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アラサー独身男性が本気で観た『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』

 

面白おかしくありつつも、現代社会を色濃く反映させた物語



しんのすけたちカスカベ防衛隊の面々が、エリート校「天下統一カスカベ学園」での1週間の体験入学期間を過ごしていく中で、“吸ケツ鬼”により引き起こされる怪事件の謎を解いていく!というのが今回の物語の大筋。お馴染みのキャラクターたちが元来持つ魅力、映画オリジナルキャラクターやゲスト声優扮するキャラクターたちとの掛け合い、吸ケツ鬼が誰であるのかを探っていく謎解き的な展開など、子供がメインで楽しめるであろう面白おかしい要素がてんこ盛りなのは言うまでもないのだが、大人が目にする上では、「天下統一カスカベ学園」の教育方針や学園のシステムについて一考を巡らせる余地がある。

AI・オツムンよる徹底された管理によって、学園では「エリートポイント」なるシステムが導入されており、学業やスポーツや芸術面における成績、日頃の立ち振る舞いなどによってポイントが加点・減点され、点数に応じたクラス分けがなされている。プライベートなエリア以外での行動は全て監視されており、一挙手一投足がポイントの増減に反映される。より多くのポイントを有する生徒は優遇され、ポイントの少ない生徒は冷遇される。そのポイントの獲得を巡り、しんのすけと風間くんが衝突してしまうというのがメインの流れなのだが、そういった人間模様とは別に、「エリートポイント」的な評価や判断基準が確かに存在している現実社会、その是非、さらには、格差社会・競争社会といった領域にまで思考は及んでしまうはず。

子供の育て方や教育方針といったものは、人や家庭によって様々で、そこに明確な正解といったものも存在しない。とは言え、より良き環境や機会を与えてあげたいと思うのが親心。我が子が大人になった際に困らぬよう、安定した生活を送れるよう、より良き大学や企業へ進むことを勧める親もいるだろう。また、競走させられることによって高め合い、より高度な領域へと到達することができるのも事実。劇中においても「エリートポイント」というシステムの是非を巡ってあらゆる意見が飛び交うが、一概にそのシステムの全てを否定することはできないのではないだろうか。人によっては、とても理に適ったシステムだと思えてしまうこともあるのではないだろうか。

けれど、そういった仕組みが性に合わない人も絶対にいる。その仕組みだけでは汲み取ることのできない個性や魅力といったものが絶対にある。人を推し量る物差しは、決してひとつだけではないのだから。ただ、これも結局は理屈や綺麗事でしかないのかもしれない。今の世の中を、あなたの身の回りを、あなた自身の胸の内を思い返してみて欲しい。それが全てではないと理解しつつも、容姿や学歴や年収がものを言い、SNS等のフォロワー数や影響力が重要で、それらを持たざる者は劣等感に苛まれてしまいがちなのが今の世の中。人が生きていく上で、本来そんなことに囚われる必要などこれっぽっちもないのだが、メディアやテクノロジーの進歩が及ぼす弊害に、誰もが毒されてしまっている。『クレヨンしんちゃん』なのに考え過ぎだよとあなたは言うかもしれない。だが、探偵もののエッセンスのみならず、競争社会やAIの台頭といった要素までをも扱っているからこそ、今回の『映画クレヨンしんちゃん』は面白い。子供であっても大人であっても楽しむことのできる作りになっている。何をどう楽しむかはあなた次第であるが、こういった捉え方もできるのだというひとつの指針を、ここでは提示したい。

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(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2021