『イコライザー2』は超正統派の続編!ナメてた相手が実は殺人マシーンでした映画の魅力も語る!




10月5日より映画『イコライザー2』が公開されます。そのタイトル通り、本作は2014年に制作されたアクションスリラー映画『イコライザー』の第2作目。“超正統派の続編”として存分に“パワーアップ”していた本作の魅力がどこにあるのか? 大きなネタバレのない範囲で、たっぷりと紹介します!

1:ナメてた相手が実は殺人マシーンでした映画の魅力はこれだ!


『イコライザー』シリーズの最大の魅力……それが “ナメてた相手が実は殺人マシーンでした映画”(映画ライターのギンティ小林さん命名)であるということを、まずは挙げなければいけないでしょう。このジャンルにどういった作品があり、どれだけ映画ファンを魅了してきたかは後述しますが、とりあえず「ざまぁ!」な快感が得られるということ、その時点で一定以上の面白さがあるとだけはお伝えしておきます。

だって、暴力や権力を行使して「俺TUEEEEE」な感じに調子をこいていたバカどもが、予想もしなかった人物にけちょんけちょんにされるってそれだけで痛快愉快ではないですか(笑顔)。これは日頃でストレスを感じている我々の代弁でもあります。ナメてた相手が実は殺人マシーンでした映画は、スカッと爽やかな気持ちになれることがほぼ保証済み(後述しますが例外となる作品もあります)の素晴らしいジャンルなのです。

ちなみに、前作『イコライザー』の初めの30分間は良い意味で“何も起こらない”展開が続き、それが後述する主人公の性格を描く上で重要なものになっていたのですが、今回はいきなり「ざまぁ!」な気分になれるオープニングから幕を開けます。もうこれは続編として正しい姿勢であり、「こういうのが観たいんだろう?」と前作ファンの希望をいきなり叶えてくれるというサービスそのものですね。

なお、タイトルの「equalizer」の本来の意味は平行、平衡化などですが、ここでは“社会の悪を抹消し、平穏を保つ仕事人”としての意味を持ちます。本シリーズが“アメリカ版『必殺仕事人』”と呼ばれていることも大納得です。



2:前作に続き主人公がとっても良い人!
今回は擬似的な親子関係に?


『イコライザー』シリーズを語るにおいては、主人公のロバート・マッコールというキャラクターの魅力は外せません。病的なまでに神経質ではあるものの、身近な市井の人々を気遣ってあげる“良い人”度が半端ではないのですから。今回は、おじいさんの生き別れたきょうだいの話に耳を傾けながら毎日ケアセンターまで送迎するなど、過剰と言っていいほどに親切なタクシードライバーになっていました。

前作では娼婦の少女と友情を育んでいた主人公ですが、今回は黒人の若者と“擬似的な親子関係”になるというのも重要です。その若者の才能を知り、将来を案じてアドバイスをしようとする主人公との関係は、“年の差のある友人”よりもだいぶ親しく見えるのですから。

そんな風に優しい“昼の顔”を持つ彼の逆鱗に触れたら…? 一転して“夜の顔”は容赦なく敵を倒すというギャップがあるものの、それでもやはり同じ人物なんだという優しさ、そして物静かな怒りも感じられます。「普段怒らない人が本当に怒ったら超怖い」とはよく言いますが、 『イコライザー』シリーズはそのことを体験する教材としてもうってつけ。だからでこそ、魅力的かつ親しみやすくもある主人公になっているとも言えるでしょう。



3:デンゼル・ワシントンが初めて続編に出演!
その役者としての魅力とは?


『イコライザー』シリーズのさらなる魅力は、やはり主演がデンゼル・ワシントンということでしょう。実は彼がシリーズものに出演するのは今回が初めてで、それは本人の弁によると「単に続編に出演する機会がなかっただけだよ」「だって『マルコムX』や『フェンス』の続編は作れないだろ?」ということなのだそう。それは確かに納得できますね。

重要なのは、主人公のロバート・マッコールというキャラが前述したようにとにかく魅力的であり、彼を再び演じられるのはデンゼル・ワシントンの他は考えられないというまでに定着していることです(原作となるテレビドラマではエドワード・ウッドワードという役者が同じ名前の主人公を演じていていましたが、映画はほぼオリジナルと言って良いほど別物になっているようです)。

屈強な男に見えるものの、ちょっとだけ寂しさや深みをも感じさせるというのは、デンゼル・ワシントンというその人が持つ魅力、そして細やかな表情の変化から感情が読みとれる確かな演技力があってこそでしょう。

ちなみに、デンゼル・ワシントンが『イコライザー』シリーズと似た役を演じた作品に『マイ・ボディガード』があります。こちらは無愛想な男ではありますが、守るべき女の子(ダコタ・ファニング)のためにややスパルタな水泳の指導をするというのも微笑ましいところ。合わせて観ると、さらにデンゼル・ワシントンという役者の魅力を知ることができますよ。



4:アントワーン・フークア監督の作家性とは?


