2021年07月22日

【厳選】今週公開オススメ映画!夏の大作・話題作だけではなく、珠玉の秀作にも光を!

【厳選】今週公開オススメ映画!夏の大作・話題作だけではなく、珠玉の秀作にも光を!


『かば』

1985年の大阪西成・中学教師「かば先生」と生徒たちのガチンコ交流記!


(C)映画「かば」制作委員会

何とも珍妙なタイトルではありますが、これは本作の主人公である蒲益男先生(山中アラタ)のあだ名であり、舞台となる1985年の大阪・西成区に実在した中学教師(2010年に58歳で死去)として、生き方を模索する多くの生徒たちの成長にガチンコで尽力した「かば先生」の熱くさわやか、時に切ない奮闘を描いたものです。

西成区は被差別部落が隣接する区域で、一方ではバブル景気真っ盛りの1980年代半ばとのギャップの中、出自や偏見に伴う校内暴力やすさんだ家庭環境などさざまな問題が噴出していた状況下で、かば先生は荒くれた連中も含めてひとりひとりの生徒と向き合っていきます。

見る前はいわゆるノスタルジックな金八先生的な作品かと思っていましたが、21世紀に入ってなお混迷し続ける現代において、当時の教師たちと生徒の関係性から今の時代を今一度見つめ直してみたいという川本貴弘監督の意欲が、熱さこそあれ暑苦しくなく伝わってきます。

個人的に関西地域に住んだことはありませんが、1980年代の学校なり社会なりをそれなりに肌で体感していた世代としましては、郷愁こそあれ「昔は良かった」的な粋に陥ることのない演出姿勢に大いに共感できるものがありました。

主演の山中アラタに全く大人側からの押しつけがましさがないのは、この映画の大きな美徳のひとつで、新米教師役の折目真穂がどんどんガラッパチになっていくあたりも定番とはいえ痛快でした。

1980年代の再現という点でも、比較するのは失礼かなと思いつつ、予算が潤沢だったと伝えられる「全裸監督」よりもずっと当時の(華やかな光が濃いと、その分影も濃い)空気感が醸し出されているように思えました。

もっとも、当時のこうした教師と生徒との立場を越えた人間同士のつきあいというものが、それこそコロナ禍も相まってなおさら人と人との直接的繋がりが希薄になっている今の若い世代にどう映えて受け止められるのか、正直なところロートルのこちらには想像できないところもあります。

ただし、現実にリアルな今を生きる彼ら彼女らが、こういった作品を見て賛でも否でも何らかの心の触発を受けることが出来るのであれば、本作の存在意義は大いにあるのではないかとも思えてなりません。

その意味でも、現役中高生の感想をぜひ聞いてみたい作品です。

●2021年7月24日より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
製作:映画「かば」制作委員会
監督:川本貴弘
出演:山中アラタ、折目真穂、木村知貴、さくら若菜、近藤里奈



無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!