『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』観客の夢を締めくくる「3つ」の見どころ!



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エピソード4にあたる『新たなる希望』の日本公開から実に41年を経て、ついに9部作の完結編となる『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』が、12月20日から日本でも劇場公開された。

日付変更と同時に行われた上映にも多くの観客が駆けつけるなど、自分の実人生と共に歩んできた作品のピリオドを見届けようとする観客たちで、劇場は連日満員の大ヒットとなっている。

実は自分も『新たなる希望』をリアルタイムで劇場鑑賞した世代なだけに、今回はかなりの期待を胸に鑑賞に臨んだのだが、果たしてその内容と出来は、どのようなものだったのか?

ストーリー


祖父ダース・ベイダーの遺志を受け継ぎ、今や銀河の圧倒的支配者となったカイロ・レン(アダム・ドライバー)。そして伝説のジェダイであるルーク・スカイウォーカーの想いを受け継いで、フォースの力を覚醒させたレイ(デイジー・リドリー)。遥か彼方の銀河系で繰り広げられる、スカイウォーカー家を巡る壮大なの結末とは?


予告編


見どころ1:シリーズを締めくくる見事な結末!



前作『最後のジェダイ』で飛躍しすぎたストーリーを本流に引き戻し、新たに付け加えられた要素や謎を含めて、全9作にわたるシリーズを理想の形で着地させた、この『スカイウォーカーの夜明け』。

新たな世代の物語となった『フォースの覚醒』以降の作品だけでなく、最終的に旧三部作を含むシリーズ全般をまとめる完結編となった本作には、すでにネット上で数々の高い評価が寄せられている。

だがその一方、絶賛評と同じ熱量の否定的な意見が目立つのも事実であり、すでに多くの方が発言されているとおり、結果的に意外性の無い一番無難な方向に着地したことや、本作1本で全てに決着をつけようとするあまり、逆に新たな疑問や矛盾点が生じてしまった点は否定できない。

とはいえ、『フォースの覚醒』以降の作品で感じていた、シリーズとしての統一感の薄さを解消させ、長い歴史を締めくくる上でこれ以上は無い納得できる結末を見せてくれたことは、間違いなく評価すべき!

少なくとも見終わって欲求不満になったり、怒りを覚えるほど期待を裏切られるといった事態にはならないので、もしもその点を理由に鑑賞を躊躇されている方がいれば、迷わず劇場に足を運ぶことを強くオススメする。

見どころ2:旧三部作へのオマージュが満載!


※以下は若干のネタバレを含みます。本編を未見の方は鑑賞後にお読み頂くか、十分にご注意の上でお読み下さい。

これまでと同様、シリーズ過去作からの引用やオマージュが数多く散りばめられている、この『スカイウォーカーの夜明け』。

ファンの方であれば、「あ、ここはあの作品、このセリフはあのキャラクターへのオマージュ」といった発見が楽しめるのだが、その反面、あまりに旧三部作要素を盛り込んだため、ネット上でも「え、いきなりこの人が? しかもこれしか出ないの?」といった声が目立つのは印象的だった。

確かに、今回の完結編で一気に物語が収束に向かう関係で、1本の映画に対してあまりに多くの情報量が詰め込まれていることもあり、これならもう1本挟んでもっと丁寧に描いてくれれば…。そんな想いが強かったことは否定できない。

中には過去作そのままの再現となった箇所もあり、こうした部分をファンへのサービスや目配せ的な使い方が目立つと感じた方も多かったようだ。

実際、本編中で"ジュニア"と呼ばれていた、アクバー提督に似たキャラクターへの説明が無かったり、せっかくランド・カルリジアンが登場したのに、あるキャラクターとの再会が描かれない! など、やはり物語の決着で手一杯という印象が最後まで拭えなかったのも事実。

中でも、ルークの長年の旧友であるキャラクターが、何の説明もなく一瞬だけ登場する展開には、若い世代の観客や事前に情報を入れていない観客は気付かないのでは? そう感じたと言っておこう。

ただ、個人的に「よく、ここに注目してくれた!」と拍手を送りたくなったのが、本作のラストでチューバッカに渡された、あるアイテムの存在だった。

実はこの展開、『新たなる希望』ラストシーンのある描写が、チューバッカに対しての差別ではないのか? という、ファンの声を受けてのもの。

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ちなみに、『新たなる希望』の公開時にアメリカのマーベル社が発行したコミカライズ版では、レイアの背が低かったために、チューバッカの首にはメダルがかけられなかった、との説明が成されているのだが、残念ながら映画の中では一切その理由が説明されていなかったこともあり、ファンの間でも度々問題にされていた部分だったのだ。

それだけに、『新たなる希望』日本公開から実に41年を経て、ついにこの問題にも終止符が打たれるという粋な計らいには、シリーズと一緒に成長した観客に対するサービス精神を強く感じた次第。

まずは劇場で一度鑑賞してから、情報をチェックして再鑑賞するのがオススメです!

