映画コラム

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2018年07月13日

シリーズ最高にして最恐!『ジュラシック・ワールド/炎の王国』「7つ」の魅力!

シリーズ最高にして最恐!『ジュラシック・ワールド/炎の王国』「7つ」の魅力!



© Universal Pictures 


7月13日より『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が公開されています。

前作『ジュラシック・ワールド』は世界歴代の興行収入で第5位を記録するほどの特大ヒットを遂げました。今回も北米にて1億5000万ドルのオープニング成績で堂々の首位デビューを果たし、世界累計の興行収入では早くも10億ドルを超えるというとんでもない記録を打ち立てています。日本でもさらに多くの観客を集めることは間違いないでしょう。

そして本編そのものは、1作目の『ジュラシック・パーク』と並んでシリーズ最高傑作と呼べる、特大ヒットも納得の出来栄えであると感じました。大きなネタバレのない範囲で、その魅力を以下に紹介します!

1:ほとんどホラー映画? 
息つく暇もないハラハラドキドキが楽しめる!


本作の何よりの特徴は、ほとんどホラー映画と言ってもいいほどの恐怖描写と、ひと時とも退屈させないサスペンスが“これでもか”と詰め込まれていることにあると言っていいでしょう。シリーズNo.1と断言できるほど“怖い”のです。

ネタバレにならない範囲で言うのであれば、今回は恐竜の巨大さや凶暴性が序盤からしっかりと示され、その恐竜との攻防戦がスピーディに描かれていて、状況がどんどん悪くなりもはや絶望的とも言ってもいいほどの窮地にも追い込まれていくのです。ただ恐怖描写を並び立てるのではなく、段階的にさらにさらに“怖い状況”を作り出している、そのためにはありとあらゆる手段を使ってきている……ある意味ではサービス精神が満点と言える内容でもあるのです。

サスペンスそのものもバラエティに富んでいて、その中には1作目の『ジュラシック・パーク』の“調理場のシーン”を思わせる、“知恵比べ”のような駆け引きのある恐竜との戦いも繰り広げられたりします。全編でまさに “息つく暇もない”ハラハラドキドキが詰め込まれており、難しいことを何も考えなくても誰もが楽しむことができるでしょう。

言うまでもないことですが、その数々の恐竜の造形のディテール、そしてスペクタクルシーンの迫力は世界最高レベル! 恐竜はCGだけでなくアニマトロニクス(ロボットを使って撮影する技術)も併用しており、25年前の『ジュラシック・パーク』と同様の(さらに進化した映像技術での)“恐竜がそこにいるという感動”はもちろん、そのリアリティがあるからこその“恐竜に追われる恐怖”がさらに際立っているのです。



© Universal Pictures 



2:シリーズ随一のダークな作風になっていた!


怖いだけでなく、作風と雰囲気そのものがシリーズ随一の“ダーク”なものになっています。前作『ジュラシック・ワールド』では恐竜のテーマパークが開園するということで序盤にやや明るい雰囲気もありましたが、今回ではそのテーマパークが閉鎖されてしまい、人間の手で蘇った恐竜について「自然の成り行きに任せて死なせるしかない」などといった話し合いが行われるなど、良い意味で暗い気分にさせる話題もあったりもするのです。

それでも中盤の島でのスペクタクルまでの画は明るくも見えるのですが、終盤ではとある“狭く閉ざされた空間”での恐竜との戦いも幕を開けます。その暗い画だけでなく、(詳しくは後述しますが)1作目の『ジュラシック・パーク』に似た “生命倫理”への言及もまた、そのダークな作風を際立たせていました。

なぜここまで怖く、またダークになっているかと言えば、用意された脚本が『ジュラシック・ワールド』から続く新たなトリロジー(3部作)の2作目にふさわしい、次作に続くべく構成された“簡単には解決できない”物語になっていることと、その内容に適任であるとJ・A・バヨナが監督に抜擢されたことにあると言っていいでしょう。


© Universal Pictures 



3:『怪物はささやく』のJ・A・バヨナ監督の作家性が全開! 
ある意味では『帝国の逆襲』だった?


J・A・バヨナという名前は聞きなれないかもしれませんが、孤児院の悲しい出来事を描いた『永遠のこどもたち』、津波という災害に翻弄される家族の物語の『インポッシブル』、悩みを抱えた少年の心情をダークかつファンタジックに描いた『怪物はささやく』という一連の作品で高い評価を得ていることと、一貫した作家性を持つ監督であることを知って欲しいです。

本作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』でも、その作家性が強く表れています。ゴシック調の美術や“暗がり”が映えた画の数々、(詳しくは後述しますが)子役の演技指導の上手さ、何よりもホラー映画のような怖さがありつつも登場人物の哀しみをしっかり描く語り口など、全編でJ・A・バヨナ監督“らしさ”を存分に感じられるのですから。

