「IP~サイバー捜査班」第2話レビュー:安洛は人の情がわからない男?殺人事件の奥に見えた父親の思い(※ストーリーネタバレあり)
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2021年7月1日のテレビ朝日 木曜ミステリー枠では、佐々木蔵之介を主演に迎え、京都を舞台としたミステリー「IP~サイバー捜査班」を放送する。共演に福原遥、間宮祥太朗ほか。
佐々木演じる安洛一誠(やすみや・いっせい)は、「サイバー総合事犯係」の主任で、サイバー犯罪に関する知識と捜査スキルはピカイチ、超がつくほどのデジタル人間。そんな安洛が自分の父親ではないかと考えている古宮山絆を福原遥、裏で安洛について調べる密命を担う多和田昭平を間宮祥太朗が演じる。サイバー犯罪と、その裏にある人間ドラマを絡めたミステリー。
本記事では、その第2話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
「IP~サイバー捜査班」第2話レビュー
冒頭で「あなたが父親か確かめに来た」と安洛に突きつける絆。これに安洛は狼狽していたが、結局なんともはっきりしない言い訳を並べただけだった。
その後の安洛は、絆を遠ざけようとしたり絆の声が聞こえただけで“フリーズ”状態になったりとどうにも落ち着かない。どう見ても絆の存在に心をかき乱されていて、やはり父親なのか?そうでなくとも絆の母親と何かあったのか?と見ていてどうにも疑いたくなった。
そんな中、総事係(そうじがかり)ことサイバー総合事犯係が挑むのは、芸妓の“舞菊”こと奥村麻衣をめぐる事件。
麻衣と会社社長のツーショット写真がネットに流出。安洛がIPを特定して投稿者を見つけ出すが、その投稿者であるカメラマンの寺西が刺されて死んでいるのが発見され、殺人事件へと発展してしまう。
その後、寺西が盗撮写真をネタに恐喝を行っていたのが明らかに。ならば恐喝の被害者が口封じのために殺害したのでは…と自分たちの捜査を打ち切ろうとする安洛。しかし、彼の判断に反発したのは絆。事件の裏に隠れているに違いない人の情にまたも彼女はこだわった。
「パソコンの中に引きこもって人に触れなかったら、人の情なんて絶対にわからない」と安洛に現場に出るよう促す絆。最初はとりあわない安洛だったが、絆から彼女の母親がすでに亡くなっていると聞かされて驚く。そして、何か思い直したのか一転して捜査を再開した。
その後の捜査で、寺西のパソコンを遠隔操作して社長との写真を流出させた犯人は麻衣の幼馴染・石山翔太であると判明。麻衣と石山は恋人同士らしく、彼は麻衣に芸鼓をやめさせたくて写真を拡散させたのだった。さらに、石山は犯行当夜寺西のアパートの近くにいたことがわかり容疑者として連行されるが、取り調べに黙秘を貫く。
なぜ石山が黙秘しているのか? その理由を見つけ出そうとする安洛と絆。結果、置屋の女将・涼花に妹がいたとわかる。そして、ついに安洛が現場へ赴いて涼花と対面。25年前に起きたある傷害事件の隠された真相を明らかにする。
この傷害事件で逮捕された人物こそが寺西を刺した真犯人。それは、置屋の“男衆(おとこし)”である田沼徳夫。石山は事件当夜に寺西のアパートに向かう彼を見たことを隠そうとしていたのだった。
実は田沼は麻衣の父親。かつて麻衣の母であり涼花の妹だった芸鼓・春菜と恋におちたが、それに怒った春菜の贔屓筋が暴漢に二人を襲わせた。そして、春菜を守ろうとした田沼は相手を殴って死なせてしまった。
刑期を終えた後、涼花に頼み込んで男衆となり、素性を明かさず麻衣のそばにいた田沼。しかし、麻衣の出生の秘密を寺西に握られ、口止め料を支払いにいったところ、寺西が「次は舞菊に買い取ってもらう。金じゃないもので払ってもらうがな」と言ったのに激昂。思わず彼を刺してしまったのだった。
