映画コラム

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2021年06月03日

只のディザスター映画では終わらない『グリーンランド ー地球最後の2日間ー』

只のディザスター映画では終わらない『グリーンランド ー地球最後の2日間ー』



主演がジェラルド・バトラーともなれば、その腕っぷしで窮地を脱していくディザスタームービーなのだろうと予想しがちだが、本作の場合は少し違う。ディザスタームービーであることには違いないのだが、ジェラルド・バトラーはごく普通の一般人で、独力で不可能を可能にしてしまうだけの力は持ち合わせていない。家族を守ろうと奮闘するごく普通のお父さんでしかない。そう、描こうとしているのはヒーローの姿ではないのである。だからこそ、よくありがちなB級ディザスター映画の装いをしていながらも、グイッと引き込まれてしまうだけのものが本作には宿っている。

今を生きる僕たちにとって、隕石が地球に飛来し、大惨事となるリアリティを抱くのは難しいかもしれない。が、緊急時や未曾有の危機において、心の余裕がなくなってしまうこと、秩序に欠けた行動に走ってしまうこと、そういった人間の在り方や心の弱さを僕たちは知っている。身に覚えだってあると思う。



劇中において暴徒と化す人々。それは、近年における台風時の食料買い占めや、コロナ禍初期におけるマスクの買い占め・転売などの行為と大差ない。それらの行為の延長線上にあるものを見せつけられているのだと思えば、妙に納得ができてしまう。そして、もしも自分が同じ状況に陥ったのなら、どのような選択をするのだろうと考えずにはいられない。

何事においても犠牲は付き物であるし、非情に徹してこそ活路を見出せることが時にはある。しかし、人間としての尊厳を欠いた行動が、後々になってその身と心を苦しめることもある。今を生き抜くことと、人間としての誇りを守ること、そんな天秤が常に揺れ動き続ける本作だからこそ、ディザスター的な要素とは別に終始ハラハラさせられてしまう。これこそ(A級の皮をかぶった)上物B級映画!オススメです。

(文:ミヤザキタケル)

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