『映画 えんとつ町のプペル』は6等星に気付く旅路|東紗友美の"映画の読みかた"
お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣が手掛けたベストセラー絵本『えんとつ町のプペル』の映画が2020年12月25日から公開されます。
今回は『映画 えんとつ町のプペル』を観て、その余韻に浸かりながら、頭に浮かんだことばと、心に浮かんだ景色を、綴ります。
映画から生まれる言葉の世界へ。
『映画 えんとつ町のプペル』の読みかた
都会の夜の6等星と、『映画 えんとつ町のプペル』はよく似ている。「夢」を追い続けることは、自由なのか牢獄なのか。
鮮度の高い欲望を振りはらい、誰かに時にばかにされ、居心地の悪い焦燥感を抱えながら、それでもただ上だけを見つめることはある種の痛ましさを孕んでる。
1本道。それは道という名の、名もなき道だから。
高みに登ろうとするほど、身体の一部が震えだす。不安。恐怖。
でも空に心臓を向けて、いつかは自分だけの登るべき場所を見つけて、その1番高いところからの風を。空気を。全身で感じたい。
夢を追うものにとっては、その願いはきっと共通項だろう。
2019年12月。誰もが5年後どうなりたいか、逆算思考で語っていた。
2020年12月。不安定な世の中で、一寸先を綱渡り。
いまは、目の前にあることが全てになった。
今できることを、自分のできることを、100、いや120パーセントで。
まっくらで、みえない。だからこそ、目の前の信じたみちだけをー。
奥行きを感じるように、捉えていきたい。
それが、きっと揺蕩うことのない
自分だけの道につながっていくことを教えてくれる。
「こんなはずじゃなかった。」を抱える大人たちは共感し、自由帳にかいた落書きみたいなまっさらな自由を、もう1度手に入れる。
人生のマラソンは長い、もう1周。
「夢なんて信じられない。」と口を揃える子供たちを抱きしめて、静かな道しるべとなり、美しく生きたりしなくていいことを教えてくれる。
強くて、純粋なものを見落とさず、不純物から取り除く方法を照らし出し。
見えにくいけどちゃんとある、都会の夜の6等星の存在に、気づけるようになれた映画。
text by Sayumi HIgashi
映画ソムリエ東紗友美
元広告代理店勤務。テレビやラジオでの映画紹介、各種媒体での映画コラム執筆、映画イベントMCなどが主な活動領域。映画ソムリエと名乗り、映画をコンセプトとしたカフェのプロデュースや映画祭審査員などにも携わりながら、映画業界を盛り上げる存在になるべく日々奔走中。Instagramでは毎日、映画情報を配信している。
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