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2019-12-23

コラム

『ラスト・クリスマス』明日のイブにぜひ観て欲しい「3つ」の見どころ!



© Universal Pictures



クリスマスシーズンの定番曲と言える、ワム!の名曲を原案に作られた、クリスマスムードいっぱいのラブストーリー映画『ラスト・クリスマス』が、12月6日から日本でも劇場公開された。

後述するように、甘いラブコメ映画と思って観に行ったら意外に深い内容に驚かされた! との感想がネット上に多数見られた本作。

ポスターや予告編の印象からは、この時期に観るには最適なラブストーリーに思えるのだが、果たしてその内容と出来は、評判通りのものだったのか?

ストーリー


ロンドンのクリスマスショップで働くケイト(エミリア・クラーク)は、小妖精=エルフの格好をして、きらびやかな店内にいても仕事に身が入らず、生活も乱れがち。そんなある日、不思議な好青年トム(ヘンリー・ゴールディング)が突然現れ、彼女の抱えるいくつもの問題を見抜いて、答えに導いてくれる。ケイトは彼にときめくけれど、二人の距離は一向に縮まらない。トムを捜し求めつつ自分の心の声に耳を傾けたケイトは、やがて隠された彼の真実を知ることになる……。


予告編


見どころ1:全編に流れる名曲の数々!



映画のタイトルにも使われている名曲「ラスト・クリスマス」以外にも、「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ!」や「恋のかけひき」、「フェイス」など、ジョージ・マイケルやワム!の数々のヒット曲が全編に流れる本作。

その反面、ストーリー上あまりにぴったりな曲が流れる場面もあるので、そこは若干ストレートすぎる使い方では? との意見がネットで散見できたのも事実。

ただ、そもそも「ラスト・クリスマス」の曲の世界観を元に脚本が書かれただけに、この曲の歌い出しの歌詞が、実は終盤の展開への重要な伏線となっているなど、80年代洋楽ファンには嬉しい展開も、本作の大きな魅力となっているのだ。



© Universal Pictures



歌手を目指してオーディションを受け続けるものの、どうしても歌うことに対して真剣に向き合えずにいたヒロインのケイトが、数々の挫折や紆余曲折を経て、初めて他人の役に立とうと決意して歌うシーンの素晴らしさが、定番のクリスマスソングと共に観客を暖かく包む本作。

特に、他者の幸せのために歌う彼女の行動が最終的に多くの人々を一つに繋ぎ、その中で歌われる「ラスト・クリスマス」の感動と多幸感は必見!

リアルタイムでジョージ・マイケルやワム!を知らない若い世代にも、彼らの楽曲の魅力が味わえる作品となっているので、ぜひ劇場でその素晴らしさを体験して頂ければと思う。

見どころ2:クリスマスの奇跡が胸を打つ!



クリスマスを間近に控えた12月のロンドンを舞台に、仕事や恋愛、家族関係など、一向に上手くいかない自分の人生に対して、自分が生きているという実感が得られないヒロインのケイトと、不意に彼女の前に現れては、いつも突然姿を消してしまう、謎の多い青年のトム。

この二人が何故出会ったのか? その理由や意味の大きさが最後に明かされることで、実は単なるラブコメ映画ではなく、ヒロインが人生の教訓を得て成長するまでの物語だったという、真の姿が明らかになっていく本作。



© Universal Pictures



まるで接点の無い二人の運命的な出会いにより、一夜限りの出会いを繰り返し男運に恵まれなかったケイトが、やがて自分の人生や周囲の人々・家族との関係性を修復して、再び人生に目的を持つようになるストーリーは、確かにポスターや予告編から受ける印象とは違うものとなっていた。

トム役にヘンリー・ゴールディングを迎えたり、ケイトが務めるクリスマスショップの店主であるサンタを、あのミシェル・ヨーが演じるなど、実は昨年公開されてアジア人俳優主演の映画としては異例の大ヒットとなった恋愛映画『クレイジー・リッチ!』のフォーマットを引き継いでいる本作。

クレイジー・リッチ!(字幕版)


だが、この二人が中々観客の期待通りのラブストーリーに発展しなかったり、トムが不意に姿を消したり、スマホを持っていない真相が一気に明かされる終盤の展開など、その意外性にあふれた素晴らしい内容は、やはりケイトの母親役で出演しているエマ・トンプソンが執筆した脚本によるところが大きい。

加えて、周囲の人々に対して思いやりや優しさを持てない人間が、クリスマスに起こった奇跡によって人間らしさを取り戻し、善行によって過去への贖罪をするという内容は、古典文学である『クリスマス・キャロル』のストーリーを踏襲したものとなっているのだ。

実は本作以外にも、『3人のゴースト』のように分かりやすいものから、『アイアンマン3』のように「えっ?」と思う作品まで、意外に多くの映画が『クリスマス・キャロル』の影響を受けていたりするので、興味を持たれた方はぜひご自分でも探してみては?

見どころ3:実は深く重いドラマが隠されている!