ハリウッド大作映画のシリーズものでは、同じ監督が続投しない事で、作風がガラリと変わることが良くあります。例えば『エイリアン2』はジェームズ・キャメロン監督らしいアクション面の魅力が全開でしたし、『マイティ・ソー:バトルロイヤル』は『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』というコメディ映画を手がけたタイカ・ワイティティ監督のセンスが存分に発揮された内容になっていました。それらと同様に、本作も監督の作家性が前面に出しており、それが(シリーズ随一のダークな)内容にハマった好例と言えるでしょう。

また、3部作のうちの2作目が最もダークな作風になっているというのは、『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』も思い出させます。1作目で“登場人物の紹介”が終わっているからこそできるスピーディな物語運びと、各キャラクターの魅力をさらに描きつつ、物語の最終幕に向けて「この先いったいどうなるんだ!」という危機感も感じられるなど……『ジュラシック・ワールド/炎の王国』はまさに3部作の2作目でしかできない、刺激的な内容になっているのです。

※J・A・バヨナ監督の『怪物はささやく』は以下の記事も参考にしてみてください。
『怪物はささやく』が、あなたが抱えた“モヤモヤ”に効く理由


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4:恐竜だけでなく溶岩からも追いかけられる! 
リアルな水中のサスペンスにも注目!


今回は前述した通りありとあらゆる恐怖描写とサスペンスが詰め込まれています。新たなアイデアとして、“迫り来る溶岩から逃げるというシチュエーション”と“逃げ場のない水中でのサスペンス”もあることに触れなければならないでしょう。

本作では火山が噴火してしまい、主人公たちは恐竜だけでなく迫り来る溶岩からも逃げなければならなくなります。この“ギミックのあるサスペンス”は、今回は製作総指揮を務めているスティーヴン・スピルバーグ監督らしいものでもありました。

水中のサスペンスでは、“ガラスを銃で撃つ”時の水の抵抗(水圧)までもを表現しきった、リアルな映像に注目です。このシーンは水中タンク施設を使って撮影されており、全てを撮りきるのに5日間もかかっているのだとか。J・A・バヨナ監督の『インポッシブル』で悪夢のような津波のシーンを作り上げた時の経験が生かされていることは間違いない、凄まじい映像を堪能できることでしょう。

ちなみに、主演のクリス・プラットに要求されたスタントの仕事も半端な量ではなく、撮影後に痣だらけになった身体のまま眠ってしまう夜は一度や二度ではなかったのだとか。CGの技術だけでなく、生身の人間が文字通り体を張ったアクションにも注目して欲しいです。



© Universal Pictures 

5:子供のキャラクターも重要になっていた!


『ジュラシック・パーク』から続く一連のシリーズは、大人だけでなく子供のキャラクターも活躍していることが共通しています。今回は2500人のオーディションから選ばれたという、まだ10歳の新人女優のイザベラ・サーモンが、重要な役を担っていました。彼女からは、ただ可愛らしいだけでなく、恐竜はもちろん、運命そのものにも立ち向かうような気丈さを感じられるでしょう。

なお、J・A・バヨナ監督はこれまでも子供が活躍している、むしろ子供が主人公と言っても良い作品を手がけていました。それぞれの作品での子役の演技は大人顔負けの素晴らしさであり、バヨナ監督は『怪物はささやく』においては、あえて台本を渡さないことで子役の“本当の驚き”を引き出したこともありました。監督の子役への演技指導の手腕もまた、折り紙つきと言っていいでしょう。

また、今回はコンピューター技師の少年と、古代生物専門の獣医の少女という、オタクっぽい若い男女が新キャラクターとして登場するというのも嬉しいところ。前作から引き続き登場するオーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)のカップルもそうですが、親しみやすく、応援したくなるキャラ造形がされているというのも本作の長所です。

※新キャラクターについてはこちらの記事もご参考に↓
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』を恐竜以上にかき乱す新キャラクター達を大紹介!


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6:1作目『ジュラシック・パーク』への原点回帰? 
生命倫理に踏み込んだ内容になっていた!


1作目『ジュラシック・パーク』には“生命倫理”に反する行いに対し、批判的な言及がありました。例えば、マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)という人物は、恐竜を蘇らせてテーマパークを建設する、または恐竜を人間の意のままに操ろうとしていることなどに、「生命を軽く見ている。自然界へのレイプだ」、「生命は押さえつけられなどしない。道を探すと言っているだけさ」、「あんたたち科学者はできるかどうかに夢中になりすぎて、すべきかどうかと考えることをやめている」などと、痛烈な物言いをしていたのです。

そのマルコム博士は、2作目の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』以来、20年以上の時を経て再登場します。今回の彼の発言内容はネタバレになるので書けませんが……彼の皮肉屋な性格、実は本質をついている“鋭い視点”がさらに強烈なまでに表れていると言っていいでしょう。

