映画コラム

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2018年07月28日

『未来のミライ』が賛否両論になった「10」の理由 

『未来のミライ』が賛否両論になった「10」の理由 



3:まるでホームビデオ? 4歳の男の子のリアルな動きがスゴい!


物語のことはまず置いておいて、アニメーション作品として「これはスゴい!」と賞賛できるポイントが本作には確かに存在しています。その1つが“4歳の男の子の動き”がものすごくリアルで、元々が“絵”だとはとても思えないこと。階段で足を揃えて上り下りをしたり、補助輪なしの自転車で転んだり、そうした動作の一つひとつが「現実でもこうだよなあ」と感心してしまうばかりなのです。

細田守監督は1995年に製作された『ユンカース・カム・ヒア』というアニメ映画が大好きで、その何気ない日常を映しているだけで“(キャラクターが)まるで生きている”ということに感動を覚えていたと語っています。これまでの細田監督作も同様に、アニメで作られた人間の動きが“まるで生きている”と実感できるほどの現実の人間への洞察力、アニメへその動きを落とし込むという確かな描写力がありました。 

※『ユンカース・カム・ヒア』については、こちらの記事でも紹介しています↓
□『サマーウォーズ』の素晴らしさ徹底解説!ポイントは“責任”と“肯定”

『未来のミライ』の劇中では、そんな4歳の男の子のリアルな動き、そして日常をたっぷりと映しているので、まるでホームビデオを見ているような感覚すら覚えます。「アニメなのに、現実の4歳の男の子の動きそのままだ!」ということには、他の作品にはない感動があることでしょう。また、生まれたばかりの赤ちゃんのかわいらしさ、指をちょっと触ったときの“ビクッ”とした動きなども、ものすごくリアルなものになっていますよ。

……しかしながら、この“まるで4歳の男の子のホームビデオ”というのも、間違いなく賛否が分かれるポイントです。主人公のくんちゃんは“イヤイヤ期”の後期で、ワガママを超えて小憎らしさもあり、時には本気で怒られることもしでかし、時には耳障りな泣き声もあげます。子供が好きではないという方、「他人のイヤイヤ期の子供のホームビデオなんか観たくないよ!」と思う人にとっては、そもそも厳しい内容なのかもしれません。



 © スタジオ地図



4:上白石萌歌の声が4歳の男の子に聞こえない?


細田守監督作品では、本業が声優ではない、俳優やタレントを主要登場人物に起用するということがよくあります。今回の『未来のミライ』では、残念ながら“上白石萌歌の声が4歳の男の子の声に聞こえない”という、否定的な声も多くあがっているようです。演技がとても上手いとは言え、気になってしまうと最後まで違和感があるままになってしまうのかもしれませんね。

ちなみに、元々くんちゃん役は6歳から10歳くらいの年齢の男の子をオーディションで選ぼうとしていたのですが、妹のミライちゃん役のために来ていた上白石萌歌にくんちゃんを演じてもらったところ、泣き声を含めて“くんちゃんに出会った”という感覚があったため、細田監督が彼女の起用を決めたのだそうです。確かに、(普段の声に違和感があったとしても)泣き声は4歳の男の子にしか思えないほどに真に迫っていたものがありました。

なお、黒木華や麻生久美子など他キャストは文句のつけようのない上手さ! 特に星野源の気の弱いお父さん、とあるカッコいい青年を演じた福山雅治はハマりすぎで、なんだか悔しくなるほどでした。この2人のファンにとっても必見作と言えるでしょう。

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