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『本気のしるし〈劇場版〉』レビュー:どダメ女にはまったクール男の顛末とは?

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深田晃司監督作品の根幹には
秀逸なエンタメ性がある


いやはや、もう本当にとんでもない映画です。

これまで悪女にはまった男が堕ちていくようなお話は山のようにありますが、ここでのヒロインは圧倒的なまでの気弱なこじらせ女ではあれ、そこに悪意も含みも下心も何もなく、ただただ天然に行動していくことで周りをどんどん巻き込んでしまうという恐ろしさ!

また男のほうも、そんな女のことなど放っておけばよいものを、どうしても「男は女を護るもの!」とでもいった男ならではの上から目線的プライドが頭をもたげてしまうのか、気がつくとその都度彼女に構ってしまっていて、お金はどんどん飛んでいき、女性関係もグチャグチャになり、会社での立ち位置もおかしくなっていき……。

でもその頃になると、男はもうその女なしでは生きていられないほどにのめりこんでしまっているのでした。

ところが、それでも女はまったく悪気なしに、またまた男を裏切ってしまい……!?

とにかくヒロインの浮世は誰の目から見てもイライラさせられっぱなしの女なのですが、何気ない言動のひとつひとつが「あ、これをやられたら男はヤバイ!」の繰り返しで、もし自分が主人公の立場だったとしても絶対はまってしまうのではないかという、慄然とした想いに包まれてしまうのです。

(ここまでくると、もはやホラーの域に突入しているといっても過言ではないでしょう!)

そんな究極のダメダメながらも可愛らしい女を、土村芳が恐ろしいほど魅力的に好演しています。

またそのことによって森崎ウィン、宇野祥平、忍成修吾といった、彼女に振り回されていく男たちの哀れさみたいなものも際立っていきますが、そんな彼らを冷徹に観察しているかのようなヤクザ役の北村有起哉も、実は浮世と辻の関係性が気になって気になって仕方がないという風情を巧みに醸し出しています。

深田晃司監督は、先にも記したようにカンヌをはじめ今や世界中のシネフィルから絶賛されている才人ではありますが、よくよく彼のキャリアを振り返ってみますと、デビュー作が絵画を用いた斬新なアニメーション(=画ニメ)中編『ざくろ屋敷』(06)であったり、本物のアンドロイドを主人公として登場させた画期的な近未来SF『さようなら』(15)があったりと、生来的に根幹として備え持つエンタテインメント性をアーティスティックに発露させることに長けた監督のように私には思えてなりません。

本作のインタビュー記事などを読んでも、実はマンガ好きで、それゆえに星里もちるの同名漫画を映像化することも長年の宿願であったと知ると、俄然彼の秀逸な映像構築センスなどの世界観に興味がわいてきます。

数々のラブコメ・マンガで知られる星里もちるが、そういった世界に出てくるような可愛らしいヒロインを、コメディ要素を抜いた世界へ置いてみたらどうなるか? という原作の実験性に気づいた深田監督は、そこから男社会の中で理想的に(もしくは都合良く)映えるマンガの女性=浮世を三次元の現実に登場させることで、現代社会における男女の立ち位置やそれゆえの哀しみなどを描出することにまで見事な成功を収めているのでした。

およそ4時間の長尺ですが(ちゃんとインターミッション=途中休憩はあるのでご安心のほどを)、あっという間の短さでもなければ、もちろんダラダラ退屈などするはずもない、かなり濃密な4時間をフルに体感できます。

最後まで見終えて、長尺ゆえの疲れと達成感もさながら、それ以上にすがすがしい映画的解放感&愉悦感に包まれることも必至!(ラストシーンの素晴らしさたるや!)

独りで見ても、カップルで見ても、映画仲間同士で見ても、とにかく鑑賞後は誰かと熱く話したくなること間違いなしの快作であり、秀作であり、傑作であり、ケッサクです。くれぐれもお見逃しなきように!

(文:増當竜也)

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