田沼に対して「それでよかったのか。父親らしいことを何もできないのに」と問いかけた絆。父親が誰かわからず苦しむ彼女からすると、彼の選択がどうにも疑問だったのだと思う。だが、田沼は「自分は舞菊という芸鼓に仕えてただただ見守っていることができた。それ以上望んだら罰があたる」と言いきった。傷害事件を起こしてしまい、麻衣の母を幸せにできなかった彼にとっては、名乗らず見守ることこそが精一杯の父親としての愛情だったのだろう。
田沼は潔く犯行を認める。そして、連行される直前、お座敷に出る麻衣の背中に切り火をして送り出した。この切り火は厄除け、邪気祓いのための風習で、最後まで娘を守ろうとした彼の人生をなんとも物語っているかのよう。田沼を演じた飯田基祐の秀逸な演技もあって、なんとも心にしみいる場面だった。
今回、「事件を解くには人の情が重要な要素だと判断した」という安洛。これまで現場捜査をしてこなかった彼がなぜ絆の言葉を受け入れて方針を変えたのか、その心の奥は結局わからずじまい。ただ、実際事件の裏には田沼や涼花、石山らの麻衣を思う情が隠れていて、安洛や絆がそれを理解したからこそ事件解決につなげられたといえる。どうやらこの安洛という男、人の情を心底嫌ったり軽んじたりしているのではなさそうだ。
サイバー捜査がテーマである本作。確かにこの2話でもパソコンを駆使した捜査が行われたが、それと同時に京都祇園を舞台にした抒情的なドラマも展開。デジタルな捜査の面白さだけでなくアナログな情緒も大切にしているのが感じられた。
犯罪解決のために大切なのは情報解析なのか人の心なのか、それともその両方なのか。本作の着地点がどういうところになるのかを、今しばらく見守っていきたい。
「IP~サイバー捜査班」ストーリー
京都府警サイバー総合事犯係に、会社社長・土屋謙信(ぼんちおさむ)が乗り込んできた。土屋は、京都で一番の人気芸妓と2ショットで撮影したニヤケ顔の自撮り写真が、なぜかSNS上に出回っていると大騒ぎ。拡散した人物を見つけて逮捕してくれと訴える。明らかに同意の上で撮った写真であり、犯罪として成立しない可能性が高いにもかかわらず、主任・安洛一誠(佐々木蔵之介)は古宮山絆(福原遥)と多和田昭平(間宮祥太朗)に事件を調べるよう命じる。実は先日、安洛は絆から「自分の父親ではないか」という疑惑を突きつけられて動揺。できるだけ、絆を目の前から遠ざけたかったのだ…。
さっそく多和田とともに置屋を訪ね、写真の相手である芸妓“舞菊”こと奥村麻衣(川島海荷)から事情を聴いた絆。麻衣によると、問題の写真は土屋が自分のスマホで撮影したもので、その場でメッセージアプリを介して麻衣のスマホに転送されてきたが、麻衣自身はSNS上に公開するなどの行為は一切していないと話す。それを聞いた多和田は、麻衣のスマホに不正アクセスがなかったか調べたいと申し出るが、置屋の女将・宮原涼花(国生さゆり)から、座敷の中の出来事を外部に持ち出すのは花街のご法度だと突っぱねられてしまう。
そんな中、安洛が写真を流出させた人物を特定した。安洛がたどり着いたのは、カメラマンの寺西高広(西村匡生)。絆と多和田がさっそく寺西の自宅を訪ねたところ――なんと彼は何者かに刺殺されていた!
寺西の部屋に残されたパソコンを調べた安洛は、彼が麻衣の“ネットストーカー”だったことを突き止める。絆と多和田は改めて麻衣に話を聞こうとするが、涼花に門前払いされてしまう。2人は仕方なく、芸妓たちの身の回りを世話する“男衆(おとこし)”田沼徳夫(飯田基祐)に麻衣の居場所を聞くが…!?事件の背後にある、京都祇園の花街に渦巻く女たちの憎悪とは…そしてその先にある切なくも悲しい真実とは!?
(文・田下愛)
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