クリスマス時期のロンドンが舞台となる本作だが、観客の予想に反して映画の冒頭で登場するのは、1999年のユーゴスラビアの教会。そこに映し出されるのは、両親と姉が見守る中、聖歌隊のリードボーカルとして見事な歌声を聞かせる、少女時代のケイトの姿。

更に、そこから舞台は一気に2017年のロンドンに住む現在のケイトの姿に切り替わるのだが、このかけ離れた設定が後にどう繋がるのか? すでにこの段階で観客はこの映画に興味を抱かされることになる。



© Universal Pictures



少女時代の夢を諦めず、歌手を目指してオーディションを受け続けるケイトだが、観客の目にも、少女時代のあの輝きはすっかり失われてしまい、今は厳しい現実からの逃避と日々の生活を維持するだけで精一杯のように見える。

それもそのはず、今や両親は別居状態な上に、未だに色々と干渉してくる母親や、親の期待通り弁護士となった姉とも険悪な仲となっているなど、教会で彼女を見守っていた家族との関係が、今ではすっかり悪化してしまっているからだ。

しかも、恋愛や仕事にも全く真剣に向き合えないその生き方は、彼女が完全に人生の袋小路に入り込んでしまったことを物語るもの。

果たして、冒頭に登場した幸せそうな家族を変えた出来事とは何だったのか?

観客もその理由を知りたいと思いながら映画を鑑賞することになるのだが、実はそこには、ユーゴスラビアの内戦を逃れて祖国からイギリスに逃れた難民の厳しい現実や、彼らに対する偏見・差別が存在することが、次第に明らかになっていく。

加えて、ヒロインのケイト自身も健康上の大きな問題を抱えていたり、彼女の姉もまたLGBTとして世間や家族の目を気にして生きているなど、ライトなラブコメ映画と見せて、実は多くの現実的なテーマや問題を描く本作は、正に今の時代だからこそ観て欲しい! そう思わずにはいられない内容となっているのだ。

中でも、バスの中でケイトが男女のカップルに取った行動や、ロンドンの生活に馴染めず孤独な心をもてあましていた母親を、トムの言葉を実践することで人間的に成長したケイトがマーケットに連れ出して、二人で買い食いやショッピングを楽しむうちに、自然と二人の距離が縮まって母親に笑顔が戻ってくるシーンは必見!

過去の失敗への謝罪や、疎遠になった人々との関係修復に遅すぎるということは無い! そんな人生の真理を教えてくれる素晴らしい作品なので、全力でオススメします!

最後に



ネットでも多くの方が発言しているとおり、ポスターや予告編通りの"ライトなラブコメ映画"を期待すると、いい意味で予想を大きく覆されることになる本作。



© Universal Pictures



ただ前述したように、人生の挫折や死、更に内戦による難民への差別やLGBTに対する根強い偏見など、現実的な問題を盛り込んだ本作の脚本には、今回出演に加えて脚本も執筆しているエマ・トンプソンのこだわりが色濃く反映されている、そう感じずにはいられなかった。

確かに、本作のヒロインであるケイトは映画の冒頭から本当にダメな女性として繰り返し描かれるので、この段階で彼女に対して拒否反応を起こしてしまうと、後に続く素晴らしい展開が楽しめなくなってしまう可能性は高い。

更に、恋愛だけでなく仕事にも真剣に向き合おうとしない彼女の軽率な行動が原因で、勤め先のクリスマスショップが空き巣被害を受けてしまう展開には、正直「このヒロインは好きになれないかも?」、そう感じてしまったのも事実。

しかし謎の青年トムとの出会いにより、その後の彼女が人生に対して真剣に向き合い、自分の生き方や周囲の人々との関係を良い方向へ変えていく展開が待っているだけに、映画の前半部でケイトのダメっぷりを強調して描く手法は、彼女の変化や成長の度合いを観客に印象付ける上で、非常に効果的な手法と言える。

もちろん、映画の冒頭でケイトの幸せな少女時代が描かれることで、ここまで彼女が変わってしまった理由や原因の存在が観客にも想像できるのだが、実はその原因となった"過去のある出来事"が、トムとの出会いにも大きく関係していた、という展開は見事!



© Universal Pictures



加えて、自分の生き方や恋愛に対して、すっかり自信を無くしてしまっているケイトにトムが度々言う、「上を見て!」の言葉の持つ意味の重さ。更に、生活感の無いトムの部屋や彼が普段スマホを持ち歩かない理由などが明らかになる展開も、謎の多い彼の行動に関して観客が抱いていた疑問や不信感を、一気に吹き飛ばしてくれるものとなっているのだ。

彼がなぜ「上を見て!」の言葉を繰り返すのか? その理由が明らかになるラストの描き方も、クリスマスに起きたこの素晴らしい奇跡を、無理なく観客に信じさせてくれるはず。

「行動がその人の人格を作る」というセリフが象徴するように、ケイトが少しずつ他者のために行動することで、次第に彼女の周りに人々が集まってくる展開は、気持ちに余裕が持てない現代社会に対しての見事な問題提起に他ならない。

単に甘いだけのラブストーリーではなく、鑑賞後にきっと何か行動を起こしたくなる! そんな暖かい気持ちを心に届けてくれる、この『ラスト・クリスマス』。出来れば明日のクリスマスイブに、劇場で鑑賞するのがオススメです!

(文:滝口アキラ)