映画コラム

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2022年04月04日

<工藤遥のダークサイド>『ツーアウトフルベース』で振り返る魅力

<工藤遥のダークサイド>『ツーアウトフルベース』で振り返る魅力



2022年3月25日に公開された映画『ツーアウトフルベース』。主役の2人の高校時代のマネージャーで、物語の中で再会する早紀は、予告で想像していた以上に出番が多く、インパクトのある役だった。

本役を演じる工藤遥の新境地とも言われているが、実は彼女はダークな役が魅力的な俳優である。本記事では、彼女が演じたダークな役をいくつか挙げ、その魅力をお伝えしたい。

※本記事は紹介する作品について、ネタバレを含みます。未鑑賞の方はご注意ください。

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『ツーアウトフルベース』あらすじ



7人組男性ユニット「7ORDER」の阿部顕嵐と、映画『ソロモンの偽証』の板垣瑞生が主演を務めた本作品。

プロ入りが期待されるほどの高校球児だったイチ(阿部顕嵐)とハチ(板垣瑞生)は、甲子園出場が決まるも部員の不祥事によりその夢が途絶えでしまった。その後堕落を極め、10年後の今は薬物にハマりしょうもない毎日を送っている。ある日、不良グループのリーダーから高級アメ車を借り、とんでもない事態に発展してしまう。

工藤遥の演じる早紀とは



早紀はイチとハチの高校時代、野球部のマネージャーを務めていた。回想シーンでは、いかにも真面目そうな様子で留学もしていたという。だが物語で再会した彼女はしょっぱなからラリっている(おそらく薬をやっている)し、再会した建物の外にあった車はヤクザから盗んだ、それどころかすでに何度か窃盗で前科があるという。

言葉を選ばずに言うと、どんどん悪いほうの選択をして堕ちに堕ちてしまった人たちだ。最悪すぎて、序盤は観ていてしんどくなるほど。

そんな彼らは一発逆転できるか? できないか? というストーリーである。



なかなかとんでもない女に成長した早紀。予告でも公式HPのカットでもボコボコになっているシーンがあり、鑑賞前は何事かと不安だった。ヤクザにつかまってしまったのだった。ここでのヤクザのオニヘイ(渋川清彦)とのやり取りにしびれたし、彼女の本領発揮だったと思う。



ヤクも盗みもするけど人にすがらないすげえ女だった。ユーモラスなシーンも多かったオニヘイが持ち掛けた駆け引き、とあることをした早紀の悪い顔、詳細はぜひ映画を観て確認してほしい。

絶体絶命のピンチ、3人は乗り越えられるのかーー?

「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」ファルス

前列左端のショートカットが工藤演じるファルス
工藤遥のダークな役は何物にも代えがたい魅力がある。まず、彼女の代表作のひとつと言っても過言ではないのが、14歳のときにモーニング娘。’14のメンバーとして参加した舞台「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」だ。

永遠に咲きつづける花はなく、美しく咲くもいずれは枯れる
───────── 千年の花園に閉じ込められた少女たちが織りなす美しき愛憎劇。
モーニング娘。’14 選抜メンバー × スマイレージが儚く可憐なヴァンパイアに挑む、
ゴシック・ミュージカル!

ファルスの役柄について言及しようとするとどうしても物語のネタバレになってしまうので、一部言いつつすべては言わないようにお伝えすると……序盤は若干とぼけた隣の男子寮の男の子、という感じでギャグシーンも多いが、途中で驚くべき秘密が明らかになる、物語の重要なカギを握る人物だ。

途中までの印象と180度変わってしまって、観客全員が裏切られた瞬間だった。でもそれは決して悪い意味ではなく、いい意味で驚かされた。ストーリーは悲劇に向かうかもしれないが、物語としては面白い。

