2021年10月28日

〈新作紹介〉『スウィート・シング』日本よ、これがアメリカのインディーズ映画だ!

〈新作紹介〉『スウィート・シング』日本よ、これがアメリカのインディーズ映画だ!



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

今や世界中でインディペンデント系映画、俗にいうインディーズ映画は当たり前のように作られ続け、その中からメジャーへと躍り出ていく図式も普通に成されている映画界ではありますが、一方ではそんなメジャーの真似事みたいなものの域に留まっている作品も増えてきているかなといった感もないわけではありません。

個人的には、資本的な制約などに縛られない自由な表現を求め続けつつ、決して強権的に拳を振りあげながら反骨の姿勢を示すことのないインディーズ映画が好みです。

そしてアレクサンダー・ロックウェル監督もそんな好みの映画を作り続けるインディーズ映画の雄ではありますが、残念なことに彼の作品は日本でお目にかかれる機会は少なく(何とクエンティン・タランティーノやロバート・ロドリゲスらと共同監督した1995年のオムニバス映画『フォー・ルームス』以来、およそ25年ぶり!)、その意味では今回の上映は貴重であると同時に、今後の再評価なり旧作上映の機会をもたらすチャンスになるかもしれません。

(ちなみに今回、本作の公開に合わせて、彼の出世作でもある1993年作品『イン・ザ・スープ』も2021年10月29日より新宿シネマカリテを皮切りに全国順次リバイバル特別上映されますのでお見逃しなく!)



『スウィート・シング』に関しては、16ミリ・フィルムを用いてのモノクロ&パートカラーというこだわりの撮影、子どもたちの目を通しての人生の縮図みたいなものを、どうしようもない大人たちの姿とともに描出しつつ、そこからの逃走、即ち自由を求めてのはかない脱出行を『地獄の逃避行』や『スタンド・バイ・ミー』へのオマージュも織り交ぜながらみずみずしく展開させていきます。

タイトルさながらヴァン・モリソンやビリー・ホリディなどの楽曲はもとより、彼ら彼女らの存在そのものまで大いに意識させていく仕掛けにも怠りはありません。



ロックウェル監督の実子ラナ&ニコ・ロックウェル姉弟、妻カリン・パーソンズといったファミリー総出演ながら決してホーム・ムービー的な甘さなど微塵もなく、さらにはロックウェル監督の旧友で、最近では『ミナリ』の好演も記憶に新しいウィル・パットンの共演など、少なくとも自分がかつて見てきたアメリカのインディーズ映画の麗しきスタイルがここにあります。



ふと『アベンジャーズ』の日本でのキャッチコピーさながら、「日本の映画ファンよ、これがアメリカのインディーズ映画だ!」と叫びたくなるほどの衝動を覚えてしまいましたが、そういった興奮すらも「そんな大仰な映画じゃないよ」と作り手から軽くいなされそうな、そんなささやかな秀作なのでした。

ちょっと驚いたのは、ロックウェル監督の元夫人で『イン・ザ・スープ』ヒロインでもあったジェニファー・ビールスが本作の製作総指揮にクレジットされていたことで、プライベートでのパートナーシップは解消しても、映画的な絆は今なお続いている事実に、彼女の出世作でもある『フラッシュダンス』ファンとしては思わず小躍りしたくなってしまいました。

(文:増當竜也)

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