映画コラム

REGULAR

2018年07月28日

『未来のミライ』が賛否両論になった「10」の理由 

『未来のミライ』が賛否両論になった「10」の理由 


7:恐怖! “ケモナー”の趣味が唐突に出てきた!


細田守監督は、“ケモナー(人間の特徴を持った動物キャラに愛情を注ぐ人)”であるとよく言われています。『サマーウォーズ』から『バケモノの子』まで“獣人”と呼べるキャラクターが登場しており、そのモフモフっぷりはかなりのフェチズムを感じさせました。

本作『ミライの未来』でも、やっぱりその細田監督のケモナーの趣味が出ており、主人公の4歳の男の子が獣人化するのですが……その過程があまりに唐突で意味不明! 細田監督によると「くんちゃんはまだ“兄”というアイデンティティを確立できておらず、尻尾を奪って犬になることで、兄という役割から解放されようとした」ということらしいのですが、映画本編を観ると脈略なく「4歳の男の子がケモノになったらかわいいじゃんか」とぶっ込んできたようにしか見えません。



この“4歳の男の子が脈略なく獣人化する”というシーンは予告編でも観られるためTwitterなどで散々イジられていたのですが、それはまだ序の口でした。劇中では、さらにくんちゃんがとある変態的なことに目覚めるシーンがあるのですから(まだ4歳なのに)! これは劇中で一番笑いが起こっていたシーンではあるのですが……細田監督自身が自分の趣味を隠さなすぎで、ちょっと怖くもなってきました。



 © スタジオ地図



8:“異世界すぎる東京駅”がヤバい! 
特殊な一軒家はプロの建築家が作り上げていた!


そんなわけで「一体この映画はなんなんだ?」と良くも悪くもクラクラしてしまう要素が満載の『ミライの未来』ですが、終盤に迷い込む世界の異質さは(良い意味で)さらにヤバいことになっていきます。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、あの“異世界すぎる東京駅”だけでも、劇場で観る価値があるでしょう。

この東京駅に登場する、“平面的”で不気味な駅員を作り上げたのは絵本作家の“tupera tupera”。もはやホラー映画のような恐ろしさを覚える“黒い新幹線”も実際の新幹線のデザインをしている川崎重工業のプロが担当していたりもします。

そして、誰もが印象に残るであろう、階段だらけで全体的に“斜め”になっている特殊な一軒家も、建築家の谷尻誠さんが手がけていたりもします(その設計にかけた期間は1年以上)。この斜めの構造は、『時をかける少女』の踏切があった急な坂道、『おおかみのこどもの雨と雪』の雪山を駆け下りるシーンに通ずる“印象的な坂道”を作り上げるという目的もあったようです。

その他、スタイリストの伊賀大介さんも『おおかみこどもの雨と雪』と『バケモノの子』に続き衣装を担当しています。他のアニメ作品とは違う“様々な分野のプロと共にアニメ作品を作り上げる”という気概が、細田守監督作品にはあるのです。映像をパッと見たときの“ルック”に並々ならぬこだわりがあり、大きな魅力になっているのは疑いようもないでしょう。

また、『未来のミライ』の主な舞台は横浜市の磯子区および金沢区の周辺になっています。くんちゃんが自転車に乗る練習をしていた場所も根岸森林公園という実在する公園がモデルで、その背景に見えていた黒い建物は“廃墟になった競馬場”なのだとか。こちらに“聖地巡礼”してみるのも楽しいかもしれませんよ。

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