星野源、現在の魅力と未来の可能性
ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会
最新アルバム「POP VIRUS」がチャート1位を記録、そのアルバムを引っ提げた5大ドームツアーも成功させ、その模様も収録されたライブBlu-ray&DVD「DOME TOUR “POP VIRUS” at TOKYO DOME」も好セールスを記録中の星野源。
俳優としてもNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」に出演と文字通りトップスターとなった星野源が、6年ぶりにスクリーンに還ってきます。
『箱入り息子の恋』以来の主演作となったのはなんと時代劇!『引っ越し大名!』です。
星野源大ブレイクの3年~一大転機の2016年~
2000年代前半から松尾スズキが主宰し、宮藤官九郎や阿部サダヲを擁する大人計画の舞台に出演するようになります。
その縁もあって宮藤官九郎脚本のドラマや映画に出演するようになります。また劇中でも歌声を披露したりとアーティストとしても本格的に活動していくようになります。
サブカル的な界隈では注目の存在となり大根仁監督と組んだり、NHKのコント番組「LIFE~人生に捧げるコント~」に出演するようになっていきます。
そして、2016年を迎えます。
一大転機となったこの2016年大河ドラマ「真田丸」に徳川秀忠役で出演。さらに社会現象となった「逃げるは恥だが役に立つ」に出演。新垣結衣の相手役・津崎平匡を演じた星野源はアーティストとして“主題歌「恋」も担当、ドラマのラストで披露される“恋ダンス”も大きな話題になりました。その前のシングル「SUN」を発表した2015年から4年連続で紅白歌合戦に出演しています。
俳優として見ても、アーティストと見ても星野源という人を語るとなると“2016年以前・以後”と言うのが大きなポイントとして語られるようになるでしょう。
映画俳優 星野源
星野源のスクリーンデビューは妻夫木聡主演の青春劇『69 sixty nine』。
村上龍の原作小説を後に『フラガール』『悪人』を撮ることになる李相日監督で、脚本は宮藤官九郎が担当しました。その後は熊切和嘉監督『ノン子36歳』や園子温監督『地獄でなぜ悪い』『ラブ&ピース』、宮藤官九郎作品『少年メリケンサック』といった個性派監督作品に出演していき、2013年の『箱入り息子の恋』で初主演します。
その一方でアニメーション作品『聖☆おにいさん』、「真田丸」「逃げ恥」ブレイク後には湯浅政明監督の『夜は短し歩けよ乙女』、細田守監督の『未来のミライ』などに声優として参加しています。
そんななかで初主演映画となったのが2013年の『箱入り息子の恋』。
両親と暮らす恋愛経験ゼロの青年・天雫健太郎を演じました。星野源は本作で多くの映画賞の新人賞を受賞し、一躍注目を浴びるようになりました。これが「逃げ恥」の3年前、今から6年前の作品になります。
星野源6年ぶりの主演映画『引っ越し大名!』
2015年と17年にドラマ「コウノドリ」のシーズン1,2などに出演していた星野源ですが、特に実写での映画となると「逃げ恥」のブレイク後には1本も出ていない状況が続いてきました。そんななかで公開となるのが『引っ越し大名!』。しかも星野源初の時代劇映画でもあります。
ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会
戦に明け暮れていた戦後時代を経て、江戸幕府が開かれ天下泰平の世となり、武士たちの生活も大きく変わり、実に事務的なものに変わっていきます。
星野源演じる片桐春之介も書庫番として一日中・書物蔵に引きこもっている本の虫、あだ名もそのままな“カタツムリ”です。
そんな、春之介が仕える姫路藩主・松平直矩に国替えの沙汰が下るところから映画が始まります。姫路・松平藩は血筋を辿ると徳川家康にもつながる名門ということもあって、全国各地の要所任されることが多く、その分、国替えの数も多く“引っ越し大名”と呼ばれていました。国替えと言えば、藩士やその家族、所有物の一つまで丸々移動させる大掛かりな“引っ越し”で、その手間や費用は莫大なものになります。
