映画コラム
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』を楽しむための“12”のポイント
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』を楽しむための“12”のポイント
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7月21日(金)に日本公開を迎えた5年ぶりのシリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』。
人気シリーズかつ主演のトム・クルーズは昨年『トップガン マーヴェリック』が特大ヒットを記録しているだけに、本作の公開を心待ちにしていたファンは多かったはず。
また公開前からトムの相変わらず規格外なスタントが話題をさらっており、「今夏」どころか「今年最注目の1本」に相応しい作品だといえる。今回はそんなビッグバジェット映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の見どころをじっくりご紹介していこう。
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1:トム、飛ぶ
主演だけでなく、プロデューサーとしてもシリーズを牽引するトムは気づけば現在61歳。シリーズ第1作が1996年に公開されたことを考えれば、さすがのトムも危険なスタントからは手を引く…… はずがない。
話題の断崖ジャンプでは五輪競技でもこんなスケールのストラクチャーは見たことないぞ、というジャンプ台をセッティングした上で、バイクを駆るトムが勢いよく空中へと飛び出してみせた(なお本編ではジャンプ台は消されている)。
あまりの標高差に一歩間違えなくても命を落としかねないスタントとあって、注目を集めるのは至極当然のこと。ところが、さすがエンターテインメントの真髄を心得ているトムおよび製作陣。
断崖ジャンプは見せ場のひとつに過ぎず、ローマ市内で実際にトムがハンドルを握ったカーチェイスやオリエント急行内(あるいはオリエント急行“上”)での攻防戦などが作品にブーストをかける。
トム自らが危険を顧みず命懸けのスタントに挑むからこその「説得力」も大きな魅力だ。
しかもオリエント急行を舞台にしたアクションシーンは、シリーズ1作目から観ている人なら思わずニヤリとするはず。1作目では高速で移動するTGV上でイーサン・ハント(トム)とジョン・ヴォイト演じるフェルプスが攻防を繰り広げており(さすがにこの場面は背景合成)、スピード感こそスローダウンしているものの新しさとともに感じる「懐かしさ」が心地良い。
2:トム、走る
『ミッション:インポッシブル』シリーズといえば、第3作あたりから「走るトム・クルーズ」が定番化している。勢いよくダッシュしているにも関わらず上半身の軸はブレることがなく、指先をピシっと伸ばして腕をやや大袈裟に振る姿はいつしか「トム走り」と呼ばれるようになっていた。
トム走りのシーンだけを集めた動画が作成されるなど、どこかネタとして楽しんでいる節もあるが、もちろん本作でもトム走りは健在。
とりわけ夜の帳に包まれた古い街並みをイーサンが駆けるシーンは、シリーズの中で限りなく大きな意味を持つことになる。イーサンがなぜ全力で走るのか、その意味を知った時ひとつの感情のピークを迎えるはずだ。
3:シリーズで最もシビアなミッション
エンタメ性抜群の『ミッション:インポッシブル』シリーズだが、イーサンと仲間たちは常に死と隣り合わせのミッションに挑んでいる。第1作こそスパイの名簿をめぐるミッションを描いているものの、香港アクション映画の巨匠ジョン・ウーを招いた『ミッション:インポッシブル2』(『M:I-2』)以降はシリーズを追うごとにスケール感がアップ。世界規模の危機をイーサンたちが未然に防いできた。
本作でも人類の未来を左右する「それ」がミッションの鍵になっており、見せ場であるアクションシーン以外のほとんどでその「鍵」をめぐる駆け引きが展開される。それだけ本作のミッションが緻密な作戦と不測の事態に対応する能力を必要としており、いつミッションが失敗に終わってもおかしくないというスリリングな状況はシリーズ随一。
「それ」はイーサンだけでなく人類にとってあまりにも大きな脅威であり、「さすがのイーサンでも今回は敵が強大すぎる」という不安が全編で重くのしかかる。
4:イーサンを支える安心と信頼のメンバーたち
未曾有の脅威に立ち向かうイーサンばかりについ目を向けがちだが、前作『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』から引き続きルーサー(ヴィング・レイムス)、ベンジー(サイモン・ペッグ)、イルサ(レベッカ・ファーガソン)がイーサンをサポート。
ルーサーはイーサンと並んでシリーズ全作に登場しており、本作ではルーサーの「客観的なアドバイス」がこれまで以上に重要となる。
「シリーズのヒロイン」と囁かれているベンジーについても新たな危険が待ち受ける。彼がどのような展開を迎えるのか、ペッグの魅力もありその動向が気になって仕方がないという人もシリーズを通して少なくないだろう。
また今回「追われる立ち場」として序盤から物語を引き立てるイルサは、本作のキーパーソンのひとりに。いまやイーサンと互いを認め合っている存在だけに彼女の行動からも目が離せない。
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5:まさかのキャラが再登場!
