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『海辺の金魚』レビュー:少女の不安や決意を通して、新たな才能・小川紗良監督自身の巣立ちを示唆した秀作


■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

昨年秋に公開された本広克行監督『ビューティフルドリーマー』で、自主映画をかじったことのある身にとっては(あと押井守監督作品のファンとしても)とても好ましい存在感を発揮していた主演の小川紗良。

既に自主映画界の監督としても高い評価を得ていたと知ったのもそのときですが、そんな彼女の初長編映画監督作『海辺の金魚』も、初々しく、瑞々しく、そして繊細で切ない思春期の想いみたいなものがあふれ出る作品に仕上がっています。



実はこちらも環境こそ違えど鹿児島県で高校時代までを過ごしていた身なもので、阿久根市の児童養護施設で暮らす18歳のヒロインがこれからどう旅立っていくのか? といった不安や葛藤みたいなものは、少しばかりは共有できている気が勝手にしているのでした。

(もっとも、世代的には芹澤興人演じる児童指導員みたいな目線や立場になってしまうことも、今では多々ありますが……)

やはり昨年の山本政志監督によるアナーキーの極み映画『脳天パラダイス』のインパクトが大だった主演の小川未祐ですが、ここでは一見凛とした立ち姿の中から垣間見えるはかなさや孤独、焦燥、空回りみたいなものまで上手く醸し出されています。

また、だからこそ、家の金魚鉢の中にいる限りは可愛く映え続けるであろう金魚を……というある種の暴挙(!)をもって、これからも無謀を繰り返しては傷つき、そして大人へと成長していくのであろうヒロインの未来が示唆されているようにも思えてなりません。



『誰も知らない』(04)などの山崎裕撮影監督によるキャメラの妙もあって、美しい風景をあくまでも自然体で捉えつつ、その中でどこかしら哀しい体験を共有できているような18歳と8歳の孤独な少女の関係性を際立たせていくのも好感の持てるところでした。

いずれにしましても、新たな才能の巣立ちの決意を見せつけられた想いの作品でもあり、既にとうのたった大人たるこちらとしては、ただただ今後も次代の意気込みを見守り、応援し続けていきたいものです。

(文:増當竜也)

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