2021「ゴールデングローブ賞」で浮き彫りとなった問題点|賞とは何か…?
受賞結果はインクルージョンを達成したか
さて、様々な議論が紛糾する中で発表されたゴールデン・グローブ賞ですが、受賞結果を見てみましょう。映画部門のドラマ作品賞に選ばれたのは『ノマドランド』。本作の監督クロエ・ジャオは中国出身の女性監督です。監督賞も同時に受賞していますが、アジア出身監督としてはアン・リー監督に次ぐ2人目、女性監督としてはバーブラ・ストライサンドに次ぐ2人目の受賞。アジア人女性監督としては初の快挙となります。
クロエ・ジャオ監督はMCUの「エターナルズ」の監督にも抜擢された注目の新星。2017年に自主制作した『The Rider』で注目を集めました。この映画は、落馬事故でロデオの道を断たれたカウボーイの物語でしたが、今回の『ノマドランド』といい、荒野を舞台にした渋い題材ですね。
彼女の活躍で心強いと筆者が感じるのは、アジア人でありながら、アジアをテーマにした作品で評価されたのではないところです。無論、自身のルーツを題材に素晴らしい作品を作ることには何の問題もありませんが、アジア人ならアジアの問題を、女性ならジェンダーの問題を扱わなければ評価されないのであれば、それ自体差別の温床です。クロエ・ジャオ監督が、アジアでもジェンダーでもない題材で評価されたという点には大きな意味があると思います。
俳優部門では、ドラマ部門主演男優賞にチャドウィック・ボーズマン(マ・レイニーのブラックボトム)、 ドラマ部門主演女優賞にアンドラ・デイ(The United States vs Billie Holiday[原題])、助演男優賞にダニエル・カルーヤ(Judas and The Black Messiah[原題])と3人の黒人俳優が受賞しています。
これは若干のサプライ部も入った選考結果だったのではないかと思います。『Mank マンク』のゲイリー・オールドマンや『ノマドランド』のフランシス・マクドーマンドなどかなり評価の高い俳優を押さえての受賞となっています。
外国語映画賞では『ミナリ』が受賞しました。下馬評通りですが、そもそもこの部門のあり方を考えさせられたこともあり、今後はアカデミー賞のように外国語映画賞から国際映画賞のように変わっていくのかもしれません。
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