編


進化し続けるジャウマ・コレット=セラ監督に注目!


『アンノウン』、『フライトゲーム』、そして『ラン・オールナイト』と、一作毎にそのクオリティを確実に上げて来ている、ジャウマ・コレット=セラ監督とリーアム・ニーソンの最強タッグ!その待望の新作だけに、今回もかなりの期待を持って鑑賞に臨んだ本作。

思えば前作の『ラン・オールナイト』も評価が高かったが、過去にはその脚本の出来や悪役の設定への辛口評価が寄せられたこともあった。特に今回の設定は、あの『フライトゲーム』と良く似ているため、ひょっとしてまた偶然に頼った展開になるのでは?そんな不安がよぎった映画ファンも多かったのではないだろうか?

しかしご心配なく、もはやこの最強タッグにハズレは無かった!

確かにネットでも細部に関する疑問や否定的な意見は見受けられるが、本作では早めに犯人の目的を観客に明らかにしておいて、そこからは主人公が時間内に目的の人物を発見できるか?に絞って話が展開するなど、確実に過去作の問題点を克服して来ているのが良く分かるのだ。

特に、都心部で自動改札が普及している日本では成立しない、アメリカの鉄道のあるシステムを重要なトリックに使うなど、『フライトゲーム』の様に主人公の判断と推理力、そして偶然に全てがかかっている設定とは違い、観客の目にも分かる形で容疑者が絞られる点は実に分かりやすい。さすが主演のリーアム・ニーソンが、「スティーヴン・スピルバーグを継ぐ存在」と絶賛する監督だけに、今回も突然事件に巻き込まれた男が、自身の知力と体力を頼りに真相に迫って行くという、お得意の展開で充分ハラハラさせてくれるので、ここは是非安心して劇場に足を運んでで頂ければと思う。



(C)STUDIOCANAL S.A.S. 



実はキャスティング自体にも仕掛けが!


リーアム・ニーソンが主役の段階で既にある程度の展開は予想出来るのだが、今回は容疑者を絞り込む手がかりや、主人公が最後に容疑者を特定するために取る作戦など、練り込まれた脚本と様々なトリックや仕掛けが満載で実に面白い!

中でも見事だったのが、出演俳優のキャスティング自体が実は壮大な仕掛けになっていたことだった。

例えば、大ヒットホラー映画『死霊館』で悪霊と戦うウォーレン夫妻を演じた、ヴェラ・ファーミガとパトリック・ウィルソンや、アラフォー世代の映画ファンには映画『オーメン最後の闘争』で、成長した悪魔の子ダミアンを演じたことでお馴染みの、サム・ニールなどの豪華な出演陣。実は彼らの過去の出演作品から観客が潜在的に抱いている役者のイメージを逆手に取っている点も、今回の成功の大きな要因と言える。

この様に、キャスティングを見た段階で「あ、こいつが犯人!」と分かってしまう様な安っぽいアクション映画とは、確実に一味違う本作。これからご覧になる方は、どうか出演する俳優の役柄にも注意してご鑑賞頂ければと思う。



(C)STUDIOCANAL S.A.S. 



最後に


ラストで非常に印象的だったのが、互いに通勤客として顔見知りなだけでお互いのことは良く知らない人々が、ある人物に対して取った勇気ある行動だった。

映画の冒頭からお互いに興味が無く、一種ギスギスして険悪な雰囲気さえある人々が、次第にお互いの情報を交換して関係を深めていく中、果たして他の人々の安全のために自ら名乗り出た人物を目の前にして、どう行動するのか?

極限状態でもなお人間は、他人のために自身の危険を省みずに行動出来るのか?国や時代を超えて共通の感動をもたらすこのシーン。実はこの部分こそが、本作を単純なアクション映画には終わらない作品として成立させている。

そう、実は本作が伝えようとするテーマとは、SNS全盛の現代における人と人の繋がりなのだ。

二転三転するストーリーと、最後の最後まで観客を飽きさせない練りこんだ脚本。そして全身ボロボロに傷つきながらも、家族のために超人的な活躍を見せる60歳の主人公の姿!「どうせまた、いつものリーアム・ニーソン映画でしょ」と思って見に行った観客も満足させることは保証済みの本作。すぐにこの名コンビの次回作が見たくなるのは確実なので、全力でオススメします!

(文:滝口アキラ)

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