この生命倫理への言及は、1作目『ジュラシック・パーク』では印象的だったものの、以降の作品ではエンターテインメント性を重視したためか、やや説得力に欠ける、または脇に追いやられていたようにも感じていた要素でした。しかし、本作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』は前述した通り恐怖描写やサスペンスが詰め込まれているものの、この生命倫理への言及も忘れておらず、その内容そのものも強い説得力を持っています。“愚かな人類”に対しての痛烈な批判が強調されているという点で、1作目の原点回帰的な作品とも言えるのです。

また、恐竜に対して“感動”と“恐怖”の両方を感じさせるということもまた、原点回帰的と言えるでしょう。ただ恐竜の強大さや恐ろしさを描くだけでなく、“初めて恐竜を見たときの感動”を思い出させるようなシーンとセリフがあったりもするのですから。1作目『ジュラシック・パーク』を観返しておくと、そのことがよりわかりますよ。



7:実は賛否両論になる部分も? 
それも含めて本作の魅力だ!


ここまで本作を絶賛しましたが、映画批評サイトのIMDbでは6.6点、Rotten Tomatoesでは51%と、評価はやや賛否両論となっています。その理由は一概には言えませんが、クライマックスの展開およびラストシーンも大きく関係しているのではないでしょうか。

もちろん具体的な内容はネタバレになるので書けませんが、このラストは(良い意味で)観た人によってかなり意見が分かれるものであると感じました。前述した生命倫理の要素にも絡んでおり、もしかすると「こんなラストにするなんて許せない!」と全否定してしまう人もいるのかもしれません。

しかしながら、ダークな作風および、“次作へのブリッジ”となる3部作の2作目だからでこそ、このラストは意外性がある一方で必然性もあり、また納得もできる展開であると個人的には感じました。

前作『ジュラシック・ワールド』のように今までのシリーズのお約束をなぞっていたり、王道的な内容になっていることももちろん良いのですが、個人的にはこうしてシリーズの新機軸を打ち立て、観客の予想を裏切ってくるような作風は歓迎したいです。その一方で1作目『ジュラシック・パーク』へのオマージュがふんだん、前述したように原点回帰的な内容でもあるため、シリーズのファンの期待を完全に裏切ってしまっている、ということもまずないでしょう。

本作のクライマックスとラスト、そしてダークな作風は賛否両論になることがむしろ必然的なもので、それを含めて作品の魅力になっているとも言えます。一緒に観た人と話し合うと、その奥深さ、作品が訴えていることに気づき、会話に花が咲くかもしれませんよ。

なお、前作『ジュラシック・ワールド』に引き続き、無視できない“ツッコミどころ”があるのも事実。少し具体的に言うと「それは気づくだろ!」と心の中でツッコんだシーンが2ヶ所もありました。ここまでのハラハラドキドキを見せられれば、ごく細かいことですけどね。



© Universal Pictures 



まとめ:難点は“怖すぎる”こと? 
今の子供に恐竜の魅力を知って欲しい!


ここまで書いてきたように、本作『ジュラシック・ワールド/炎の王国』はシリーズ随一に怖く、最初から最後までハラハラドキドキが楽しめて、1作目の原点回帰的な要素もあり、3部作の2作目だからこそのダークな内容でもあり、その作風に合わせて抜擢したJ・A・バヨナ監督の作家性が完全にプラスに働いているなど……シリーズの中では新機軸でありつつも、重要な要素はしっかり受け継いでいるという、エンターテインメント作品としては申し分のない内容です。かつて『ジュラシック・パーク』に興奮していたオトナはもちろん、初めてこのシリーズを観るという方でも存分に楽しむことができるでしょう。(もちろん、シリーズを観ているとさらに楽しめます)

あえて本作の難点をあげれば、“怖すぎる”ことにあるのかもしれません。オトナでも背筋が凍るほどの恐怖描写は、小学生にあがる前くらいの年齢のお子さんだと本気で泣いてしまうかも……お子さんがグズって映画館から出てしまうのではないかと心配するのであれば、『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』か『アーリーマン 〜ダグと仲間のキックオフ!〜』をチョイスしたほうが無難なのかもしれません。

※ 『アーリーマン』の記事はこちら↓
W杯に熱狂した全ての人に『アーリーマン』をオススメ!その3つの理由

しかしながら、家族向けの映画だからと言って怖い描写に一切の手を抜かない作り手の姿勢そのものは、全面的に支持したいです。怖い映画を観るということはそれだけで子供には貴重な体験ですし、現実にもおいて恐怖に打ち勝つための準備もできるでしょうから。何より、オトナがかつて『ジュラシック・パーク』観て感じていたであろう「強くてカッコいいけど、それ以上にめちゃくちゃ怖い!」という恐竜の魅力を、今の子供にもぜひ知って欲しいのです。

これ以上は言うことはありません。この “シリーズ最高にして最恐”の『ジュラシック・ワールド/炎の王国』を、ぜひ映画館でご覧ください!

(文:ヒナタカ)

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