その後の狂っているとしか思えない表情・笑い方・セリフの言い方の数々が、観る人を惹きつけた。何を隠そう、筆者はこの舞台を観て工藤遥が推しになってしまった1人だ。

イッちゃってるとしか思えない目とセリフまわしは一度観たら忘れられないし、クセになる。末満健一さんの作る世界が素晴らしいし、当時実際に思春期だった彼女たちだから演じられた作品でもあるし、14歳の工藤遥だから、モーニング娘。に入って日々葛藤していた彼女だったから演じられた役かもしれない。

リリウムは2022年4月現在U-NEXT
で観られるので、気になった方にはぜひぜひぜひ観ていただきたい。この作品が含まれるTRUMPシリーズは、ストーリーも世界観も魅力的で、一作観たら他の作品も観たくなる沼だ。

またリリウムは、来年2023年にオールキャストオーディションのうえ再演予定である。元が好きすぎるので再演については怖い気もするが、どうなるのかとても楽しみだ。

「ファラオの墓」スネフェル

女優を目指しモーニング娘。からの卒業を決めた彼女が、モーニング娘。として、そして座長として最後に参加した舞台が「ファラオの墓」だ。

今から四千年ほど前、エジプトは戦乱の時代であった。
小国エステーリアは強大な隣国ウルジナの国王・スネフェルによって滅ぼされてしまう。

エステーリアの王子・サリオキスは「ファラオ(王)の墓」を作る奴隷となって身を隠し、
サリオキスの妹・王女ナイルキアは敵国ウルジナの神官の家で侍女となっていた。

そして、サリオキスはウルジナ城でアンケスエン妃と出合う。
二人は初対面で惹かれ合うが、彼女は宿敵スネフェルの婚約者だった。
一方スネフェルもナイルキアに出合い、互いの素性も知らぬまま恋に落ちてしまう。

やがてサリオキスはウルジナに迫害された多くの部族を結集し伝説の戦士「砂漠の鷹」となって、
スネフェルの城にむかって進撃を開始する。

運命にもてあそばれるサリオキスとアンケスエン、そしてスネフェルとナイルキア。
ふたつの恋は、戦乱の嵐に飲み込まれようとしていた。

工藤が演じたのは回替わりの一人二役、どちらも重要な男役だった。一人は主人公である王子・サリオキス。もう一人はサリオキスの王国を滅ぼした隣国の国王・スネフェル。明るく優しいサリオキスと、冷血で執念深いスネフェル。真逆の二人を演じきった。

この記事でおすすめしたいのは、もちろんスネフェルのほうだ。
冷血な王といえど、その孤独な一面や優しい一面も垣間見えるのだが、周りの人間の画策もあり起こったある出来事を機に、スネフェルはとんでもない行動を起こし、サリオキスとの最終決戦に向かう。

「工藤遥さんの狂った男役、最高だなたまらんな」と思った覚えがある。

劇中の歌で「さあ心ゆくまで 戦おうぞ」という歌詞のなかで、「さあ」の「あ」の歌い方が狂気がにじみ出てて最高なのでぜひ観ていただきたい。

同じスネフェルを演じた石田亜佑美と、それぞれ魅力が違ってどちらもよかった。石田は冷静で大人なスネフェル、工藤は狂った少年っぽさの残るスネフェル。

もし観る際は、ぜひ両方のバージョンで違いを楽しんでいただきたい。

工藤遥のダークな役をもっと観たい


(C)2020「のぼる小寺さん」製作委員会 (C)珈琲/講談社

普通の女の子の役はもちろん、初の単独主演映画『のぼる小寺さん』で演じた小寺さんの役も素晴らしく、これは彼女だから演じられた役かもしれないと感じた。

先日配信されたニッポン放送 オールナイトニッポン55周年記念公演「あの夜を覚えてる」では、今どきで一見感じが悪くてやる気なさそうだけど、実はラジオへの情熱があり、要領よく仕事もこなす相原という役をリアルタイムで演じた。

どんな役でもそれぞれの良さを出せる俳優であることは間違いないが、「思い切りダークサイドに振り切った役がまた観たい、さらに今の彼女だからできる役だったらもっといい」と思ってしまう。

(文:ぐみ)

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(C)2022「ツーアウトフルベース」製作委員会

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