あなたに役立つ映画・ドラマのプラスαがあるメディア「シネマズプラス」

©cinemas PLUS Committee. All Right Reserved.

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』もっと面白くなる「5つ」のポイント解説(※後半ネタバレ全開!)

(C)カラー


5:(ネタバレ)くり返しの物語、そして故郷へ帰ってきた

新劇場版シリーズ製作発表際の所信表明文にて、庵野秀明監督はこう宣言しています。

「エヴァ」はくり返しの物語です。
主人公が何度も同じ目に遭いながら、ひたすら立ち上がっていく話です。
わずかでも前に進もうとする、意思の話です。
曖昧な孤独に耐え他者に触れるのが怖くても一緒にいたいと思う、覚悟の話です。
同じ物語からまた違うカタチへ変化していく4つの作品を、楽しんでいただければ幸いです。

この『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の正式なタイトルには「:||(演奏記号のリピート記号)」がついており、つまり「くり返し」であることが示唆されています。

前述した通り、農作業のパートはテレビアニメ版の最終話である「僕はここにいていいんだ」に至るまでのシンジの心理の変化を別の形で描いたものとも言えますし、シンジが世界およびアスカやレイとゲンドウと向き合っていくという物語の本質はそのままなのです。この所信表明文の言葉を、庵野監督は完全にやり切っていると断言していいでしょう。

そして……『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のラストシーンで映されたのは、宇部新川駅でした。そして、庵野監督の故郷は、その駅がある山口県宇部市なのです。

それは、「始まりの場所」に戻ってきたということ、故郷にこそ自分の考えが詰まっているんだという、庵野監督の「原点回帰」が、あのラストシーンなのだと思います。

そして、2000年の庵野監督による実写映画『式日』のロケ地および舞台も、山口県宇部市でした。
この作品は、庵野監督の投影と思われる“カントク”が、毎日「明日は私の誕生日なの」と訴える“彼女”と出会い、ぬるま湯のような現実逃避の日々を送るというもの。劇中では「現実と虚構』に対する哲学的な考察がされており、そこに向き合うことこそ、庵野監督の大きな作家性なのだと再認識できる内容になっていました。

その『式日』において、彼女が“鉄道のレール”について「儀式」のために最初に座っていた場所であり、「自分で道を選ばなくてもいい感じ」「2本で1つだから」と“レールが好きな理由”も語られています。

だからこそ、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のラストシーンで、レールの上を走る電車ではない、駅の外へシンジとマリが出ていくというのは、(レールという)決まった場所に行き着くものではない、これからは自由に道を選んでいくということ。これが『式日』の頃の庵野監督自身の哲学的な思考の反復でありつつ、やはり同時に卒業なのだと、と思えたのです。

『エヴァンゲリオン』のテレビアニメ版、旧劇場版、そして新劇場版で、繰り返し同じ物語を語ってきて、そのことで苦しんだこともあった(『Q』の製作後にうつ病になったりもした)庵野監督が、本当に自由になったんだな……と、『式日』を合わせて観ることで、さらに思うことができたのです。改めて、庵野監督に「お疲れ様です」と労いの言葉をかけたくなりました。

同時に、前述したように妻である安野モヨコへのラブレターであり、観客たちへ「(ヒロインやアニメからの)卒業」を促しつつも「好きなままでもいいよ」と提言してくれるこの『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のなんと優しいことでしょうか。

ありがとう、そしてさようなら、全てのエヴァンゲリオン。そして、アニメおよび創作物を、これからも愛し続けようと思います。

→『シン・エヴァンゲリオン劇場版』より深く楽しむための記事一覧

(文:ヒナタカ)


NEXT|次ページ > 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』作品情報

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録