レギュラーメンバーに加えて、本作は「ある人物」の再登場も大きなトピックス。その名はユージーン・キトリッジ。第1作の序盤で描かれたプラハでのミッションの際、イーサンを追い詰めたCIAのIMF監督官だ。
キトリッジ役を再びヘンリー・ツェニーが演じていることも大きな意味を持っており、予告編でも示されるとおりセリフで精神的にじわじわとイーサンに詰め寄る様子はまさに1作目のキトリッジそのまま。
感情を一切表情に出さないキトリッジが本作でイーサンの敵となるのか味方となるのか、絶妙な配役に思わず唸らされてしまう。
6:新規参戦組、ヘイリー・アトウェルの魅力
シリーズ第7弾にして新たに参戦したキャストのひとりがMCUのペギー・カーター役でお馴染みヘイリー・アトウェル。彼女が演じるグレースはイーサンを支えるチームメンバーよりも重要なポジションにあり、その出会いのシーンからも「只者」ではないことが伝わってくる。
イーサンをも翻弄するグレースはイルサと同様に一過性のキャラではなく、彼女の行動ひとつでミッションに影響を及ぼすことになる。
7:イーサンの過去を知る男
これまで様々なキャラクター、ヴィランが登場してきた本シリーズ。しかしIMFに加わる「以前」のイーサンを知る存在という意味では、シリーズにおける新基軸ではないだろうか。
同じく初参戦となるイーサイ・モラレスが演じるガブリエルは、新キャラにしてイーサンと大きな因縁を持つ男。「鍵」を狙うガブリエルはイーサンをことごとく出し抜く狡猾さを持ち合わせ、それでいてゴーストのように得体が知れず掴みどころのなさが不気味さを際立たせる。本作のスケールに相応しいヴィランといえるだろう。
8:ポム・クレメンティエフが大爆発!
新規参戦組の中で、ポム・クレメンティエフ演じるパリスが実はなかなかヤバいヤツと誰が想像できようか。ガブリエルに協力するパリスは例えるならガソリンのような存在。
ひとたび火が着けば激しく燃え盛るようにパリスは冷静なフリをした激情型ヴィランで、クレメンティエフを一躍有名にした『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのキャラクター・マンティスとは真逆の表情を見せてくれる。
カーチェイスでは「ハンドルを握ると性格が変わる」を地でいき、一転してファイトシーンでは剣術含めて瞬発性を活かした華麗なモーションを披露。
トムとのアクションで「実際に腹を蹴ってほしい」とリクエストしたという話題からも、本作に挑むクレメンティエフの並々ならぬ気合いが伝わってくる(トムには断られたが)。
9:散りばめられたオマージュシーン
キトリッジの再登場や列車上でのファイトなど本作は原点(第1作)に立ち返った印象が強い。シリーズ初となる前後編の構成は総決算ともいえるスケールで、随所にセルフオマージュシーンと思しき場面が散りばめられている。
例えばイーサンが手にしていたものをサっと消したり現したりする“手品”は、第1作でジャン・レノ相手に披露済み。巨大な砂嵐がイーサンに迫る場面は第4作『ゴースト・プロトコル』でも見られた。またオリエント急行から脱出を図る際の構図は、これは詳細は省くが『M:I-2』のとあるシーンと展開までそっくりだ。
また本作はシリーズに限らずアクション史をなぞるような場面も多い。フィアット500を操るローマでのカーチェイスは、そのコンパクト感から古都トリノを舞台にした『ミニミニ大作戦』を彷彿とさせ、宙吊りになった列車内で落下しまいとぶら下がる場面は『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』で発生したマルコム博士&ハーディング博士の危機的状況と似ている。
他にもイーサンがオリエント急行に「侵入」する瞬間や機関車が転覆するシーンなど、映画好きほど「おやあの映画かな?」と連想するかもしれない。もちろん「考えすぎ」と言えばそれまでだが、映画とは“楽しんだ者勝ち”なのでこの際どんどん乗っていこう。
10:クリストファー・マッカリー、遺憾なく才能を発揮
本作は第5作『「ローグ・ネイション』と『フォールアウト』に続き、トムからの信頼が厚いクリストファー・マッカリー監督が登板。シリーズを重ねるごとにカオスな状況を生み出しながらも、破綻するどころか巧みなディレクションでヒットに導く手腕はさすがとしか言いようがない。
脚本がない状況でもストーリーを的確に組み立てキャスト・スタッフを指揮できるのは、まさに脚本家として頭角を現した(『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー脚本賞受賞の実績あり)マッカリーならではの才能。脚本で参加した『トップガン マーヴェリック』と同様、シリアスな展開の中でもふと笑わせてくるのでセリフの応酬にも注目を。
11:緊迫感を煽る音楽
シリーズは一貫して「スパイ大作戦」でラロ・シフリンが生み出したテーマ曲を使用する一方、作曲家自体はたびたびスイッチしている。本作は『フォールアウト』から続いてローン・バルフが音楽を手がけており、第3作・4作を担当したマイケル・ジアッチーノに続いて2作連続で登板した作曲家に。
バルフは近作に絞っても『アンビュランス』や『ブラックアダム』『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』など「燃えるサウンド」の名手とあって、パーカッションやリズム隊が打ち鳴らすテーマ曲は迫力満点。
第2作を手がけた師匠ハンス・ジマー譲りの重低音も駆使して緊迫感を演出しており、イーサンだけでなく観客を窮地へ追い詰める装置としてその効果は想像以上に大きい。
12:たとえ日本に来れなくても……
予定されていたトム一行の来日はアメリカの俳優組合がストに突入した影響で叶わなかったが(これは俳優の権利を守るためであり「仕方のないこと」ではなく「当然のこと」)、それでトムをはじめスタッフ・キャストが本作に詰め込んだ観客への愛情が薄れるようなことはない。
『PART ONE』と銘打たれてはいるものの、イーサンらチームメンバー、ガブリエルたちがどのような行動に出てどのような展開を迎えることになるのか、劇場で固唾を飲みながら見守ってほしい。
(文:葦見川和哉)
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