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田中邦衛追悼:助演から主演まで、どんな作品でもオーラ全開の存在感

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■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」

田中邦衛が2021年3月24日に88歳で亡くなりました。

昭和から平成にかけて数多くの映画やドラマに出演して人気を博した彼、どのような作品でも強烈なインパクトをもたらしつつ、助演の際は主演を引き立てる演技を、主演のときは自身のオーラを全開させていくという、そういった理想的な名優でもあったと思われます。

一般的にはTVドラマ「北の国から」シリーズ(81~02)がもっとも有名なところになるでしょうか。

しかし田中邦衛の代表作は数えきれないほどあります。

今回はその中から、ほんの一部の映画をご紹介していきたいと思います。

「若大将」シリーズの青大将と
TV&映画の「若者たち」

田中邦衛は1932年11月23日、岐阜県の出身。故郷で一度は代用教師になるも俳優の道を志すようになり、俳優座第7期生となります。

(同期は井川比佐志、露口茂、山本學、藤岡重慶、水野久美など)

映画デビューは1957年の今井正監督作品『純愛物語』。当初はアクの強い風貌を買われてチンピラや殺し屋といった悪役を演じることが多かった彼ですが、1961年『大学の若大将』に始まる“若大将”シリーズ(61~71+81)で主人公の若大将(加山雄三)のライバル青大将こと石山新次郎を演じ、好評を博します。

この青大将、大企業社長の御曹司で常に若大将をライバル視し、彼に勝つためにずるいことも平気でやってしまうような男なのですが、そのコミカルな風貌も手伝ってか妙に憎めないところがあり、いつしかシリーズになくてはならない顔となり、時に主役を食いかねないほどの人気を博すようになっていきました。

1996年には両親を亡くした5人兄弟が友情や恋愛などの確執を経て成長していくフジテレビの名作ドラマ「若者たち」で長男を演じ、お茶の間でも広く知られる顔になっていきます。

またドラマ終了後、俳優座の主導でドラマ版の主要スタッフ&キャストによる『若者たち』(68)『若者はゆく―続若者たち―』(69)『若者の旗』(70)と映画化され、その第1作で彼は毎日映画コンクール男優主演賞を受賞しています。

東映実録映画での活躍と
1970年代の印象深い映画

田中邦衛が映画で最もエネルギッシュに映えていたのは1970年代かもしれません。

『網走番外地』シリーズ(65~)で主演・高倉健扮する主人公の弟分(名前は主に大槻ですが、作品によっては別名もあり)を演じるようになって以降の彼は東映映画の出演が目立つようになっていきます。

特に70年代前半の東映実録ヤクザ映画の金字塔『仁義なき戦い』シリーズ(73~74/第2作『広島死闘篇』を除く)での山守(金子信雄)の腹心の部下で槙原組組長へ出世していく槙原政吉役は鮮烈。

また深作欣二監督作品では『人斬り与太 狂犬三兄弟』(72)『仁義の墓場』の名演も忘れられません。

他社作品として印象に残るのは、実写版『ルパン三世 念力珍作戦』(74)の次元大介(!)。

また神代辰巳監督が東宝で撮った『アフリカの光』(75)での萩原健一との意味深な関係性は時代を先取りしていました。

絶妙のコンビネーション
岡本喜八と森﨑東両監督

田中邦衛と相性の良かった映画監督として、個人的には岡本喜八と森﨑東の二人を挙げたいと思います。

岡本喜八監督作品には『顔役暁に死す』(61)など1960年代初頭から出演しはじめ、『肉弾』(68)で主人公に「貴様という奴は!」の台詞を壊れたレコードのように連呼する鬼の区隊長、『激動の昭和史 沖縄決戦』(71)では牛島中将の髪を切る地元の床屋の主を好演。

その後も『吶喊』(75)『姿三四郎』(77)、そして『ダイナマイトどんどん』(78)『ブルークリスマス』(78/倉本聰脚本)『英霊たちの応援歌/最後の早慶戦』(79)などを経て、『近頃なぜかチャールストン』(81)では現代日本の中で非行中年らが建国(?)した“ヤマタイ国”の陸軍大臣を熱演していました。

また赤川次郎原作による田中邦衛主演の名物TVムービー・ミステリ・シリーズの記念すべき第1作「幽霊列車」(78)も岡本監督が撮っています。

一方、森﨑東監督作品には『藍より青く』(73)など1970年代前半から出演。中でも77年の主演映画『黒木太郎の愛と冒険』は、スタントマンの主人公とその周囲の人々の猥雑な交流を通して森﨑監督が亡き兄の記憶を投影させた意欲作でもありました(ちなみに岡本監督も特別出演)。

80年には森﨑監督が前編の演出を担い、職人的剛腕を発揮した井上靖原作の快作時代スペクタクルTVミニシリーズ「蒼き狼 成吉思汗(ジンギスカン)の生涯」では主人公テムジン(加藤剛)の部下ボオルチュ役。同年の戦後の闇を描いたTVムービー「帝銀事件 大量殺人獄中三十二年の死刑囚」(80)にも古志田警部補役で出演しています。