見どころ3:実はライトセイバーに託された物語だった!



統一性の薄かった今回の新三部作の根幹を表現するなら、自らライトセイバーを手放した者の手に、他者の手から再びライトセイバーが届けられることで、自身の宿命に正面から立ち向かい運命を切り開いていく! といったところだろうか。

思えば『フォースの覚醒』では、ルークの手を離れたライトセイバーがレイの手によって彼の元に届けられることで、再び彼が戦いの渦の中に巻き込まれるなど、決して逃れられない宿命の象徴として、ライトセイバーが上手く用いられていた。

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また完結編となる本作では、その重要性が更に増しており、例えばカイロ・レンが赤いライトセイバーを海に投げ捨てることで、自身の過去に決別し再び正義の側へ戻る決意を表現したり、素手で戦うカイロ・レンに正義の側への帰還の象徴として、レイからライトセイバーが手渡される、あの見事なアイディアは必見!

更には、ラストでレイがライトセイバーに託したルークとレイアへの深い想い、そしてレイがフォースにもたらしたバランスの象徴として、彼女が手にした新たなライトセイバーの存在まで、旧三部作で描かれた父と子、そして家族の絆を、今回シリーズをひとつに繋ぐ"象徴"としてライトセイバーに託したことは、実に賢明な選択だったという他はない。



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このように、ライトセイバーをジェダイの使用する武器としてだけではなく、世代を超えて受け継がれる遺志や家族の絆の象徴として用いた点こそ、今回の新三部作が制作された大きな意義と言えるだろう。

もちろん、親や血筋によって運命が決められているのではなく、自分の意思や人々との出会いにより良い方向に変えられるというテーマは、やはり旧三部作の流れを踏襲しているのも事実。

加えて、持つ者に強大な力をもたらすライトセイバーが、使う者の意思によって正義にも悪にもなるという描写は、力に飲み込まれない意思の強さこそが、ジェダイの騎士にとっていかに重要かを観客に伝えるものであり、決してシリーズの本質を見失ってはいない、そう再認識させられたこの『スカイウォーカーの夜明け』。

ネットには賛否両論の意見やレビューが上げられているが、まずはご自分の目で、その結末を見届けて頂ければと思う。

最後に



ここまで述べてきたように、これほどの長期にわたる人気シリーズを、多くの観客が納得する一番理想的な形で完結に導いてくれた功績については、本当にお疲れ様でした! と言うしかない。

ただ欲を言えば、前作『最後のジェダイ』に寄せられた観客の不評や不満への配慮のためか、せっかく持ち込まれた新たな人間関係や恋愛要素が全く存在しなかったかのような扱いを受けることで、前半部分に終始付きまとう違和感が非常に気になったのも事実。

特に、前半で繰り返されるアイテム入手のための移動が、まるで観光映画のように続く展開には、多くの方が否定的な意見を抱かれたようだ。

加えて、一気に物語の決着へと爆走する展開や、ここにきての新キャラや新設定の登場など、前作からの大幅な軌道修正による情報量の多さに観客側も戸惑ってしまい、鑑賞後に全てを咀嚼して理解する時間が必要だった、との意見やレビューが目立ったのも印象的だった。

実際、OPに流れる字幕の一行目を観た瞬間、「え、これって1本抜かしてないか?」と思ってしまったくらい、前作の色を消そうとするあまり話が飛躍する展開には、正直ついて行くだけで精一杯と感じたほど。

更に、前作で大きな反響を呼んだフィンとローズの関係性への配慮からか、主要キャラの恋愛要素がかなり排除されてしまったことで、逆にレイのあの行動が非常に唐突で意味不明なものとなってしまったのも、正直残念でならなかった。

特に冒頭やエンディングのシーンで描かれる、フィンとローズの明らかに不自然な距離感には、仮にも自分の身を挺して命を救ってくれた女性に対してあまりにも不自然では? そんな思いが消えなかったと言っておこう。

個人的には、前作『最後のジェダイ』で観客に深い余韻を与えた、辛い状況にある少年が夜空を見上げてジェダイ騎士を夢見るという泣かせるラストが、『新たなる希望』で宇宙に憧れるルークの姿と重なる素晴らしいものだっただけに、欲を言えばこの感じで締めくくって欲しかった、そう思わずにいられなかったのも事実。

とはいえ、本作のラストも全9作の最後を飾るにはこれしかない! そう誰もが納得するものとなっているので、ご安心を!

『新たなる希望』の公開から共にその歴史を見守ってきた観客にも、そして『フォースの覚醒』から鑑賞してきた若い世代にも、それぞれの楽しみ方ができる、この『スカイウォーカーの夜明け』。

残念ながら制作が中断しているスピンオフ作品やオリジナルのドラマなど、今後も新たな展開で観客を夢の世界へと連れて行ってくれるであろう、『スター・ウォーズ』という偉大な文化遺産の結末だけに、まずは劇場の大スクリーンで体験して頂くのが、オススメです!

(文:滝口アキラ)

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