(C)2021「妖怪大戦争」ガーディアンズ
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2021年07月17日

「妖怪特撮映画祭」開催! 妖怪に怪談、大魔神、ガメラもパイラ星人もお釈迦様も!

「妖怪特撮映画祭」開催! 妖怪に怪談、大魔神、ガメラもパイラ星人もお釈迦様も!

『大魔神』三部作を筆頭とする
大映京都の特撮時代劇



大映が世界に誇る特撮時代劇『大魔神』三部作も、今回4K修復版でお目見えします。

西洋の巨人ゴーレムの伝承イメージを日本の時代劇に変換させた安田公義監督『大魔神』(66)、続く三隅研次監督『大魔神怒る』(66)は日本の風土の中に西洋宗教的情緒を巧みに盛り込み、森一生監督『大魔神逆襲』(66)はあたかも時代劇版『スタンド・バイ・ミー』とでもいった子どもたちの冒険映画として屹立させています。

またこれら3作品はそれぞれ「土」「水」「雪」のモチーフで世界観が構築されており、それぞれの魅力を満喫できる仕掛けにもなっています。

ちなみに大魔神の大きさはおよそ4.5メートルということもあって、いわゆる怪獣映画の特撮よりもミニチュアなどが精巧に作りやすく、実写班でまかなえる撮影も多かったこと、さらには本編と特撮双方の映像に同等のリアリティを醸し出すべく、森田富士郎撮影監督は本編&特撮ともに撮影を担当していますが、その心労が重なり、第3作『大魔神逆襲』は今井ひろしと共同となりました。

そう、驚くべきはこのシリーズ、1966年に3本が公開されている事実で、1年に特撮映画を3本作るだけの技量が当時の撮影所に備わっていたことの証左でもありでしょう(3作品とも特撮監督は黒田義之)。

3作品ともストーリー自体は実にシンプルで、人間の悪しき振る舞いに怒り心頭となった大魔神が成敗しまくるというもので、TVで見ると「大魔神が登場するまでが長い」といった声も最近よく聞こえてくるのですが、いざ映画館の暗闇で銀幕に対峙しながら見ていくと、魔神が覚醒するまで(あの可愛いハニワ顔が鬼オコとなる瞬間、たまりませんね! 大魔神を演じる橋本力の目力も素晴らしいものがあります)、実に細かい時間配分など演出の計算が成されている事に改めて驚かされることでしょう。

この時期の映画は、当然ながら映画館で見ることを前提に作られているのです。

(それこそ寝転がってのTVや小さなPCモニター鑑賞、ましてや悪しきファスト映画などに慣らされた人たちは、こういう映画を映画館でじっくりご覧になることをお勧めしておきます)

大映京都は『大魔神』三部作以外にも特撮時代劇を多く作っていますが、中でも特筆すべきは日本初の70ミリ映画『釈迦』(61)でしょう。



当時のTVに対抗すべく、ハリウッドが70ミリ・フィルムを用いたスペクタクル超大作としての大型映画を連打していた時期、日本では大映が名乗りを上げて、仏教の始祖でもあるお釈迦様=ブッダの生涯をさまざまな伝承を織り交ぜながらスペクタクル史劇として映画化。

私は釈迦を演じた本郷功次郎さんに取材したことがありましたが、本郷さんは10キロ減量して役に臨んだとのことで、また三隅研次監督をはじめとするスタッフ陣も不慣れな大型撮影機材の扱いなどに腐心しつつ「ハリウッドに負けるな」の意欲で京都撮影所全体の盛り上がりも半端ではなかったとのこと。

三隅監督といえば妖艶なる光と影の美学でさまざまな名作を世に放った名匠で、現在の彼のファンからすると『釈迦』は大味すぎるといった批判もチラホラ聞いたりしますが、これもまたモニターでしか『釈迦』を見たことのない世代の意見であり、私自身今回初めて「釈迦』をデジタル上映ながらも銀幕の大画面試写で鑑賞させていただいたとき、一体自分は今まで『釈迦』の何を理解していたのか?とでもいった痛恨の想いにまで捉われてしまいました。

結論から先に申し上げると、『釈迦』は紛れもなく三隅研次監督ならではの傑作です。

銀幕で接することによって三隅映画独自の妖艶な画作り、それに伴うさまざまなエロティシズムがさりげなく発露されており、ひいては宗教とエロスの相互関係まで彷彿させる仕組みになり得ているのです。

伊福部昭の荘厳な音楽も画期的で(ちなみに『大魔神』三部作や『鯨神』『怪談雪女郎』の音楽も彼が担当)、彼はこの後1989年に『交響頌偈(じゅげ)釈迦』を発表していますが、その中には本作の劇中曲の調べも大いに含まれています。

実は今年2021年は『釈迦』が作られてからちょうど60周年、即ち日本初の70ミリ映画が製作されて60周年という記念の年でもあるのです。

このところ『デルス・ウザーラ』『2001年宇宙の旅』といった往年の70ミリ映画が日本でも特別上映されるなど、70ミリをはじめとする大型映画に世界中の映画ファンの注目が集まる昨今、今回はデジタル上映ですが、何とか本当の70ミリフィルムで『釈迦』を拝ませていただきたいものです。

なお今回の映画祭では、他にも渡辺邦男監督『日蓮と蒙古大襲来』(58)、田中徳三監督『大江山酒呑童子』(60)といった特撮時代劇を銀幕で見られる貴重なチャンスともなっております。

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