前作から続投となったアントワーン・フークア監督は、主人公のロバート・マッコールというキャラクターについて、「公正な裁きを受けるべき者たちに対して正義を行使するため、この世に降りてくれたらいいのに、と誰もが願っているダークエンジェルなんだ」などと語っています。これは前述したタイトルの「equalizer」をそのまま体現しているキャラクター像ですね。

思えば、アントワーン・フークア監督の“作家性”はこれまでの作品でもほぼ一致しています。それは先ほどの主人公像そのままの「悪人や理不尽なことがはびこる世の中であっても、正義のために何かできることがある」ということでした(『ザ・シューター/極大射程』や『マグニフィセント・セブン』でもその行動原理が物語の主軸になっていました)。

この『イコライザー』シリーズでは、“ナメてた相手が実は殺人マシーンでした映画”というもっともシンプルなジャンルで、もっともわかりやすい形でアントワーン・フークア監督の作家性が表出していると言えるのではないでしょうか。



5:超正統派の続編になった理由はこれだ!
パワーアップしたアクションとサスペンスを見届けて!


続編となる映画には“前作と全く違うテイストにする”や“前作にあった設定やお約束をひっくり返す”など様々なアプローチがあります。この『イコライザー2』はアントワーン・フークア監督が続投したおかげもあり、 “前作と同じテイストでありながらストレートにパワーアップをする”という、続編の作り方として“超正統派”と言える内容になっていると言っていいでしょう。

そのパワーアップが最も顕在化しているのは、終盤の戦いの舞台となる“台風が吹き荒れる街”です。このアクションシーンを撮るために、巨大な送風機を12箇所に設置、壁を乗り越えてくる波を作るための高さ9〜12メートルの巨大なタンクも用意、全部で24台の“大砲”を繋げてカメラの位置によって求められる方向に放水できるようにしたのだとか。しかも台風の中ということなので太陽が映り込んでいるわけにはいかず、撮影は日中に行うしかないため、全てを撮りきるのに1ヶ月もかかったのだそうです。

その撮影の苦労が報われる、大迫力かつ緊迫感のあるアクションとサスペンスは、映画館でこそ堪能して欲しいです。ただ風と雨が吹き荒れるというだけでなく、時にはその状況そのものを利用して、論理的に戦略を立てて敵を“駆逐”していく……そこにも痛快さも禁じ得ないでしょう。戦いの場の天候が凄まじいというのは『七人の侍』も彷彿とさせました。

また、主人公はやたらめっぽう強いため、彼が負けるかもしれないというハラハラはあまりないのですが、“彼の友人が殺されてしまうかもしれない”ということがかなりのサスペンスを生んでいます。ネタバレになるので詳しくは書けないのですが、前述した親子関係を持つ若者が敵に見つかってしまうかもしれない(主人公だけが彼を助けられるかもしれない)というシーンは、この終盤の台風のバトルに負けないほどの緊迫感とおもしろさがありました。

さらに今回は、命を狙う敵がかつての自分と同じ特殊訓練を受けたスペシャリスト、つまりは“同じイコライザー”であるということ、その敵の正体を探るという“謎解き”要素も加えられています。この“+α”があるというのも続編として上手いところですね。

また、前作は上映時間が132分と、この手のジャンル映画としてはやや長めに感じていたのですが、今回は121分とちょっとだけタイトにまとまっています。これも“主人公のキャラ紹介がすでに終わっている”という続編ならではの長所がプラスに働いためでもあるのでしょう。

それでいて、前述した主人公の良い人っぷりはこの2作目でも十分な時間を持って描かれています。前作を観ていなくても楽しめる(主人公のことが大好きになれる)でしょうし、前作を観ていればもっと彼に感情移入できる、というバランスになっているのも見事なものです。


おまけ:おすすめのナメてた相手が殺人マシーンでした映画を紹介!


ここからは、おすすめかつ代表的な、ナメてた相手が殺人マシーンでした映画の8作品(+番外編)をご紹介しましょう。

1.『ランボー』






ナメられる人:シルベスター・スタローン
実はこういう人:ベトナム帰還兵

ご存知『ロッキー』に並ぶシルベスター・スタローンの代表格である本作、精神的に参っている主人公が追撃され逃げ続けるという過程はなんとも悲壮感があり、結末も含め(ナメてた〜映画の中では)良い意味でスカッと爽やかとはならない内容になっていました。

2.『96時間』




ナメられる人:リーアム・ニーソン
実はこういう人:元CIA工作員

主人公は病的なまでに“子離れできていないお父さん”。娘のために選びに選び抜いてカラオケマシーンをプレゼントしたのに……となる序盤から悲壮感たっぷり。その後は誘拐された娘を救うためにあの手この手を尽くします。「お父さんが言っていたことはやっぱり正しかった!」という展開になるので、家族に疎まれがちなお父さんにとって一種の清涼剤にもなることでしょう。リーアム・ニーソンはこの後にも『ラン・オールナイト』というナメてた〜映画にまた出演しています。

