映画コラム

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2020年09月10日

『窮鼠はチーズの夢を見る』レビュー:大倉忠義&成田凌が体現する自然体の愛

『窮鼠はチーズの夢を見る』レビュー:大倉忠義&成田凌が体現する自然体の愛



 (C)水城せとな・小学館/映画「窮鼠はチーズの夢を見る」製作委員会



愛の形は人それぞれではありますが、その中には長年タブーとされてきているものも存在します。

同性愛もそのひとつではありましたが、最近は、特に21世紀に入ってからはLGBT問題を訴える声が高まってきたこともあってか、かなりオープンになってきている感もあります。

また同時に日本では女性向けのコミックやアニメーション作品で同性愛を麗しく描くものが増え、日常的に受け入れられるようになってきたことも要因の一つとして挙げられるかもしれません(1970年代から80年代にかけて発表された魔矢峰央の「パタリロ」「飛んで埼玉」の再ブームも、ある種の象徴のように思えます)。

またそれらは当初“腐女子”と呼ばれるマニア向けではあったものの、徐々に市民権を得てきて(腐女子も今では“富女子”と記されることがあります)、現に最近その手のアニメ映画の劇場へ赴くとオシャレした若い女性客で満杯になっていることも多く、その光景などを目の当たりにしていると、タブー云々の偏見を抱いているのは、もはや旧世代でしかないのではないかとさえ思ってしまいます。

愛に異性も同性も関係ない、いや逆に異性愛も同性愛もあるからこそ、愛の世界はこれからますます自然体を伴いながら深まっていくのかもしれません。

実際、そのことを示唆してくれるかのような映画が日本で、しかもアニメではなく実写で作られ、9月11日から全国で公開されます……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街501》

行定勲監督作品『窮鼠はチーズの夢を見る』は、大倉忠義&成田凌という実力も存在感も美貌も備えた若手俳優を迎えて、世の女性たちが嫉妬してしまうかのような狂おしい愛の世界を激しくも美しく、そしてごく自然の佇まいで繰り広げていくのでした!

受け身の愛を享受してきた男
そんな彼を愛し、翻弄する男


映画『窮鼠はチーズの夢を見る』は、「脳内ポイズンベリー」などの映画化作品もある水城せとなの“恭一&今ヶ瀬シリーズ(窮鼠シリーズ)”として知られる同名作および「俎上の鯉は二度跳ねる」を原作に映画化したものです。

学生時代から自分を好きになってくれた女性と付き合ってばかりの恋愛を繰り返してきた大伴恭一(大倉忠義)は、ある日後輩だった今ヶ瀬渉(成田凌)と再会します。

興信所に務める今ヶ瀬は、恭一の妻・知佳子(咲妃みゆ)からの依頼で彼の浮気調査をしており、瑠璃子(小原徳子)との関係を捉えた証拠写真などの資料の数々を恭一に差し出します。

妻に秘密にするよう懇願する恭一に、今ヶ瀬はその夜キスを迫ります。

実はずっと昔から、今ヶ瀬は恭一のことを想い続けていたのでした。

まもなくして知佳子と離婚(この理由がまた意外なのですが)した恭一の住まいへ今ヶ瀬が転がり込んできて、いつしか成り行きでふたりは同棲することに……。

今ヶ瀬に振り回されつつ、最初は嫌がっていたキスも次第に受け入れられるようになっていく恭一でしたが、そこにかつての恋人・夏生(さとうほなみ)や部下のたまき(吉田志織)といった女性たちが彼の前に現れては今ヶ瀬を嫉妬させ、同時に恭一の心も狂おしく乱れては、流されっぱなしの己を自問自答していきます……。

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