そして、難題を押し付け合けあいを経てその“引っ越し”全体の差配をする引っ越し奉行に春之介がなることに…。
監督は『のぼうの城』の犬童一心監督(そのつながりもあってか、劇中の引っ越し唄の振り付けを野村萬斎が担当しています)。
原作・脚本が『超高速!参勤交代』シリーズの土橋章宏ということもあって、平時の武士の等身大の姿を描く新感覚時代劇となっています。
お馴染みの面々のお馴染みのキャラクターのなかで異彩を放つ両サイド
主演の本の虫・片桐春之介を演じる星野源を筆頭に、官僚的な家老役の松重豊や西村まさ彦、男色の気もある色気あるナイスミドルな藩主・松平直矩役の及川光博、勘定方として主人公を助ける中西堅物役の濱田岳など、メインキャストがこれまでに築いてきたパブリックイメージ通りのキャラクターを演じているので、見ていて抜群の安心感があります。
その一方で生まれてきた時代を間違えたような武辺者・鷹村源右衛門役の高橋一生と今で言うシングルマザーの役・於蘭を演じる高畑充希が今までにない顔を見せてくれて嬉しいサプライズとなっています。
ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会
高橋一生演じる鷹村源右衛門はその剣の腕と有り余る体力を使うところがなくて困っているというキャラクターですが、映画のクライマックスでは藩の宝・“御手杵の槍”という全長3.8mもの長槍を持っての大暴れします。このシーン、状況としてはなかなかのピンチなのですが、源右衛門は嬉々として大立ち回りを演じます。
ⓒ2019「引っ越し大名!」製作委員会
元々は星野源演じる春之介より年上のキャラクターだった於蘭を演じる高畑充希。星野源とはNHKの生放送バラエティ番組「おげんさんといっしょ」でも息の合ったコンビをネーションも見せていた高畑充希(放送では本作に触れたことも)。今回はとにかく於蘭が春之介を叱咤激励しながら成長させていきます。二人はその後、恋仲になっていくのですが、思いのほかグイグイ来る於蘭の姿がたくましいです。
俳優・星野源の今後 バンドマン出のコメディアンへ?
直近の出演作ですでにアナウンスがされているのが2020年公開予定の『罪の声』。昭和の未解決事件いわゆる“グリコ・森永事件”の真相について新たな解釈を加えた塩田武士のベストセラー小説の映画化作品です。
この映画の星野源は自分の幼い頃の意外な事実が社会を騒然とさせた未解決事件と繋がっていたことから、自分の過去と未解決事件の真相に迫っていくキャラクターです。
W主演で小栗旬が出演することはすでに発表されています。そして監督の土井裕泰と脚本の野木亜紀子はあの「逃げ恥」のコンビです。この監督・脚本の組み合わせで初めての本格サスペンスとなるので、果たしてどのような作品となってくるのか注目です。
星野源の出演作品をふりかえって見ても、今までにないシリアスなトーンの作品なるかと思います。映像での俳優業やアーティスト活動が中心になってきていますが、しばらく出ていない舞台での星野源も見たいところです。
売れっ子ゆえに様々なところからお声掛けがかかるようですが、本人曰くドリフターズやクレイジーキャッツのようなバンド出のコメディアンの系譜を目指しているといいます。この人たちはもちろん面白おかしい姿を多く見せてきましたが、一方で俳優としてのいかりや長介や植木等、谷啓の渋さ・巧さは改めて言うまでもないでしょう。
また、『引っ越し大名!』の犬童一心監督は星野源をバンドマン出の俳優の元祖とも言っていいフランキー堺を想起させると言っています。
まだまだ無限の可能性を感じさせる、星野源。次はどんな作品でどんな顔を見せてくれるのか期待が膨らむばかりです。
(文:村松健太郎)
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