人気シリーズ第7作『釣りバカ日誌スペシャル』(94)ではハマちゃん(西田敏行)を嫉妬の鬼へと誘う下世話な小悪党を演じていますが、この時期すっかり善人役が板についていた田中邦衛に久々邪悪なるカタルシスを感じさせてくれたものでした。 

尊敬する高倉健との共演
そして1980年代の代表作

もうひとり、田中邦衛を語る際に忘れてはいけない名優が高倉健です。

先に記したように『網走番外地』第1作で共演して以来、田中邦衛は高倉健を尊敬しつつ、同シリーズ終了後も『山口組三代目』(73)『現代任侠史』(73)『三代目襲名』(74)『大脱獄』(75)『日本任侠道 激突篇』(75)『新幹線大爆破』(75)『君よ憤怒の河を渉れ』(76)『冬の華』(78/倉本聰脚本!)『野性の証明』(78)『動乱』(80)『駅/Station』(81)など、役の大小に関わらず、出演し続けました。高倉健初のTVドラマ「あにき」(77)にも出演しています。

そして1983年の『居酒屋兆治』では見事ブルーリボン助演男優賞を受賞。

この後の『夜叉』(85)では、共演したビートたけしが伝説のラジオ「オールナイトニッポン(木曜第1部)」で高倉健と田中邦衛の現場での仲の良さを茶化しまくったトークを披露していました。

(健さんはビートたけしに感化されて「なあ、邦衛ちゃん、俺たちも漫才やろうか」と声をかけていたとか!?)

さて、そんな1980年代の田中邦衛は「北の国から」の大ブレイクによってますます注目される存在となっていきますが、中でも1986年の根岸吉太郎監督作品『ウホッホ探検隊』では十朱幸代と共に中年夫婦を演じてブルーリボン賞男優主演賞を受賞し、この時期の彼の代表作として映画ファンの間では伝説的存在です。

伝説的作品といえばもう1本、和泉聖治監督の『この胸のときめきを』(88)は、私自身、田中邦衛の出演映画の中でもっとも愛してやまない、知る人ぞ知る作品です。

修学旅行のメッカ京都を舞台に博多と仙台、そして地元の高校生たちが賑やかに絡み合っていく青春グラフィティですが、その中で田中邦衛はヒロインのひとりメロンちゃん(畠田理恵)の父親で京都撮影所の大部屋俳優に扮し、愚連隊に拉致された修学旅行生たちを救出すべく「ペーパームーン作戦」を実行! 果たして京都は代理戦争の舞台になってしまうのか、否か?

この作品、残念ながらDVD化されてないのですが、2021年4月23日に日本映画専門チャンネルでTV放送されます。

幾度かリピート放送されてきた中、今回が最後のオンエアっぽいので、鑑賞可能な環境にある方は大必見! と強くお勧めしておきます。

(ちなみに全編の音楽にケントスの日本人アーティストによるオールディーズ・ナンバーを起用しており、そのサントラ盤CDは現在3万円以上のプレミアがついている!)

なお本作の田中邦衛&畠田理恵&和泉聖治監督のトリオは、その後も「親分の後妻は聖女」(89)「花と小父さん」(90)といったTVドラマの秀作を発表しています。

1990年代山田洋次監督作品群と
遺作映画『最後の忠臣蔵』

1990年代に入っての田中邦衛は、山田洋次監督の『学校』で酒と競馬が好きな中年夜間中学生を演じ、日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。その後も『男はつらいよ寅次郎紅の花』(95)『虹をつかむ男』(96)『学校Ⅲ』(98)『隠し剣 鬼の爪』(04)など山田作品の常連にもなっていきました。

2000年代に入っても三谷幸喜監督『みんなのいえ』(01)、宮藤官九郎と共演した『福耳』(03)など意欲的に映画出演を続けていきました。

そして彼の最期の映画出演となったのは、「北の国から」の演出で知られる杉田成道監督の『最後の忠臣蔵』(10)でした。

「北の国から」以降、映画『優駿 ORACION』(88)やさまざまなTVドラマでのコンビネーションを経ての『最後の忠臣蔵』は、特別出演といってよいものでしたが、さすがに田中邦衛の姿が映し出されただけで画がビシッと引き締まって見えたものでした……。

今回、映画をメインにほんの少しだけ俳優・田中邦衛の魅力を記してみましたが、実はTVドラマでも草刈正雄と共演した「華麗なる刑事」(77)や「大空港」(78~80)「裸の町」(80)などの刑事ものや、時代劇「岡っ引きどぶ」(81~83・91)シリーズも忘れがたいものがあります。

今はただただ、彼が出演したこれらの映画&ドラマ群に想いを馳せつつ、鑑賞可能なものを改めてじっくり堪能していきたいと切に思っているところなのでした。

 (文:増當竜也)

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