<新作レビュー>『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』音楽ミステリを通して浮かび上がる戦争の蛮行と神への信仰
<新作レビュー>『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』音楽ミステリを通して浮かび上がる戦争の蛮行と神への信仰
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
ナチスのホロコーストを背景にした戦争の蛮行を描いた作品は昔も今も後を絶ちませんが、本作もその中の1本。
ただし、ここでは単なるナチ批判の域に留まらず、神と信仰の領域にまでぐっと踏み込むという意気込みが成されており、またそのために音楽という要素が最大限の効果を伴いながら用いられています。
映画全体の構成は、第2次世界大戦下のロンドンで9歳で出会い、青年になってデビュー・コンサート当日に行方不明になった天才ヴァイオリニストのドヴィドルと、それから35年の月日をかけて彼を探し続ける幼馴染のマーティン(ティム・ロス)の友情と確執の日々が少年時代、青年時代、そして現代と3つの時空を錯綜しながら描かれていきますが、その積み重ね方も実に自然。
また劇中はバッハやベートーヴェン、パガニーニなどクラシックの名曲が壮麗に彩りますが、その合間合間にハワード・ショアの劇中曲が縁の下の力持ち的な存在として効力を発揮しているあたりもお聞き逃しなく。
前半は境遇の異なる少年時代のふたりのやりとり(結構悪いことばかりやってます!?)から次第に友情が育まれていく過程が心地よく伝わってきますが、やはり映画のキモとしては後半、全ての真実が明らかになっていき、そこからもたらされていくクライマックスが圧巻とだけ今は伝えておきたいと思います。
『海の上のピアニスト』(98)に続いて音楽映画の秀作をモノにした名優ティム・ロス、映画ではタフガイのイメージが強いクライヴ・オーウェンがここでは実に繊細かつ静謐なキャラクターを見事に演じています。
そして『レッド・バイオリン』(98)『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』(14)など音楽を題材にした映画演出に定評のあるフランソワ・ジラール監督、またまた快打でした!
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(文:増當竜也)
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