3.『アジョシ』




ナメられる人:ウォンビン
実はこういう人:暗殺を主な任務とする情報特殊部隊の元要員

“組織にさらわれた女の子を男が助けにいく”という単純明快なストーリーの韓国映画です。R15+指定でかなりの暴力描写もあり、終盤の17対1のバトルの迫力と凄まじさが半端ではないことになっています。主演のウォンビンがとにかくイケメンなので女性にもおすすめの1本です。

4.『ヒストリー・オブ・バイオレンス』




ナメられる人:ヴィゴ・モーテンセン
実はこういう人: ???(一応ネタバレなので伏せます)

ナメてた〜映画はやはりシンプルなプロットのものが多く、“B級”と揶揄されるものも決して少なくはないですが、大ベテランのデヴィッド・クローネンバーグ監督が格調高く、しかも96分というタイトな上映時間で“A級”に仕上げたのが本作。平凡なダイナーの店員である主人公が実は……から、マスコミに注目されてしまう過程、深い余韻を残すラストシーンまで演出がとにかく素晴らしいの一言でした。

5.『ジョン・ウィック』




ナメられる人:キアヌ・リーブス
実はこういう人:伝説の元殺し屋

愛犬が殺されたうえにクルマが盗まれたので、その仕返しにロシアン・マフィアをぶっ殺しまくるというやっぱりシンプルな内容です(ナメてた〜映画は大体そんな感じです)。独自の魅力はガンアクションとカンフーを組み合わせたという“ガンフー”アクション。もはやブラックコメディの域に達するほど人の命が軽くなっています。なお、シリーズ3作目が2019年5月17日に全米公開予定(日本公開未定)です。

6.『ザ・コンサルタント』




ナメられる人:ベン・アフレック
実はこういう人:命中率100%のスナイパー

主人公が表向きは年収1000万ドルの会計士でありながら、実は高機能自閉症を抱えているということが最大の特徴。主演のベン・アフレックの口下手でシャイなところがとにかくかわいいらしく、最初から最後まで“おじさん萌え”を堪能できるでしょう。主人公の過去を徐々に解明していくという、ちょっと変わった構成にもなっています。

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7.『ドント・ブリーズ』




ナメられる人:スティーヴン・ラング
実はこういう人:超人的聴覚を持つ盲目の元軍人

こちらはナメられる人が敵側になり、主人公たち3人の泥棒と“知恵比べ”で戦うというもの。もっと言えば“盲目の老人との鬼ごっこ”をずっと楽しむ内容になっていました。88分という短い上映時間にあの手この手のアイデアが詰め込まれており、ひと時たりとも退屈はさせませんよ。

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8.『マンディ 地獄のロード・ウォーリアー』




(C)2017 Mandy Films, LTD. All Rights Reserved 


ナメられる人:ニコラス・ケイジ
実はこういう人:???(ネタバレと言えばネタバレなので伏せます)

こちらは11月10日より公開予定の映画です。内容は復讐鬼と化したニコラス・ケイジが狂気の集団を血祭りにあげまくるという、やっぱりシンプルなもの。特筆すべきは音楽と映像表現で、『ボーダーライン』や『メッセージ』の故・ヨハン・ヨハンソンによる風向な音楽が全編に響き渡り、真っ赤な靄がかかった映像が続き、ずっとアレなクスリをキメてる感覚になる(※合法)というとんでもない内容でした。中盤で彼が作る“武器”、そしてまさかの“対決方法”は恐ろしいを通り越して爆笑するレベル。個人的にナメてた〜映画の最高傑作です。

番外編. 『狼の死刑宣告』




ナメられる人:ケヴィン・ベーコン
実はこういう人:投資会社に務める普通のお父さん

以上に挙げた映画は、ナメてた相手が何かしらの格闘術や殺人術を持っており、だからこそ敵が返り討ちになるわけですが、そのナメてた相手が普通のお父さんだったはずなのに、ギャングとの“戦争”に発展してしまう映画もあります。それは『狼の死刑宣告』。「そんなつもりじゃなかったのに」とどんどん悪い状況になっていく様には“復讐は虚しい(割りに合わない)”ということを突きつけられるでしょう。『ソウ』や『ワイルド・スピード SKY MISSION』のジェームズ・ワン監督のアクション演出も冴え渡った、隠れた名作です。

なお、筆者は未見ではありますが、10月19日に日本公開が控える『デス・ウィッシュ』もナメてたブルース・ウィリスが殺人マシーンでした映画っぽいですね。

また、日本公開未定ではありますが、ナメてたジャッキー・チェンが殺人マシーンでしたっぽい映画『The Foreigner』、ナメてたお母さん(ジェニファー・ガーナー)が殺人マシーンでしたっぽい映画『Peppermint』もあるようです(観たい)!

ナメてた〜映画はやはりシンプルであるので、下手をすれば陳腐化したりマンネリズムに陥ってしまいそうなところを、アイデアや語り口、そして主人公を演じる役者の魅力により、しっかりオリジナリティを確立しているというのも素晴らしいところ。これからもこのジャンルの興隆を楽しみにしています!

(文:ヒナタカ)

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