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『わたしはダフネ』レビュー:ダウン症の娘と初老の父親との人生の旅から醸し出されていく前向きな希望


■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

1000人にひとりの割合で生まれてくるというダウン症の人々にスポットを当てた劇映画は、これまでも『八日目』(96)『筆子・その愛―天使のピアノ』(07)『チョコレートドーナツ』(12)『カフェ・ド・フロール―愛が起こした奇跡―』(15)『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』(19)『種をまく人』(19)『タロウのバカ』(19)など多数あります。

概して日本映画は社会的意識をもって真摯に取り組むものが多いのに対し、西洋ではヒューマニズムの発露として明るく前向きに対峙したものが多いように見受けられるのは、お国柄的なものもあるのでしょうか。



本作もイタリア映画だから、というわけでもないでしょうけどとても前向きで明るく、いつしかダウン症という要素を忘れさせてくれるほどに親娘の絆を濃密に描きながら、いつしかホロリとさせてくれる逸品となっています。

本作が長編映画2作目となるフェデリコ・ボンディ監督は、ダウン症として生まれながらも普通にスーパーで働き、小説執筆&講演活動も行っているというカロリーナ・ラスパンティと出会ったことから本作の企画を進めていったそうですが、まさに彼女自身のキャリアを反映させたと思しきヒロイン、ダフネの(ちょっとやかましいほどに?)口が達者で喜怒哀楽がはっきりしたキャラクターが圧巻なのでした。

(ちなみに彼女は本作の撮影にあたって、脚本を1ページも読んでいないのだとか!?)

本作には彼女がダウン症だからという理由であからさまな差別をするような輩は出てきませんが、それは周囲の者まで巻き込むかのような彼女の明るさそのものにもあるのでしょう。



それはいつしか妻を亡くしてふさぐ父ルイジ(アントニオ・ピオヴァネッリ/名演!)の心も溶かしていきますが、その過程となる後半の親娘の歩き旅(途中ヒッチハイクの素敵なズル・シーンがあるのもご愛敬)が秀逸極まり、それはロード・ムービ―と呼ぶよりも、まさに「旅」といったニュアンスのほうがふさわしく思えるほど。

現実的には某かの障害を抱えたお子さんを持つ親の老化というのは深刻な問題と化していて、昨年ご紹介させていただいた貞末麻哉子監督のドキュメンタリー映画『普通に死ぬ~いのちの自立』(20)などでも真摯に訴えられている事象ではあります。

ただし、以下は本作のキャッチコピーではありますが……

「あなたとなら、信じられる。世界はやさしさに満ちている、と。」

これをそのまま素直に受け入れても良いのではないかという、そんな前向きな希望すら感じられる絶品のショットを、ラストで目の当たりにすることが出来るでしょう!

ベルリン国際映画祭での国際批評家連盟賞受賞も大いにうなづける秀作です。

(文:増當竜也)

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