『おもいで写真』レビュー:遺影ならぬ“おもいで写真”を撮り始めた女性の心の軌跡
増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」
どこの国にも独自の文化と、世界中どこも変わることのない普遍的な営みがあります。
ふと、自分が死んだときの葬式の風景なんて想像してみたことがありますか?
また、そのとき自分のどのような遺影写真が飾ってあるのか?
正直、ピンボケだったら、あの世から眺めていても何となく嫌ですよね。
本作『おもいで写真』は、そんな遺影写真を「おもいで写真」に変えて撮影していこうとする若い女性の映画です。
挫折して帰郷したヒロインと
お年寄りたちとの真摯な交流
『おもいで写真』の主人公は、たった一人の家族だった祖母(原日出子)が亡くなり、メイクアップアーティストの夢にも破れ、東京から富山に帰って来た音更結子(深川麻衣)です。
その葬式の際、祖母の遺影がピンボケだったことに、結子は忸怩たる想いを抱きます。
数日後、彼女は幼馴染で町役場に務める星野一郎(高良健吾)から、町のお年寄りたちの遺影写真を撮る仕事を引き受けることに。
最初、お年寄りたちはみな「縁起でもない」と、相手にしてくれません。
しかし「遺影写真」ではなく「おもいで写真」を撮りましょうという趣旨に変えてみると、80歳の山岸和子(吉行和子)を皮切りに、次第に希望者が増えていくようになり、あっという間に50人分の写真を撮影。
100人のおもいで写真が実現したら写真展を開こう。そうすればおばあちゃんも喜んでくれる……。
しかし、いろいろなお年寄りと接していく中で、その人の思い出が嘘であったり、夫の死を受け入れらない妻が妄想の世界へ入り込んでいたり、そして過去の秘密を背負う男(古谷一行)の思い出の場所へ赴くと、そこは……。
こういったさまざまな人たちの様々な人生模様に翻弄されながら、結子は少しずつ心の成長を遂げてゆきます……。
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©「おもいで写眞」製作委員会