『ファヒム!パリが見た奇跡』レビュー:天才チェス少年が見た異国の風景
(C)POLO-EDDY BRIERE.
いつの世にも天才少年少女はいるものでして、彼ら彼女らの存在を知るにつけ、幼い頃から年を取って久しい現在に至るまで、ずっと羨望のため息をつくばかりではあります。
もっとも、そんな天才君たちがその後もずっと天才でいられるかどうかは、周囲の理解と協力次第というのもあることでしょう。
また、その時代その時代の国のありようや政治形態などにも振り回されてしまう懸念はあります。
本作『ファヒム! パリが見た奇跡』に登場する8歳の天才チェス少年ファヒムも、国のありように幼い人生を翻弄されていきます。
なぜなら……
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街494》
彼はバングラデシュからフランスに脱出してきたからなのでした。
(ちなみに、これは実話の映画化です!)
祖国を脱出してフランスに赴いた
バングラデシュ父子の運命
『ファヒム! パリが見た奇跡』は、政情が揺れ動き続ける2000年代バングラデシュのダッカから始まります。
8歳の少年ファヒム(アサド・アーメッド)はチェスの天才児ですが、親族が反政府組織に属していたことや、彼自身がチェスの大会で優勝したことを妬む輩などによって、一家ごと脅迫を受けるようになっていました。
まもなくして危険から逃れるべく、ファヒムは母親と別れ、父とともに国を脱出し、フランスへ赴きます。
父子は難民センターに身を寄せ、亡命者として政治的保護を求めますが、そのさなか、ファヒムはフランスでも有数のチェスのトップ・コーチ、シルヴァン(ジェラール・ドパルデュー)と出会い、彼の許で教えを乞うことに。
子どもたちに独特の指導を実践するシルヴァンにファヒムははじめ反発しますが、実は厳しい中にも愛情を秘めた熱心な姿勢に気づくにつれ、次第に心を開いていきます。
やがてファヒムはチェスのトーナメントをめざすようになりますが、難民申請を却下されて父子は強制送還の危機に!
危機を回避する方法がひとつだけありました。
それは、ファヒムがチェスのジュニア・フランス王者になることでした……!?
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