『ドリームランド』レビュー:マーゴット・ロビーの強盗犯が危険なまでに魅惑的なロード・ムービー!
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
アメリカが大不況に見舞われていた1930年代のテキサス州を舞台に、『俺たちに明日はない』(67)などのアメリカン・ニューシネマにインスパイアされたと思しき青春犯罪映画。監督は若手気鋭のマイルズ・ジョリス=ペイラフィット。
マーゴット・ロビー扮する指名手配の銀行強盗犯アリソンが抜群にいかしていて、これでは17歳童貞のユージン君(フィン・コール)ならずとも男はメロメロになってしまうことでしょう(そして地獄堕ちも必定?)
前半部の荒廃したテキサスの大地の中、未だ大人になりきれないヒーロー願望を持つユージンの悶々とした想いが、アリソンという魅惑の大人の女性が目の前に現れたことによって歪んだ大人への覚醒を果たしていく様が、淡々としたテイストながらも着実に描出されています。
後半はふたりの逃避行となり、一気にロード・ムービーとしての情緒も高まっていきますが、ここでアリソンの心情に微妙な変化が見えてくるあたりも見逃せないところ。
ふたりが泊まるモーテルのシャワー室でのやりとりは、単に1シーン1カットで見せるということ以上に、両者の感情の揺れなどがシネスコの画面構図を巧みに活かしながら見事に醸し出されていくという、本作最大の白眉ともいえる優れものでした。
“DREAMLAND”というタイトルそのものには、正直なところ最初はピンとこないものがあったのですが、映画の進行とともに時折唐突に挿入されるスタンダードの画の中の世界こそが、きっとドリームランドなのだと見極めることが出来さえすると、一気に映画そのものの意図が理解でき、映画そのものの流れにもリズムの弾みを感じることができます。
マーゴット・ロビーが2014年に設立した自身の製作会社ラッキーチャップ・エンターテインメントによる『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』(17)『アニー・イン・ザ・ターミナル』(18)に続く第3作目。
今回は小品佳作的な規模の作品ではありますが、マーゴット・ロビーの魅力の発露としては、これまで彼女が演じてきた作品群に負けず劣らずのものと断言できます。
少なくとも彼女のファンはもとより、『俺たちに明日はない』『地獄の逃避行』(73・未)『デリンジャー』(73)『天国の日々』(78)などのアメリカ青春犯罪映画ファンであれば、一度は見ておいて損はない作品でしょう。
(文:増當竜也)
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